2004年2月23日(月)「しんぶん赤旗」
「多重債務をなくす活動に取り組んでいる者にとって自信となりました」。そんなファクスが本紙編集局によせられました。利息制限法の上限金利(15―20%)を超える「SFCG」(旧商工ファンド)の高金利商法を認めなかった最高裁の画期的な判決(二十日)に反響が広がっています。判決の意味と、ここまで追いつめた運動の重要な一翼を担った「しんぶん赤旗」のキャンペーンをあらためて振り返りました。
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今回の最高裁判決の核心は、利息制限法の上限金利を厳格に守らせ、違法高金利を引き下げる運動の強力な「武器」になる――という点です。
利息制限法は、金利上限を元本百万円以上では15%、十万円以上百万円未満では18%、十万円未満では20%と定めています。しかし、商工ローンやサラ金は超過金利をとって、大もうけしてきました。
その根拠に使ってきたのが貸金業規制法四三条の「みなし弁済」規定です。利息制限法に反した金利をとっても有効と“みなす”という例外を定めたものです。最高裁判決はこの「例外」を厳格に判断すべきだとしました(別項)。さらに裁判長の補足意見もふまえると、現在、商工ローンやサラ金がおこなっている契約方式は通用しなくなります。
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判決を引き出した根本の力は違法、異常な高金利との長年のたたかいです。日栄・商工ファンド全国対策弁護団や、各地の民主商工会、被害者の会などが力を合わせて運動してきました。そのなかで、重要な役割を担ってきたのが「しんぶん赤旗」と日本共産党でした。
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船橋民主商工会で商工ローンなど高金利による多重債務の解決にあたる「さざんか道場」の道場長をしてきた田中恵美子さん(43)は指摘します。
「『返済できないなら腎臓(じんぞう)を売れ、目ん玉を売れ』という非道な取り立てを明るみに出した『赤旗』報道が私たちの活動を励まし、世論も私たちに味方するようになりました」
商工ローン大手、日栄(現ロプロ)のすさまじい違法取り立てを最初に伝えた「赤旗」報道は「社会に大きな衝撃を与え、多くの人たちにとって消費者金融、商工ローンなどの持つ問題が何なのか考える重要な契機」(全国クレジット・サラ金被害者交流集会基調報告)になりました。
商工ファンドの債権回収の手口の特徴は、手形訴訟を乱発して裁判所を取り立て機関に使ったことでした。「赤旗」は、全国の地方裁判所を調べ、商工ファンドが手形訴訟の七割を占めていることを明らかにしました。
被害者の立場から多重債務地獄の根絶をキャンペーンした本紙報道に外国メディアも注目。イギリスのテレビ局が東京・葛飾民主商工会の「しょうぶ道場」を取材し、日本人はなぜ金融の取り立てで自殺するかを海外に伝えました。
「大銀行が巨額の融資を商工ローンにしなかったならば悪徳商法は運営できなかった」と本紙で指摘したのは『商工ローン 借りてはいけない』の著者、行徳峰史さん。「これは銀行の犯罪です」と語っています。
高金利を求めるサラ金業界の政治団体が自民、公明、民主各党議員のパーティー券を購入して政界工作をしていた事実の本紙スクープもマスコミの注目を集めました。大銀行や政官界にまで追及を広げたのが「赤旗」報道の特徴です。
テレビや野球場などのサラ金CMも大きな問題でした。ある球界幹部は、「『赤旗』掲載よりスポーツ界へのサラ金侵入に驚きました」と本紙記者に手紙をよせました。「小生としても法規制と現実のはざまをみて今後とも熟慮していく」としるしました。
前出の田中恵美子さんは語ります。
「利息制限法で解決するだけでなく、『みなし弁済』をなくし、利息制限法の金利もさらに下げる必要がある。根本的には銀行の貸し渋り貸しはがしをやめさせ、中小零細企業を育成する金融制度をつくるようにしないと。銀行や大企業は守るが私たちは切り捨てられるという国の政治を改めさせる運動で私もがんばっていきたい」
最高裁が「みなし弁済」が適用されないと判断した事例 (1)契約書の交付について、貸付金額や返済方法、利息など必要な記載事項がひとつでも欠けている場合(2)貸し付け時に利息が天引きされた場合(3)弁済の受領書を直ちに交付しない場合。裁判長は補足意見で、利息制限法の上限金利を超える利息支払いを事実上強いる契約条項を結ばせた場合は、「自由な意思での支払い」といえず、超過利息は有効と認められないという判断を示した。
1998年12月 クレジット・サラ金問題に取り組む弁護士が中心に「日栄・商工ファンド対策全国弁護団」結成
99年10月 「赤旗」が「腎臓売れ」などと脅迫して違法な取りたてをしている商工ローンの問題を暴露。社会問題になる。
11月 参院財政・金融委員会で日栄と商工ファンドの社長を参考人招致
同月 宮城県の自営業者ら商工ファンドにたいして初の集団提訴。その後全国で集団訴訟へ発展。
2000年4月 有印私文書偽造容疑で商工ファンド社員逮捕
6月 出資法の上限金利40.004%から29.2%に引き下げ。根保証人への追加融資の際の通知義務など貸金業規制法を改正。
9月 商工ファンドが「任意に支払った」とみなされる「みなし弁済」(貸金業規制法43条)を主張し、利息制限法による解決を拒否。
10月以降 全国で25件商工ファンドに43条適用を認めない判決相次ぐ。
2001年4月 日栄営業停止処分
2004年2月 商工ファンド最高裁判決
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日栄・商工ファンド対策全国弁護団副団長 新里宏二弁護士
私たちは出資法の上限金利の引き下げを求めてきました。そこにいたる前に、まず、利息制限法の上限金利を超えた金利を貸金業者がとる根拠となっている「みなし弁済」規定をなくす。そのきっかけになるのが今回の判決です。
そもそも「みなし弁済」は借りる側の誤解にもとづくものです。借りる側は利息制限法を超えた金利は本来無効であり、例外として、「任意」、つまり自分の自由意思で払った場合に「みなし弁済」が認められるということを知りません。貸金業界がいま使っている契約書のひな型には契約金利を払わないと全額一括返済させる条項もはいっています。今回の判決の裁判長補足意見では、その場合は任意の支払いではない、無効だとしました。
「みなし弁済」がなくなれば金利は実質的に下がり、二十数%もの高利は許されなくなります。業界は相当な抵抗をしてくるでしょう。「法律変えろ」と国会議員に要請すると思いますが、それに対抗する強い力が必要です。
「赤旗」は、被害の実態を掲載してこの問題を厳しく追及してきましたが、これからもどんどん書いてもらいたい。最高裁で勝ったのは理論の力より、これだけひどい高金利の被害がある、そんな貸金業者に「特典」を与えていいのか、と理解されたからだと思います。武富士問題でも、商工ローン問題でも国会で共産党の議員が質問したことも事態を動かしてきました。今後の追及におおいに期待しています。