日本共産党

2004年3月19日(金)「しんぶん赤旗」

内心の自由 奪わないで

石原都政の「日の丸」「君が代」強制


 子どもたちの門出のときである卒業式、入学式に「日の丸・君が代」を押しつける政府・文科省の動きが、各地で混乱や保護者、教職員、児童・生徒の苦悩をもたらしています。東京都では、石原都政が全国でも突出した強権的な暴走をしており、「学校から良心の自由を奪うな」という怒りの声と運動が広がっています。東京総局 室伏敦記者

民主都議が誘導

 十六日の都議会予算特別委員会。「君が代」を起立して歌わない生徒がいるのは問題だなどとした民主党都議の質問に答えた横山洋吉都教育長は、驚くべき答弁をしました。

 「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱で起立しない生徒が多数出た学校では、担当の教師を「指導力不足教員」として処分し、学校名も公表、区市町村教育委員会を通じて同様の措置を都内の公立小・中学校全体に広げると表明したのです。(別項参照)

 石原慎太郎都知事もこれに続いて、「都教委の取り組みは学校教育の適正化を図るもの」と答弁、都教委がすすめる強権的押しつけに“お墨付き”を与えました。

 答弁は、思想・信条の自由を保障した憲法や、教育内容への不当な行政の支配を禁じた教育基本法、子どもの思想・良心の自由の尊重を掲げた子どもの権利条約に明確に反し、国の見解をも踏み越えています。

政府答弁でさえ

 学習指導要領は、「日の丸・君が代」の掲示や斉唱の仕方は定めておらず、「自ら学び自ら考える力の育成」「特色ある学校づくり」をうたっています。「日の丸・君が代」法案審議の際に当時の小渕恵三首相は「国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません」(一九九九年六月二十九日、衆院本会議)と答え、二〇〇二年六月五日の衆院文部科学委員会で当時の遠山敦子文科相は「良心あるいは思想の自由は、憲法上の個人の『内心の自由』として絶対にまもられなくてはならない」と答弁しています。

 都の答弁通りにことが行われるなら、教師が、児童・生徒の「内心の自由」を踏みにじる指導をしなければ処分されるという、とんでもない事態になります。

卒業式で起立チェック

 都立高校ではこの三月の卒業式で、都教育庁の職員が式場を歩きまわって、「君が代」斉唱で起立していない教職員がいないかチェックしています。都立盲・ろう・養護学校では、壇上に自力で上がれない子どもを壇上にあげるためのスロープを特設する学校も出ています。

 二月十七日には、学校行事の「君が代」斉唱で起立しなかったとして十人の教職員が、職務命令違反で戒告処分となりました。石原都政は、こうした学校への異常な介入を、さらにエスカレートさせようとしています。

教育守ろう 父母・先生の運動広がる

 十六日の都議会予算特別委では、日本共産党の清水ひで子都議が、「生徒が自由に考え、判断したことをもって『教員の指導力不足』だと指導するのは間違いだ。押しつけは教育基本法に反している」と厳しく批判しました。

 東京都教職員組合(中山伸委員長)は十七日、「子どもの内心の自由を奪うな」と、知事らの答弁撤回を求める談話を発表。保護者、教育労働者など千人が参加した「東京の子どもと教育を守ろう! 生かそう憲法・教育基本法 改悪反対3・13東京集会」は「日の丸・君が代強制反対!」などの集会アピールを満場の拍手で採択しました。

 杉並区の都立高校三年生の母親、丸浜江里子さんらが始めた、「実施指針の再検討を求める陳情」はネットや口コミで広がり、一カ月あまりのうちに八十三の都立の学校の保護者を含む七千人を超す人から賛同の署名が寄せられています。


都教育長の主な答弁

 ■「教員は教育公務員として、法律や学習指導要領に基づいて児童・生徒に国旗・国歌に関する指導をする責務がある。ことさら歌わない自由を強調するのは実に不適切と考える」

 ■「指導が適切に行われていれば、歌えない、歌わない児童・生徒が多数いることは考えられない。その場合、担当の教員の指導力不足か恣意(しい)的な指導があったと考えざるを得ない」

 ■「指導要領に基づく指導をしてなければ、研修命令などを含めて処分の対象となることは当然だ」

 ■「(『問題』のあった学校は校名を公表すべきだとした民主党土屋たかゆき都議の質問に)説明責任を果たす意味からも公表する。小・中学校も同様の対応を区市町村教育委員会に働きかける」


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