2004年2月18日(水)「しんぶん赤旗」
日本共産党の吉井英勝衆院議員が十七日の衆院予算委員会で取り上げた北海道警の裏金疑惑。警察全体に巣くう腐敗体質の一端が揺るがぬ証拠であきらかになりました。問題の発端からふりかえってみました。
今回の北海道警の裏金づくり、報償費不正流用疑惑は、内部告発文書をもとに、昨年十一月下旬にテレビ放映され、十二月初めに、日本共産党道議団が議会できびしく追及。一向に疑惑を解明しようとしない道警や知事に道民の怒りが高まっています。
吉井議員が示した問題の内部告発文書は、旭川中央署の捜査報償費の「現金出納簿」や「報償費証拠書」など。これらには、報償費支出伺や領収書、支払精算書などがつづってあります。領収書などを除いて、いずれも署長と副署長の印が押してあります。
捜査報償費とは、捜査活動のための諸経費と警察への情報提供者、協力者にたいする謝礼です。
報償費の支出手続きは、警察署長が毎月初め、一カ月分の所要(概算)額を方面本部長に要求、金は副署長の口座に振り込まれ、署長は副署長に請求して受領する仕組みです。捜査員に渡すさいは署長が決裁し、副署長が現金を渡します。
ところが、添付された領収書を、住民監査請求を受けた北海道監査委員が調査したところ、所在がわかった協力者十二人のうち十一人が回答。十人が「受け取っていない」と明言。残る一人も「受け取っていない」と「記憶にない」の複数回答でした。領収書が偽造されたニセものだったことが判明。所在不明者のうち三人が支払い時の二年から六年前に亡くなっていました。
つまり、支払いは架空。書類を偽造してまで裏金をつくったのです。こんなからくりが警察内部の文書で明るみに出たのですから大変な事態です。
裏金づくりは、旭川中央署だけでなく、道警本部や道内各警察署でも行われていたことが、マスコミの取材にたいする現職幹部や元幹部の証言で次つぎに明らかになりました。なかには、裏金で内閣法制局の役人や道議会議員を接待したという証言も。
なかでも衝撃的だったのが、元北海道警釧路方面本部長で旭川中央署長も務めた原田宏二・元警視長の証言です。
十日会見した原田氏は、裏金がどのようにしてつくられ、何に使われたかなどを詳細に記した文書も配布しました。
それによると、国費の旅費、捜査費、道費の報償費、旅費などを組織的に裏金としてプールし、署長の交際費、せんべつ、部内懇親会、冠婚葬祭、タクシーチケットなどに使い、道警本部では上級官庁や他官庁の接待費や議会対策にも使っていたといいます。
原田氏自身も、正規の交際費をもらったことはなく、旭川中央署署長のときは毎月五万円前後、本部長や部長のときは、毎月七―八万円の交際費を裏金から受けとっていたとのべています。
証言した理由について、原田氏はこう書いています。
「このままでは、どんどん道警の信頼が失われていくなかで、現場の警察官やその家族の人はさぞ肩身の狭いおもいをしているのではないでしょうか。一日も早く現場の警察官が誇りを持って仕事ができるようになってもらいたいとおもうのです。そして、今回が道警が更生できる最後のチャンスだとおもいます」
北海道警による裏金疑惑。その疑惑の解明を進めるどころか、道警と一体となって疑惑隠しを指示してきたのが全国の警察を統括する警察庁でした。
十二日の衆院予算委員会に参考人として出席した警察庁の吉村博人官房長は、「(北海道の)監査委員による捜査員に対する聞き取りにつきましては…警察活動に広い意味で支障をきたす」とし、「北海道警に指示をして、監査委員にご理解をいただくように説明をおこなってきた」と答弁。警察庁が道警にたいし、道の監査委員による聞き取り調査に“応じるな”と指示してきたことを明らかにしています。
道警は、道議会で事実の解明に徹底的に“逃げ”の姿勢を続けてきました。昨年十二月、日本共産党道議団が報償費疑惑について徹底追及しました。
党道議団の徹底した追及に対して芦刈道警本部長は、「(内部文書は)出所が不明」「当時の内部監査で報償費が適正に執行されているのは明らかで、改めて調査はしない」「不正経理の事実はない」と繰り返し、調査を拒否。疑惑解明に背を向け続けました。
道議会の自民、公明はまったく質問せず、民主党も道民の強い批判に押され最終盤ようやく質問した程度です。
調査対象者(旭川中央署から謝礼が支払われたとされる人) 12
回答数 11
▽事実である 0
▽一部異なっている 0
▽受領した覚えはある 0
▽受領していない 11
▽記憶にない 1
(複数回答1名)
●情報提供した覚えもなく、謝礼など受けていない。偽造文書で、まったく事実無根。道警は出所不明の文書といっているが、警察署長の押印されたものをだれが作製できるというのか。この態度にも怒りがつのる。
●関係書類の署名の文字は自分の筆跡ではない。印鑑も自分の所持しているものではない。
●私には全く知らないことで、今まで報償費の存在すら知らず、本人の知らない所でこのような行為があったことは驚くばかりだ。