日本共産党

2004年3月12日(金)「しんぶん赤旗」

解説

三菱車タイヤ脱落

問われる安全軽視の対応


 横浜市瀬谷区の死亡事故から二年、同社が把握した最初のハブ破損事故から十二年。今回のリコール(無償回収・修理)はあまりにも「遅すぎた」といえます。

 三菱製大型車は、一九九二年以来、五十六件もの「ハブ」破損事故(うち脱落は五十件)を起こしていました。

 同社は、大型車の脱落事故の「多発性」を把握しながら、使用者側の「整備不良」としてリコールをしませんでした。

 記者会見したポート社長は、旧経営陣も「安全優先で対処してきたことに間違いない」と繰り返しました。「安全優先」を語るならなぜリコールしなかったのか…。同社の事故後の対応は、設計・製造上の欠陥は認めないが、リコールと同様の無償交換を実施するという奇妙なものでした。

 車輪と車軸をつなぐ部品「ハブ」は特殊鋳鉄製で「壊れることを想定していない」(自動車業界関係者)、要の部品です。そのため車検時の点検項目にもなっていません。

 大型車のタイヤ脱落事故はハブ破損以外にも、ホイールボルトの折損や、ハブベアリングの焼きつきなどが原因で頻繁に起きています。

 しかし、ハブそのものが破損する例は、現在まで三菱以外のメーカーでは報告されていません。

 また、本紙報道が明らかにしたように同社は、八〇・九〇年代にハブの設計変更を数回実施。ハブフランジ(つば)部の付け根に丸みをつけたりして補強を試みていました。

 さらに、総重量規制の緩和に対応した九六年以降のハブ(フランジ部の肉厚を二ミリ厚くした)では破損が起きていないことが分かっています。

 同社が繰り返し設計変更をしてきたことからも九六年以前の旧型ハブに欠陥があったことは明らかです。

 国土交通省の責任も重大です。現行リコール制度は、届け出をするかどうかをメーカーの自主性に任せています。

 国土交通省は、三菱同様「整備不良」を主張してきました。メーカー側の説明を「うのみ」にしほんろうされています。

 日本共産党の瀬古由起子衆院議員(当時)は、二〇〇二年五月の国土交通委員会で「何を根拠に整備不良といえるのか」と質問し同社への立ち入り調査を要求しましたが実施されていません。

 神奈川県警の同社への家宅捜索は二度行われ捜査は大詰めを迎えています。人命を一瞬のうちに奪った痛ましい事故。徹底した責任追及が必要です。

遠藤寿人記者


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