日本共産党

2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

平和と国民の暮らし・社会保障を
大事にする予算への大転換を

2004年度予算の抜本的組み替えを要求する(下)

2004年2月23日 日本共産党国会議員団


七、食料・農業、教育・子育て、環境などの予算を拡充する

農業予算を価格・所得保障中心に転換する

 農林水産関係予算案は、依然として公共事業費が半分をしめている。そのうえ、小泉内閣は、コメ政策「改革」と称して、中小農家への助成を削るなど、国の安定供給責任を放棄しようとしている。諫早湾干拓などのむだな公共事業を削減し、欧米諸国では当たり前となっている価格・所得保障を中心とした予算に転換する。国民の食品安全にかんする不安を解消するため、食品安全確保のための検査体制の強化をはかり、肉骨粉などの処分を推進するための助成や、BSE検査や死亡牛の処理経費の生産者負担軽減などを継続し、新たに脊柱(せきちゅう)処理のコストへの助成も実施する。アメリカからの牛肉の輸入再開は、安全性を保障するためにも、全頭検査の実施が不可欠である。

子育て支援予算の拡充

 政府は「待機児童ゼロ作戦」といってきたが、認可保育所はわずかしか増えておらず、公立保育所は二年間で三百三十四カ所も減少した。昨年十月時点の待機児童は六万人を超えており、政府の「作戦」の破たんは明白である。定員の「弾力化」の名による詰め込みや、営利企業の参入規制緩和などに頼るやり方ではなく、国の保育所予算を抜本的に拡充して、新増設をすすめ、延長保育・病後児保育などを拡充する。学童保育施設の増設と指導員の待遇改善をはかる。安心して子育てができるよう、全国で地方自治体が取り組んでいる乳幼児医療の無料化を国の制度として創設するとともに、小児救急の体制を確立する。深刻化する児童虐待問題などに対応するため、児童相談所の体制を強化し、市町村の担当窓口が実質的な役割を果たせるようにするために、必要な予算を増額する。

文教予算の拡充

 教職員の配置計画を年次計画どおり実施するため、教職員の削減を中止する。国の責任で三十人学級など少人数学級にふみだす。地方自治体が計画している新増改築や耐震化に支障をきたさないよう、公立学校施設整備費の削減をやめ、予算を増額する。国立大学の学費負担を軽減するとともに、無利子奨学金の大幅増枠など奨学金を拡充する。私学助成の一般補助の拡充、就学援助費の増額をはかる。図書館関連補助金の廃止を中止する。

環境・エネルギー・鳥インフルエンザ・災害対策など

 メーカーに廃棄物処理まで責任をもつ「拡大生産者責任」の制度を確立し、大量生産・大量消費・大量廃棄を見直し、資源循環型の社会・経済へと転換する。ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンや、シックハウス、シックスクールなど、有害化学物質への対策をすすめる。自動車の排ガス対策を強化して、未認定患者の新たな救済制度を確立するとともに、ディーゼル車排ガス浄化装置のための助成措置を拡充する。政府は京都議定書で約束した温暖化ガス削減の目標達成のめどを立てられずにいる一方、依然として原発偏重のエネルギー政策をすすめている。ところが原発の建設が思うようにすすまず立地交付金が余っているため、原発の周辺地域整備基金を五百三十億円も積み増して七百九十億円にしようとしている。こうした“遊休資金”をふくらますのではなく、省エネルギー対策を徹底し、家庭の太陽光発電への助成を強めるのをはじめ、風力や小水力、太陽熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーを促進する施策に予算を振り替えるべきである。

 東南アジアや中国、韓国で発生が確認された高病原性鳥インフルエンザは毒性が強く、人が感染した場合には死亡率が高い。もし国内で流行すれば人命の被害や社会・経済の打撃は深刻である。すでに開発されている感染拡大を防ぐことが可能な抗ウイルス剤の確保を国の責任で行うとともに、時間を要する人間への感染防止用ワクチンの開発と国家備蓄に早急に取りかかるべきである。災害で被害にあった住宅を再建する際の費用や賃貸住宅入居の支援などで、最大二百万円を支給する「居住安定支援制度」の創設は、阪神・淡路大震災の被災者をはじめ全国の災害被災者の個人補償を求める粘り強い運動が実った一歩である。また、三宅島島民への新たな支援が盛り込まれるなど前進面もあるが、被災者全体を対象とする実態にあった支援制度にするために、支給条件の緩和、対象世帯の拡大や支給額の引き上げなど、いっそう踏み込んだ対策が必要である。地震に強いまちづくりをすすめるため、住宅の耐震補強への助成を強めるとともに、消防職員の増員をはじめ必要な消防力の強化を図る。

八、浪費にきっぱりメスを入れ、暮らしの予算の財源を生み出す

 政府は、国民負担増を批判されると、「財政が危機的状況だから負担増はやむを得ない」と居直っている。その一方で、公共事業や軍事費をはじめ、巨額の浪費の構造にはメスが入れられないままになっている。財政危機というなら、まずこうした浪費こそきっぱり改めるべきである。そうすれば、社会保障や暮らしの予算を拡充するための財源を生み出すことができる。

浪費と利権の温床=道路特定財源にメスを入れ一般財源化する

 ガソリンや自動車に課税されている道路特定財源は、特別会計を含む国税分で三・四兆円、地方税・地方譲与税を含めれば五・七兆円もの巨額に達している。バブル崩壊後、国・地方の税収は二割以上も減ったが、道路特定財源は逆に二割も増加している。ところが、この財源の使途を道路関係に限定するという時代遅れの制度がいまだに続いている。戦後の復興期や高度成長期に比べて道路整備が格段にすすんだ今日、このような特定財源制度を続けているために、不要不急の道路建設が行われ、巨額の浪費が繰り返されている。また、この特定財源が与党道路族議員の「縄張り」となり、利権と政治腐敗の温床になっている。

 小泉首相が自ら掲げた「道路特定財源見直し」を棚上げしたことは、重大な公約違反である。道路特定財源の全面的な一般財源化に向け、〇四年度については当面、国税分について一般財源化し、年金国庫負担をはじめとした社会保障などの財源にも充てられるようにすべきである。

高速道路整備計画を廃止し、ムダな道路建設をやめる

 政府の「道路四公団民営化」方針は、無駄な高速道路建設にまったく歯止めをかけない点でも、四十兆円もの巨額の債務のツケを国民に押しつける点でも、天下りやファミリー企業などの政官財の癒着の構造を温存する点でも、まったく「改革」の看板に値しない。こうした反国民的計画は撤回すべきである。道路特定財源を注ぎ込んで採算性のない高速道路を造り続ける「新直轄方式」を中止し、国費だけでも千三百億円にのぼる予算を削減する。高速道路整備計画を廃止し、予算を大幅に削減する。

ダム、港湾・空港、農業土木など、不要不急の公共事業の削減

 公共事業は、特定財源の枠にしばられず、大型公共事業偏重をやめ、生活・環境・福祉型に転換するなどの見直しを行う中で、不要不急の事業を中止・凍結して、予算を大幅に削減する。とくに、過大な水需要を前提に計画されたダム建設や、関空二期工事をはじめとした空港や港湾建設の浪費をやめること、公共事業偏重の農業予算の見直しなどを徹底的に行う。

軍事費の大幅削減

 政府は「防衛費は1%と過去最高の削減」などと宣伝しているが、公務員給与の削減分などを除けば減っておらず、正面装備の契約額は5%も増加している。とりわけ、「弾道ミサイル防衛(BMD)システム」の整備予算(契約ベースで千六十八億円)が本格的に盛り込まれたことは、アメリカの地球規模の核戦略に日本をまきこむものであり、この計画を中止し予算を全額削減する。ヘリ空母(千五十七億円)や空中給油機(二百四十億円)をはじめとした正面装備予算、日米共同訓練経費などを大幅に削減する。「思いやり予算」(二千四百四十一億円)や「SACO関連経費」(二百六十六億円)など、世界に類を見ない手厚い在日米軍支援をやめ、沖縄の新基地建設を中止する。

政党助成金の廃止

 国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は廃止する。前官房長官による私的支出の疑惑が指摘されている官房機密費、組織ぐるみの不正支出が大問題となっている警察の捜査報償費など、税金のムダづかいに国民の怒りが高まっている。こうした不正の温床となる経費は厳しく削減する。

予算のあらゆる分野からムダをなくす

 昨年中に多くの特殊法人が「独立行政法人」などに衣替えしたが、独立行政法人分を合わせれば政府支出は横ばいで、削減すべき浪費はほとんど存続されたままである。関西国際空港株式会社や日本政策投資銀行、首都高速道路公団などは、逆に財政支出が増加しているほどである。こうした特殊法人等の浪費を厳しく削減する。

 〇四年度予算では、外為特会の一時借入金枠が百四十兆円、二年前の二・四倍にも急増する。これは巨額の財政赤字と経常赤字によってドルが暴落するのを買い支えるための資金であり、そのドルで米国債を購入することで、アメリカ政府の財政赤字を補てんし、イラク戦費を供給する結果にもなっている。ドル安・円高がさらに進行すれば、巨額の損失となって財政にはねかえるおそれもある。安易な増額を行うべきではない。

大企業・金持ち減税の中止

 〇四年度は、昨年から実施した大企業・資産家への「先行減税」にくわえて、連結付加税の廃止や、欠損金の繰越期間の延長など、大企業への減税がさらに拡充される。庶民には増税を押しつけながら、大企業には減税という不公平は許されない。大企業・資産家への減税措置を中止し、史上空前の利益をあげている大企業に、応分の税負担を求めるべきである。


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