2004年3月12日(金)「しんぶん赤旗」
児童虐待の相談が急増し、胸を締め付けられるような事件が相次いでいます。今国会で審議されようとしている児童虐待防止法改正案について、日本共産党副委員長で衆院議員の石井郁子さんに聞きました。
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今回の法改正について、与野党で協議をすすめてきました。日本共産党は、虐待で苦しむ子どもをどう救い出すのか、虐待した親をどう支援するのか、という立場からのぞみました。
ポイントの第一は、法案の目的である第一条が大きく変わること。児童虐待は児童の人権を著しく侵害するものだと明記し、予防や早期発見に力を入れることや、児童の自立の支援も盛り込みました。深刻な実態を目の前にした多くの関係者の声や運動が反映された結果だと思います。
二つ目に、「虐待」の定義を広げて具体的にするとともに、DV(配偶者間の暴力)も加えています。暴力が子どもに及ぶ場合も多く、家庭内暴力を見続けること自体が子どもに心理的な外傷を与えるからです。同居人による虐待も含まれます。
三つ目は、親への指導だけではなく「支援」をきちんと入れたことです。国会の参考人質疑でもこぞって「親の支援をどうするかが課題だ」と指摘していました。子どもを親元に帰しても、虐待を繰り返すケースが少なくありません。上からの指導や説教だけではなく、ケアやサポートという視点は欠かせません。
四つ目が、国や地方公共団体が行う必要な体制の整備です。「整備に努めるものとする」という現行法に対しては、「弱い」「手薄だ」との声がありました。改正案では「努めなければならない」と規定されました。
五つ目が、通告です。現行では「虐待を受けた児童を発見した場合」とされていますが、虐待の証拠は、事前にはなかなかつかみにくいのが実情です。子どもはもちろん言えませんし、「虐待したというなら、証拠を言ってください」と親に反論されてしまいがちです。改正案では「児童虐待を受けたと思われる」と広く定義しました。
大きな論点だった警察の立ち入りは、現行法の域を出ず、検討事項とされました。
法改正とともに、体制の整備も急がれています。まず、児童福祉司が極端に少ない。同様の仕事をするイギリスのソーシャルワーカーと比べると一人が抱える件数は約五倍で、明らかにオーバーワークです。一時保護の施設も満杯で、緊急避難の場もありません。
また、虐待をしてしまった親にたいする支援体制もありません。虐待した親を鑑定した専門家は、「どんな親も最初から虐待をしていたわけじゃない。親自身が困難をかかえている」と言っています。何かの歯車が狂ったことで、虐待へと走ってしまったのでしょう。今後は支援のプログラムも必要でしょう。
大阪・岸和田市の中学三年生は、食事をほとんど与えられず、暴行を加えられるなどで今もこん睡状態です。その後、同様の虐待で衰弱死した子どももありました。一年間以上も学校に行かなかったというのに、学校や周りの人たちが「なんか、おかしいね」で終わってしまうのは、とても悲しい。学校だけが責任を抱え込む必要はありませんが、学校は虐待を発見できる場でもあるのです。子どもと家庭を支援する温かい福祉のネットワークが求められていると思います。
日本共産党はいま、社会の道義的な危機を克服する国民的対話と運動をすすめています。子どもを守るための社会の自己規律や、子どもの成長を支えあう草の根からのとりくみなど、未来を担う子どもに健やかな成長を保障する社会にしようと呼びかけています。
困ったら「助けて!」と叫ぼう、あなたを受け止める人たちがいるよ、と親にも子にも伝えたいですね。