2004年3月4日(木)「しんぶん赤旗」
「政治的行為の制限違反による逮捕は極めて異例」(「日経」三日夕刊)と一般新聞も書いた異常な弾圧――。三日、「しんぶん赤旗」号外を配布した社会保険庁目黒社会保険事務所の堀越明男さん(50)を警視庁公安部が国家公務員法違反の疑いで逮捕し、関係個所を捜索したことは、憲法に反する不当な政治弾圧です。選挙違反を取り締まる刑事警察ではなく、公安部があえて昨年の行為を口実に乗り出してきた異常捜査に批判の声が強まっています。
公安部によると、堀越さんは、昨秋の総選挙で、自らの住居がある東京・中央区で日曜日と休日を使って、「しんぶん赤旗」号外を配布し、これが国家公務員法一〇二条一項(政治的行為の制限)と人事院規則にふれる――としています。
これは、とんでもない言い掛かりです。憲法は、主権者を国民と定め、思想・信条の自由を保障しています。国家公務員も当然、その自由が保障されています。
国家公務員法一〇二条は「人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」としています。これ自体、憲法が保障する思想・信条の自由を不当に制限するものです。しかし、その人事院でさえ、「禁止規定の適用は、その行為の態様、社会通念に応じて具体的に判断して規則を適用すべきである」(一九五〇年一月、法制局長)として、ビラ配布などを違反でないと扱ってきました。実際、これまでに同種の事件はほとんど起きていません。
一九八三年のいっせい地方選挙で、公営掲示板にポスターをはった都内の郵政省職員が警視庁に逮捕される事件がありましたが、東京地検は不起訴としています。そうしたことからみても、今回の逮捕は常軌を逸した不当なものです。
さらに、「なぜ、今になって…」という疑問の声も上がっています。総選挙にかんする他党派の違反は、昨年のうちに大半が捜査を終了しています。四カ月も前の、総選挙時の話をいまさら持ち出すこと自体、特別な政治的意図を感じざるをえません。
通常、選挙にかんする違法行為は、刑事部門が担当します。今回、警視庁は公安部が捜査を担当しています。公安部は、日本共産党にたいし、日常的に違法な情報収集や監視をしています。その公安部のねらいは、家宅捜索個所をみても、明らかです。
都内の日本共産党の地区事務所や党区議の自宅や事務所など六カ所に及びました。党事務所のパソコンなども強引に押収しました。大掛かりな捜索・押収自体がそのねらいを示しています。
合法行為を「犯罪」にでっち上げ、思想・信条の自由のみならず結社の自由まで侵害する公安警察の政治弾圧は許せません。