日本共産党

2004年3月16日(火)「しんぶん赤旗」

問われる“賃下げ”春闘

成果主義で20%カットも

職場に渦巻く不満の声


 三年連続ベースアップの要求を見送った電機の職場では、賃上げや労働条件改善へ団結して労働者の生活と権利を守るという春闘の役割を放棄した労働組合に失望し、不満の声がうずまいています。しかも定期昇給がなくなり、成果主義賃金の導入で賃下げが必至になっています。企業業績は大幅に改善しており、労組の存在が問われています。十七日は、自動車や電機、鉄鋼、造船などでつくる金属労協(IMF―JC)の回答日です。

 「会社は、リストラや従業員の血のにじむような努力で急速な『V字回復』を果たし、二千億円の内部留保の積み増し、連結営業利益は千八百億円も見込んでいる。会社は従業員の努力に応えるべきです」

 そう話すのは大手電機メーカー、NECの日本電気労働組合の組合員。昨年、一昨年と組合員は赤字を理由に一時金は数十%カットされました。五十代の同組合員の場合、その額は年間四十万円に及びました。

NECでは

 一時金は営業損益に連動して算定されます。来年度からは営業損益だけでなく、最終損益も反映させる方式に変更しました。この変更で、営業利益が一千億円以上でも現状の方式よりさらに〇・五―〇・七カ月分、年間で十五―二十万円減らされるといいます。

 しかも一時金は「個人成果」配分が六割を占め、成果がゼロと査定されれば一時金は半額以下になります。降格制度も新たに設け、成績の悪い人は格付けを落とされ賃金はさらに減額されます。

 「抑えられた総人件費の奪い合いをさせ、利益を上げろと労働者を増収にかりたてる。裁量労働制とあいまって夜十時、十一時までの仕事は当たり前。NEC社員OBの平均寿命は六十歳代後半だといわれ、文字通り命を削っている」と四十代の組合員。「労働組合は組合員の切実な声に応えなければ、存在価値が問われる」と話します。

日立では

 同じ電機大手の日立製作所も「V字回復」し、内部留保を九千三百十二億円も積み増し、連結営業利益も千七百億円を見込んでいます。

 にもかかわらずこの四月から総人件費抑制をねらいとする成果主義賃金を導入します。全員が定期昇給する従来の方式を廃止しました。

 「成果主義賃金で会社の期待どおりの成果を上げても、従来の定昇の半分しか上がらない」。日立製作所労働組合の四十代の組合員は怒ります。

 総合職七級の格付けの人の場合、平均的な成果を上げても平均二千百五十円にしかならず、定昇分をはるかに下回ります。

 「これまではたとえ賃上げがゼロでも定昇で確実に上がった。しかし、今回はそれもなくなり、最低の評価の場合、マイナスになる。組合が掲げる賃金体系維持すら実現不可能です」

 四十代後半から五十代のほとんどが新たな格付けで減額となるため、調整給で補てんされます。しかし、成果を上げると本給は増えますが、その分、調整給がそっくり減り、結果として賃金は変わりません。いくら成果を上げても調整給分がなくなるまで賃金が上がらないしくみに怒りの声がわきあがっています。

富士電機は

 「裁量労働制と成果主義賃金がセットで導入され、成果を上げるためにいっそうの長時間労働にかりたてられる。不安がひろがる一方だ」と五十代の組合員はいいます。

 成果主義賃金の導入が検討されている富士電機では今年二月、機器制御部門(神戸市)で、「平均10%の賃金カット」が提案されました。

 それにともなって時間外割増率も平日は130%から125%、休日は145%から135%にとこれまで労働者がかちとってきた賃金のルールを壊し、法定水準まで引き下げるとしています。しかも労働時間を十五分延長します。

 富士電機機器制御労働組合の三十代の若い組合員からも、「辞めろということか」と怒りの声があがっています。実際には20%以上もカットされる人も出ます。現在専任職一級五号(五十代後半が多い)の人が新たな成果主義賃金で同程度の格付けをされた場合、月額賃金は22%(約八万円)もカットされ、一時金は年間三十三万円の減額になります。

 「個別賃金決定方式が強まれば、会社の業績と自分の評価ばかりが気になり、労働者がバラバラにされてしまう。配転や出向、転籍に応じ、生産体制の乱れにも必死にがんばってきた。従業員の努力を無視したやり方は許せるものではない。会社は社会的責任を果たしてほしい」と五十代の労働者は話します。


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