日本共産党

2004年3月4日(木)「しんぶん赤旗」

神奈川・ノイズ研訴訟 横浜地裁支部判決

「成果主義」導入の賃下げに歯止め


 労働者の仕事の「成果」で個別に評価・査定して賃金を決める成果主義賃金の導入で賃下げ、降格人事を実施するケースが全国の職場に広がっています。こうしたなか、「成果主義導入で一方的な賃下げは無効」として賃金や一時金の差額の支払いを命じる判決が二月二十六日、横浜地裁川崎支部で出され、注目を集めています。(原田浩一朗記者)

 訴えていたのは、測定機器製造のノイズ研究所(本社・神奈川県相模原市)で働く鈴木章生さん(50)、比嘉かよ子さん(43)、大隅俊郎さん(42)の三人です。

 ノイズ研は、電子機器にとって大敵となる落雷や静電気で生じるノイズ(瞬間的な高電圧)の影響を防ぐ目的で、ノイズを人工的に発生させる機器をつくっています。

 比嘉さんは事務職として、鈴木さんと大隅さんは検査の仕事を長年つづけてきました。

最大8万円、24%の賃下げ

グラフ

 会社は二〇〇一年四月、職場にあるJMIU(全日本金属情報機器労組)ノイズ研究所分会との団体交渉を拒否したまま、労働条件や規則を定める就業規則を一方的に変更し、賃金制度を年功序列型から成果主義型に変えました。このとき、大幅な賃下げが強行されました。(グラフ参照)

 原則として勤続年数とともに上がっていた「職能給」が、勤続年数に関係なく職務に基づくとする「職務給」に変えられ、三万円から七万円も低くされました。鈴木さんは係長から主任へ降格され、比嘉さん、大隅さんは主任から一般社員に降格されました。役職手当(七千円―八千円)がカットされました。

 会社は「職務内容を見直した結果、適正な格付けにしたにすぎない」といい張りました。

 年齢給も四十歳まで上がっていたものが三十歳で頭打ちに改悪され、関東在住者に支給されていた地域手当(三千円)もなくされました。

 一番下がった比嘉さんの場合、24%をカットされ、月八万二千円もの賃下げになりました。

 会社は「代償措置」として調整給を設け、一年目は基本給の減額分月七万五千円―三万八千円、二年目はその半分を支払いましたが、三年目以降は打ちきりました。

仕事変わらずローンと同額

 比嘉さんは「八万円といえば、わが家のローンとほぼ同額。仕事の中身はなにも変わっていないのに賃金をガタンと下げられました。生活設計がいっぺんに狂ってしまいました」といいます。

 JMIU組合員の比嘉さんに加え、鈴木さん、大隅さんが組合に加入。賃金減額分の支払いを求め、〇二年一月裁判を起こしました。

 地裁判決は、賃金など労働者に不利益を及ぼす就業規則の変更は、必要性と合理性をもたなければならないと強調。成果主義による賃上げとなる労働者の給与の原資が鈴木さんらを含む一部労働者の犠牲によるものであり、「賃下げ、降格となる労働者には、軽減・緩和措置が必要」と指摘しています。大きな支障なく生活を変えるのに相当な期間、住宅ローンや子どもの学費などを考慮する必要があるとのべ、会社側が定めた「二年間はあまりに短く、減少額も急激」「代償措置はいずれも不十分で、新賃金制度は不合理であるから、就業規則の変更は無効」と断じ、賃金の差額を支払い、役職も戻すよう会社に命じました。

 成果主義賃金制度であっても、賃下げとなる個々の労働者への十分な配慮を求めた地裁判決は、成果主義賃金の問題点を明らかにし、身勝手な賃下げに歯止めをかけたものです。

利益上がるが活力感じない

 比嘉さんは「成果主義賃金が導入され、職場は働きにくくなりました。利益をあげても、社員の活力が感じられません。社員が生き生きした職場にしたい」と話します。

 成果主義賃金が導入され、恣意(しい)的な査定がまかり通る会社に嫌気をさし、三年間でベテランを中心に二十一人、約二割の労働者が職場を去っていきました。

 JMIU分会長の鈴木さんはいいます。「多くの職場の仲間が、勝利判決を喜んでくれました。判決にもとづき、降格、賃下げされた労働者の賃金を戻せと会社に求めていきたい」


 【「成果主義賃金は賃下げ降格自由制度」】 成果主義賃金は、鈴木さんらが実感しているように、「賃下げ、降格が自由な制度」です。総額人件費の削減がねらいであり、労働者に「成果」を競わせ、賃上げになるのはごく一部の労働者。がんばってもほとんどは現状維持か賃下げです。

 ノイズ研では、「成果」の評価は上司のさじ加減一つで、最終的には社長の評価で決定されます。年二回五段階で評価されていました。今年から十段階評価になりましたが、基準はまったくあいまいです。


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