2004年3月13日(土)「しんぶん赤旗」
韓国国会が十二日に可決した盧武鉉大統領に対する弾劾訴追は、(1)記者会見で与党・開かれたウリ党支持を公言した選挙法違反(公務員の政治的中立義務違反)(2)大統領の実兄や側近の不正腐敗(3)経済失政―を挙げています。とりわけ、側近や実兄が大企業からわいろを受けとっていたことは、大統領支持率低下の原因にもなっています。
野党ハンナラ党は弾劾案の可決を「救国の決断」、新千年民主党(民主党)は「議会制民主主義の勝利」だとする談話を発表しました。
しかし、現地メディアは、弾劾訴追の背景には四月十五日の総選挙を前にした野党の焦りがあるといいます。国会(定数二百七十三)でウリ党は四十七議席にすぎず、ハンナラ党と民主党がそれぞれ百四十四、六十二の議席を占めます。一方、最近の支持率調査ではウリ党23・6%、ハンナラ党19・4%、民主党10・4%です。
ソウルの会社員・李善禄さん(33)は「大統領の慎重さを欠く言動や、側近や親せきの不正は批判されても仕方がない。しかし、弾劾は国民が選んだ大統領を罷免する最後の手段だ。選挙を意識した政争の手段にするのは国民をばかにしていると思う」と語りました。
現地メディアの弾劾案可決直後の世論調査では、弾劾賛成24%に対し反対が74%に達しました。
大韓弁護士協会は十二日、公式声明を発表し、▽「選挙法違反」は処罰対象にならない軽微なものである▽側近の不正は大統領の職務執行との関連が明らかでない―と指摘。「弾劾訴追権の乱用」であり、「立法府が弾劾事由のない弾劾訴追を可決したことは、憲法と法律を踏みにじるものであり法治主義の終えん」だと断じました。
国会前では十二日、弾劾案撤回を求めて集まった約千人の市民が「国会のクーデターだ」と非難しました。若者が中心の大統領支持者、参与連帯や環境運動連合などの有力市民団体会員、「民主社会をめざす弁護士会」の会員などです。
盧大統領は弾劾訴追案可決後、メディアに対し、「憲法裁判所は法的に判断するので政治的な判断とは違う。結論が別のものになると期待している」と表明しました。面川誠記者