2004年3月18日(木)「しんぶん赤旗」
四月一日から消費税が“見えにくく”なります。エープリルフールだからではありません。昨年春の国会で消費税改悪が自民・公明などの賛成で成立。値札が消費税を含む「総額表示」に義務化されたためです。「見えなくなる」ってどういうことかみました。
篠田隆記者
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大型小売店の入り口などで、「値札表示についてのお知らせ」をみかけるようになりました。東京都内のある百貨店は…。
「四月一日から実施される税制改正にともない、現在の値札は、『本体価格(税抜価格)』のみ表記したものと、『税込価格と本体価格』を併記したものがございます」
従来の値札と「総額表示」の値札が混在していることへの注意喚起です。近所のスーパーでは値札を新旧色分けするなど大忙し。なんでこんなことが始まったのでしょう。税制の担当である財務省に聞くと…。
「現在は税抜き価格で(値札が)表示されているため、消費税額はレジで請求されるまで分かりにくい」。つまり、値札が消費税を含む「総額表示」ならレジでまごつくこともないでしょう、という理由です。
消費するたびに税金がかかる消費税が導入されて十五年目です。いまごろ何で? と疑問に思うのは当然。単なる親切心からとは思えません。
「総額表示」は業者に義務付けられます。値札だけでなく広告やカタログでも必要です。肝心なことは、消費税額と本体価格を合計して表示(総額表示)することです。
消費者にとって支払額が分かっていいかのように政府は宣伝します。しかし、消費者は消費税をいくら支払うのか分からなくなります。値札に消費税額が併記されていれば分かりますが、併記するかどうかは業者の任意です。
重大なのは価格に消費税が“隠れ込む”ことです。実例があります。
発泡酒のメーカー希望小売価格は三百五十ミリg一缶百四十五円ですが、実は本体価格は九十八円。残り四十七円は酒税です。でも多くの人は百四十五円が発泡酒の価格と思っているはずです。
これと同じことが消費税でも起きることになります。消費税を払う感覚は薄れていきます。
「税金をとられる感覚が薄れるので、消費税アップにつながる」―先日、ある民放テレビがこう指摘しました。インタビューを受けた専門家も「国として、消費税率を上げても反対も起きないのでは、という思惑があるのでは」。すかさず司会者が「思惑バレとん」。
別の民放テレビも、「消費税を上げていこうという動きがあり、反発が少なくなるように、ごまかしてしまおうという伏線」と指摘しました。
自民・公明の小泉与党などは二〇〇七年度にも消費税率を引き上げる方針です。「総額表示」義務化は三年後を見据えた増税地ならし作戦です。
「総額表示」義務化で実害も出始めています。中小納入業者・メーカーへの値下げ攻勢です。
「二百九十八円などの“値ごろ感”を維持したいという食品スーパーの意向で、納入価格の実質値下げや5%の消費税率のうち3%分を持つよう請求された、などの例がでています。原料大豆が高騰しメーカーに余力はないのですが」(全国味噌工業協同組合連合会・榎本光正専務)
「総額表示」は現象的には商品価格の値上げと映ります。他店との競争などでこれを嫌う大型小売店もあります。大手が優越的地位を利用して値下げを押しつけるなら、独占禁止法や下請法の違反で、公正取引委員会も監視を強めています。