2004年3月3日(水)「しんぶん赤旗」
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チュニジア サラ・ハンナシ大使
アルジェリア アマール・ベンジャマ大使
ウガンダ ジェームス・ボリバ・ババ大使
カメルーン ムベラムベラ・ルジェーヌ大使
ガーナ バフォー・アジェバウア大使
リビア ムフター・モハメド・ファイトゥーリ大使
レバノン ジャアファル・ムアウィ大使
ヨルダン サミール・イーサ・ナウリ大使
〔質問〕世界の共産党の運動やソ連、中国などの複雑な状況は、日本共産党にどのような影響をもたらしたのか。どうして自主性をつらぬくことが可能だったのか。
〔不破〕私たちは、当時から世界の共産党はそれぞれ独立の党であり、対等・平等の立場だと主張してきた。ソ連も中国の毛沢東派も、それを認めないで、一九六〇年代中ごろ、わが党への攻撃にのりだし、党内にソ連派や中国派をつくって干渉してきた。私たちは、どちらの攻撃も完全に打ち破った。中国とはその後、三十二年間、党関係の空白があったが、九八年に現在の指導部が過去の干渉の誤りを率直に認めた。その態度はきわめて誠実なものだった。それをもとに関係を正常化、よい関係を発展させている。
ソ連とは、十五年後の七九年、ソ連側が干渉の誤りを認め、外国の党には今後干渉しないということで関係を回復したが、その数日後にアフガニスタンへの侵略を強行した。私たちは全面的に反撃し、緒方さんはアフガニスタンの現地にまで出かけて、侵略の事実調査をやった。ソ連の党と、この問題だけで会談をやったが、専門家を動員したというソ連側代表団は、途中で回答不能におちいった。こういう状況だったから、関係は一応回復したものの、しばしば論争や批判をおこない、九一年にソ連が解体した時には、私たちは「巨悪の崩壊を歓迎する」という声明をだした。
ソ連への厳格な対応にたいする驚きの声や「イスラムとの提携がそのころからすでにあったのか」などの感想。
〔質問〕アジア情勢の見方を聞きたい。
〔不破〕九九年にマレーシアなどを訪問して、東南アジアに平和の枠組みがしっかりつくられていることを実感。しかし、北東アジアにはその枠組みがない。その震源はなによりも北朝鮮にある。以前から北朝鮮問題の外交解決を重視してきたが、その思いを強めて、国会で無条件の交渉再開を提案した。ジグザグはあったが、それが実って、超党派の代表団にわが党もはじめて参加することになり、緒方・穀田両議員が加わった。これが、政府間交渉再開への転機になった。
もともと北朝鮮の無法性は、私たちが、もっともじかに体験し、また追及してきた問題だ。八三年のミャンマーでのテロ事件を私たちが批判したことが、北朝鮮との関係断絶のきっかけになったが、さかのぼれば、六〇年代の末に、北朝鮮にいわゆる「南進」の動きがあったときに、わが党が代表団をだして、反対の申し入れをしたことがあった。その時、金日成書記長は、「南進の意志はない」と言明し、事態はおさまったが、わざわざそういう申し入れに来たことは、面白くなかったのだろう。その後、中間的にいろいろあって、八三年のミャンマー事件になり、今でも北朝鮮との関係はまったくない。
しかし、この問題の平和解決は、北東アジア全体の平和がかかる問題。そういう立場で、努力している。
各国大使から、イラク問題と今後の見通しやイラクの国内情勢について、同じイスラムとして、また周辺国としての思いも含め、発言が続く。不破議長は、イラク情勢と自衛隊派遣についての党の立場を、日本とイスラムの友好関係の角度に重点をおきながらのべる。
〔志位〕イラクの今後について、先日の周辺国外相会議で、早期の主権移譲などの合意が行われたことは、たいへん重要だ。
周辺国の大使から「その通り」と同意の声があがり、さらに会議の内容が詳しく説明された。
〔質問〕日本共産党として、アフリカ・中東の国々と日本との経済関係の強化のために、なにをやろうとしているか。
〔不破〕この問題では、政党としてやるべきことと、政府としてやるべきこととがある。私たちは、日本の国民のあいだで、この地域が世界で果たす地位と役割の重要性を理解してもらうことにつとめている。だいたい地球人口六十二億人、そのうち、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの人口は、中国を別にしても三十五億人、そこにはイスラム諸国会議機構もあれば非同盟諸国会議もあり、世界政治での役割は二十一世紀にさらに大きくなるだろう。この理解を深めることが、国民どうしの交流の土台にもなり、経済交流を支える力も持つ。私は、昨年七月に招かれてチュニジアを訪問した時、「しんぶん赤旗」に『チュニジアの七日間』というルポルタージュを三十一回連載し、今度本にもしたが、それはこういう相互理解に役立ちたいと思ってのことだ。(チュニジア大使、大きくうなずく)
政府の仕事では、アフリカ諸国、中東諸国を一まとめで見るのでなく、一つひとつの国をよく研究し、それにあった交流を研究することが、大事だと思っている。おそらく、この点では、日本はヨーロッパ諸国より大きく遅れているのではないか。
同感の表情や声が多い。また、アフリカには日本といえば「大会社」というイメージがあるから、日本共産党がアフリカを訪問して、“日本には別の顔もある”ということをアピールすることが大事だ、との意見も次々とでる。
〔質問〕中東問題でも、同じことがいえる。パレスチナ問題に注目してほしい。
〔不破〕(その日の「しんぶん赤旗」を広げながら)今日も、イスラエルが築いている無法な「分離壁」の特集をだした。三人の海外特派員が、それぞれの角度から取材して、この特集をつくった。
熱心にメモをとりながら、「何日付の新聞か」と質問する大使もいた。「日本共産党は、われわれのことをよく理解してくれており、日本にそうした政党があることを知って安心した」との感想もだされる。
〔質問(ガーナ大使)〕私の国のことを少しでも知っている政党があることを知って心強い。そのことを示す党の立場を、優先順位で示すと、なにがいえるか。
〔不破〕第一は、アジア・中東・アフリカとの友好を外交の第一に置いていること。第二は、今度の綱領で「諸文明間の対話と共存」を世界の大きな目標として打ち出したこと。ここでは、イスラム世界との共存の問題をとくに考えた。
あなたの国の問題だが、私が六六年に訪中した時、まだ中国は世界の広い国々と外交関係がない時代だった。釣魚台という広い迎賓館にいた外国代表は、私たちのほかは、ガーナのエンクルマ大統領だけだった。北京の街のなかでも、いたるところに「エンクルマ大統領歓迎」の横断幕があった。
この秘話を披露すると、ガーナ大使は「そのことを話すだけでも、あなたのガーナ訪問の価値がある」と応じ、テーブルは笑いに包まれた。
日本共産党は七〇年代以来、ベトナム、アフガニスタン、北朝鮮、パレスチナ問題などについて原則的で先駆的な立場をとってこられました。その意味で私たちは日本共産党にたいして多大な尊敬の気持ちをもっています。今日は不破議長、志位委員長をお迎えして話をうかがう機会をもてたことはうれしい限りです。
日本共産党は、外交活動の分野で世界や東アジア情勢について重要な活動をおこなっており、今日は、啓もうの機会としていただきたいと思います。
今夜は食事も会話も楽しみました。また、中東とアフリカ諸国の新しい友人を得てたいへんうれしく思います。意見の交換は情報に富み有益でした。私たちの中東やアフリカ諸国とのつながりは始まったばかりです。しかし、交流を重視する私たちの気持ちは誰にも負けないつもりです。
ハンナシ大使のご厚誼(こうぎ)でこのような機会をつくっていただき、感謝しています。それぞれの国は社会や制度の面で違いはあっても、平和を求める気持ちだけは一つです。ここに依拠して豊かな多文化間の交流を深めることが大切だと思います。この交流を一過性にしないで今後もぜひ続けたいと思います。