日本共産党

2004年3月7日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

日本共産党綱領と天皇制、自衛隊

より明らかになった変革の道すじって


ハナコ

 日本共産党は第23回大会(1月13日―17日)で綱領を改定しました。商業マスコミはそろって「共産党が綱領全面改定/天皇制・自衛隊 当面は容認」などと報道しました。そのためか「天皇制や自衛隊を認めたの?」といった質問を受けることがあります。綱領にそって、みなさんといっしょに考えていきましょう。

カタ郎


今度の綱領は天皇制、
自衛隊を容認したの?
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 いいえ、違います。「容認」って「よいとみとめて、ゆるすこと」(『広辞苑』第五版)ですよね。日本共産党は、天皇制や自衛隊を「よい」ものだとは考えていないし、民主主義の精神や人間は平等という精神から、天皇制をなくす、「戦力はもたない」と定めた憲法九条に違反する自衛隊もなくすという立場に立っているんです。

 天皇制について、綱領は、「一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではな」いと書いています。そのうえで、「国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだ」という方針をうちだしています。

 共和制というのは、国民が選挙で選んだ議会や指導者(首相、大統領)を通じて政治をすすめる体制のことです。王様などが統治権をもっている君主制とはちがいます。

 国民が主権者で、国の機関の担い手も、すべて国民自身の中から選ばれる政治体制のことをいいます。いまでは世界のほとんどの国がそうですね。

 自衛隊については「憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」と書いています。

 つまり自衛隊は憲法九条に違反する存在だから、その解消をめざす、という目標をはっきりかかげているんですよ。

 このような考えと目標のうえにたって、現状をどのように変えていくのかという道すじを具体的に明らかにしたのが、こんどの改定の大きな特徴なんです。

戦前は、天皇制打倒を
掲げていたと思いますが…
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 戦前と戦後では、天皇制の性格と役割が憲法で大きく変わったんです。

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 戦前は、天皇が主権者で、立法・司法・行政の区別なく、国を統治する権限をすべてもっていました。軍隊への指揮・命令、戦争を始めたり終結させる宣戦・講和の権限もすべて天皇がにぎっていました。

 ですから戦前の日本では、天皇制をなくさない限り、平和も民主主義もないし、国民が主人公の日本をつくることも実現できませんでした。日本共産党は、命がけで天皇制打倒の旗をかかげてたたかい、多くの先輩党員が命を落としました。

 戦後は事情がまったく変わりました。日本国憲法は、国民が主権者であることを明記しました。国民の多数が政治を変えたいと思えば、選挙などを通じて、変えることができる制度になりました。半面、天皇は「憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(第四条)存在になりました。

 天皇条項を含んだいまの憲法のもとでも、日本の民主的改革はできます。ですから、日本共産党は四十三年前に綱領を決めたとき(六一年綱領以降)も、「天皇制打倒」の旗をかかげなかったのです。

 では、どうやってなくしていくんですか。

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 天皇の制度というのは、憲法で定められた制度です。日本共産党の考えだけで変えられるものではありません。これをなくすことは、国民の中で“民主主義を徹底させよう、そのためには民主主義と矛盾する制度はもう終わりにしよう”という声が大きくなったとき、はじめてできるようになります。

 そこで綱領では「天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」と書いたんです。

 そのときまで天皇の制度は残りますが、大事なのは、憲法で決められたことをきちんと守らせることです。

 綱領は次のようにのべています。「天皇条項については、『国政に関する権能を有しない』などの制限規定の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する」

 たとえば国会の開会式は、天皇が絶対者だった戦前のやり方をひきつぎ、天皇を日本の主人公のように扱っています。だから日本共産党は開会式を欠席して、反対の立場を明らかにしているんです。

 ほかにも、憲法の「国事行為」にもない「皇室外交」なるものがやられたり、天皇を「元首」扱いしようとするなど、憲法からはずれた動きは絶えません。これを許さないことが大事です。

 そしていま何よりも重要なことは、憲法九条を中心とした憲法改悪の企てを許さないことです。

 将来、天皇について「国民の合意」や「国民の総意」で解決するというのは、問題の先送りのような気がしますが…。

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 日本共産党は「国民が主人公」の原則をなにより大事にしています。どんな社会変革も、国民の合意にもとづいて一歩一歩進んでいくという考え方を、天皇制の問題でも貫いているんです。

 いまイギリスでは王室の存廃をめぐる国民的論議がおきています。日本でも国民が民主的な社会をめざそうとすれば、民主主義や人間の平等と両立しない世襲制の天皇を「象徴」とする制度の存続が問われるときがくると思います。

自衛隊はすぐに廃止するの
ではないのですか?
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 自衛隊は天皇の場合とは違って、存在自体が憲法違反ですよね。違憲の自衛隊を解消すべきだという日本共産党の立場は、変わっていないんです。

 ただ、自民党政治のもとで半世紀もの間、自衛隊が存在する中で、“自衛隊なしに日本の安全は守れない”という考えが広められました。

 国民が“自衛隊をなくしてもいいよ”という気持ちになるには、それだけの時間と手続きが必要になっています。

 綱領は、憲法九条の完全実施をめざす立場に立ちながら、国民の合意をもとにして一歩一歩、自衛隊問題を解決していくという、方法と道すじを明らかにしたんです。

 どういう道すじなのですか。

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 自衛隊問題は大きく三つの段階をへて解決していくことを展望しているんです。

日本共産党綱領から

 日本共産党の綱領は、(1)戦前の日本社会と日本共産党(2)現在の日本社会の特質(3)世界情勢―二〇世紀から二一世紀へ(4)民主主義革命と民主連合政府(5)社会主義・共産主義の社会をめざして――という五つの章からなっています。天皇制や自衛隊については、日本共産党がめざす民主的改革の内容を明らかにした「四、民主主義革命と民主連合政府」の章で、次のように書いています。

 天 皇

 「党は、一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」

 自衛隊

 「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」

 日本共産党は、日本を「アメリカの世界戦略の半永久的な前線基地」にしている日米安保条約を廃棄してこそ、民主的改革の本格的前進の道が開かれると考えています。

 第一段階は、この安保条約を廃棄する前の段階です。「海外派兵立法をやめ、軍縮の措置」をとることが課題となります。

 第二段階は、安保条約を廃棄して軍事同盟からぬけ出した段階です。自衛隊の民主化や、大幅な軍縮を進めていきます。

 国民の合意で憲法九条の完全実施にとりくむのが、第三段階です。アジアの国々とも平和で安定した国際関係をつくりあげるために努力します。

 “自衛隊がなくても平和に生きていけるじゃないか”と国民が確信をもてるようになって、自衛隊解消への合意が熟していくのと歩調を合わせて、九条の完全実施に向かう措置にとりくみます。

 日本共産党はこの方針を、四年前の二十二回党大会で、「自衛隊問題の段階的解決」として体系的に明らかにしました。綱領は、その内容を簡潔に要約しています。

 どういう道すじなのですか。

 自衛隊をなくす条件が熟するとはどんなことですか。

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 たとえば第三段階に進むにあたってやるべき課題の一つに「非同盟諸国首脳会議」に加盟することがあります。この会議は、“どんな軍事ブロックにも加わらない”という国々の集まりです。

 憲法の平和原則からすれば当然ですし、“もう軍事ブロックに入らない”と行動で示すことは、周辺の国々と本当の友好関係を深める貴重な糸口ともなります。

 このように、道理ある平和外交によって平和的な国際関係を築いていけば、国民の中でも「もう、自衛隊は必要ない」という合意が成熟する条件が整ってくるでしょう。そのもとで国民がじっくりと日本の安全保障のあり方、自衛隊の将来を論議し、「国民の合意での憲法九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」ことになります。


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