2004年2月17日(火)「しんぶん赤旗」
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新生銀行株の上場を三日後にひかえた十六日、日本共産党の塩川鉄也議員は衆院予算委員会で、数々の問題点を取り上げました。
新生銀の前身は、乱脈経営で一九九八年に破たんし、一時国有化された旧日本長期信用銀行(長銀)です。同行に投入された公的資金は、債務超過の穴埋めなど、これまでに何と約八兆円にのぼります。まさに国民の税金で破たん処理が進められたのです。
旧長銀は二〇〇〇年二月、世界中で企業買収などを進める米系投資組合リップルウッドが中核となったニュー・LTCB・パートナーズ(NLP)に千二百億円余りで譲渡されました。
八兆円の公的資金はどこに消えたのか――。公的資金のうち国民負担になる金額について、竹中平蔵金融・経済財政担当相はすでに「金銭贈与」として投入した三兆二千二百四億円が国民負担になったと答弁しました。
しかし、塩川氏はこれ以外にも、国が取得した旧長銀保有の他社株の含み損などを含めると、四兆円を超える公的資金の損失が見込まれていることを指摘。竹中金融相は「国民負担が発生するかどうかは、現時点で確定していない」と述べながらも、損失の可能性を否定できませんでした。
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公的資金で「不良債権」を処理し、外資の支配下に置かれた新生銀がやったことは、国民や中小企業を支える銀行本来の役割とはかけ離れたものでした。
新生銀は、価値が目減りした債権の買い取りを政府に要求する権利を定めた「瑕疵(かし)担保特約」などを利用し、強引に不良債権処理を進めました。その結果、“貸し渋り”“貸しはがし”が横行し、貸出金も激減しました。
二〇〇〇年三月と〇三年三月を比べると、総貸出金は七兆七千三十八億円から三兆六千百二十七億円に激減。そのうち中小企業等(個人を含む)への貸し出しも二兆七千七百三十八億円から一兆八千四十一億円になっています。
売却に際して国(預金保険機構)とリップルが締結した契約書には「(少なくとも三年間)特段の事情がない限り、貸出関連資産を売却せず、急激な回収を行わず、且つ借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずることとする」と記載されています。新生銀のやり方はこれにさえ反するものです。
十九日に上場される新生銀株の売り出し価格は五百二十五円。今回売り出されるのはリップルが保有する十三億株余の普通株式の三分の一ですが、売却益は約二千二百億円になります。残りの三分の二を含めれば、合計で約七千億円になり、四年で投資額(千二百億円余)の六倍の利益が転がり込むことに。リップルは笑いが止まらないでしょう。
さらに重大なのは、日本国民の税金を投入して「再生」させたのに、リップルの上場益に対して日本の課税権がまったく及ばないことです。
リップルが旧長銀買収にあたって設立した投資組合NLPはオランダ籍です。なぜオランダ籍かというと、オランダ法人が日本法人から「分配金」を受け取る際、日本に課税権がなくなるという租税条約などの“抜け穴”があったため、課税が回避できるからです。
そのため、今国会に提出予定の改定日米租税条約では、公的資金が導入された銀行の株を外国資本が取得し、その株を売却した所得に対して日本が課税できるよう改正されることになっています。ところが、「条約発行前に取得した場合…には、適用しない」(第十三条3b)と規定し、リップルには課税しないようになっています。
塩川氏は、仮に新生銀株の上場益に課税できるなら千四百億円が国庫に入ることになると指摘し、「国民の税金を元手にもうけた利益に対し、日本が課税できるのは当然だ。なぜ、もっと前から課税できるよう手を打たなかったのか」と批判しました。谷垣禎一財務相は「(条約を改定するのは)国民の健全な批判があったからだ」と問題点を認めつつも、リップルに課税できるよう特別条項を見直す考えはないと述べました。