2004年2月26日(木)「しんぶん赤旗」
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国がハンセン病国家賠償請求訴訟で反省と謝罪を表明し、名誉回復と救済を誓ったにもかかわらず、ハンセン病元患者らに対する救済策を怠り、三十年余り元患者の夫と暮らしてきた妻にたいし、夫の死亡を機に療養所から「退去命令」まで出されていたことが明らかになりました。日本共産党の山口富男議員が二十五日の衆院予算委員会でとりあげたものです。
山口氏が示したのは群馬県のハンセン病療養所・栗生楽泉園の事例です。ここでは、介護職員の一割が三月末に定年退職し、補充の見通しすらたっていません。
山口氏は、国の強制隔離政策と人権侵害を違憲とする熊本地裁判決が出て三年だが、判決に従って国や厚労省が真に反省し、差別・偏見の除去や医療・福祉の整備拡充に努めているかが問われていると指摘。「いまでも入所者の半数に生活介助が必要なのに人手が足りていない。入所者のみなさんは『これまで経験したことのない危機的な事態だ』と不安に震えている」とのべ、必要な職員補充と看護・介護の十分な体制をとるのが政府の責務だとのべました。
小泉純一郎首相は「事務的な折衝で解決を見ていない問題があるが、鋭意解決するよう督促したい」と明言しました。
また山口氏は、園側から入所者の妻に出された「退去命令」文書を示し、「長く大変な苦労を強いられた方に対し、こういうやり方をすべきでない」と迫りました。坂口力厚労相は「いま初めて聞く話なのでよく調査したい」と答弁しました。
私たちの願い伝えてくれた |
ハンセン病問題で国の責務を追及した二十五日の日本共産党・山口富男衆院議員の衆院予算委員会質問をテレビで見た、群馬県草津町の国立ハンセン病療養所栗生楽泉園の鈴木幸次さん(80)=入所者自治会役員=は「私たち入所者の願いを伝えてくれた」といいます。
鈴木さんは「看護助手が七人も定年退職し、看護師にも欠員が出ているのに、施設側は補充ができないと開き直っています。こんなことは今回初めて。入所者の高齢化がすすみ、現在、百十二人が介助を必要としています。このままでは大変なことになる。先日、厚生労働省にも陳情に行ったが、国が熊本判決を受けて約束したことをきちんと守っていればこんなことにならなかった」と国の不誠実な姿勢を批判し、退去命令問題についても行政側の対応の遅れを指摘していました。