2004年2月22日(日)「しんぶん赤旗」
政治資金規正法違反(虚偽記載)事件で東京地検特捜部の強制捜査を受けた政治団体、日本歯科医師連盟(日歯連)がことし六月の参院選でも自民党比例候補を推薦、日本歯科医師会(日歯)と表裏一体で“ぐるみ選挙”に取り組んで、批判の声が出ています。
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この候補は、元厚生労働省歯科保健課歯科医師臨床研修専門官の笹井啓史(ひろふみ)氏。
本紙が入手した東海地方の地区歯科医師会の「会員各位」への通達文書によると、県庁所在地のホテルで開かれた「笹井ひろふみ氏を励ます会」(昨年十月)に「本会として100名以上の出席を依頼されて」いるとして、会員、家族、従業員らの参加を要請していました。
愛知県歯科医師会の「愛歯月報」(〇四年一月号)によると、昨年十二月五日の地区歯科医師会長会で、県歯連盟側が十一月の総選挙の「お礼」と次の参院選への取り組みを説明。「笹井先生の名簿の依頼が十名分きているが、もうこれ以上の依頼はないのか」との質問に、「これ以上の依頼はない予定なので確実な名簿を出してください」と回答しています。日歯の会員は約六万五千人。全員が十人ずつ名簿を出せばざっと六十五万人分にもなる計算です。
笹井氏は、昨年八月に中央後援会事務所開きをおこないましたが、そこには青木幹雄自民党参院幹事長も出席。「(前回参院選で日歯連が推薦した中原爽議員は)十万票で当選できた。しかし、来年の選挙は前回のようなわけにはいかない。みなさんの力で最低でも三十万票を獲得しないと参議院の中で歯科界の代表が一人欠けてしまうことになりかねない」などとあいさつしています(業界紙「歯界報知」)。
しかし、自民党が医療制度改悪案をすすめていること自体に強い批判があり、日歯連の会合でも「多くの連盟会員の退会など、いまの状況ではとても参院選などできない」といった声が出ています。
日歯と日歯連の一体ぶりについては、「思想・信条の自由を踏みにじる」として、全国五つの地裁で明確な判断が示されており、今回の政治資金規正法違反事件もあって批判の声がさらに強まっています。
歯科医師会福岡訴訟の石川暢彦原告団長(歯科医師)の話 日歯会は「日歯会と日歯連盟は車の両輪で切り離せないもの」と断言してきました。それは公益法人がしてはならない、法律違反だと峻別(しゅんべつ)を求めて裁判に立ち上がりました。各地の裁判は勝利しましたが、峻別は始まったばかり。自民党の歯科職域支部だとして自民党支持の選挙運動を押し付けられている状態はまだ無くなっていません。自民党は医療制度改悪を進め、会員はみんなおかしいと感じています。思想信条の自由を無視するこのような連盟の選挙活動は、人権侵害だと私は思っています。