2004年3月10日(水)「しんぶん赤旗」
政府が閣議決定した道路公団民営化四法案は、九千三百四十二キロの高速道路整備計画を前提に、採算性も必要性も無視したムダな高速道路建設を推進するものです。
法案では、国が道路建設の施行命令を出す方式をやめて、新会社の建設路線は国土交通相との協議で決めるとしています。
しかし政府は新会社の株式の三分の一を持ち、社長人事や事業計画を認可する権限を持ちます。新会社が建設を拒否しても国交相の諮問機関の社会資本整備審議会が「正当な理由なし」と判断すれば建設せざるをえない仕組みとなっています。建設資金の調達に政府保証をつけることも新たに盛り込まれました。
「ムダな道路をつくらない」というなら、道路整備計画を凍結・見直すべきです。ところが、政府が決めた「抜本的見直し区間」は残り二千キロのうちわずか百四十三キロ。一方で七百キロは税金投入の「新直轄方式」で建設することを決めています。
民営化とは名ばかりです。料金収入と借入金を使って、採算性も必要性もない不要な道路を造り続ける現在の公団方式を看板をかえて続ける仕組みというしかありません。
しかも重大なのは、民営化によって国民の新たな負担や、税金投入が限りなく広がる危険性を抱え込むことです。
新会社が造らない不採算路線は税金投入の「新直轄」方式で建設することを決め、年間六兆円に膨れ上がった「道路特定財源」(税金)を投入することになっています。
四十兆円にもおよぶ借金返済は新会社から切り離され、新設する保有機構が背負うことになります。機構発足後、「四十五年までに解散」としましたが、完済できる保障はまったくありません。
そのうえ新会社は新たな借金をして高速道を建設するため、返済どころか、借金が雪だるま式に膨らんで返済のメドもたたなくなる危険性があります。
一方で、道路公団をめぐる政官財の癒着、ファミリー企業や天下りなどやる気さえあれば、すぐにでもできる改革はまったく放置されたままです。
それどころか、民営化で道路建設や管理を独占する民間企業が生まれるのに、工事の発注などは民間企業の一取引として行政の関与が制限され、新たな利権や癒着を逆に広げかねません。
小泉首相が「自民党をぶっ壊す」とぶち上げた道路公団改革は、古い自民党政治を温存・拡大するものでしかなかったことを浮き彫りにしています。 深山直人記者