日本共産党

2004年2月15日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

市町村合併

押付け強まり矛盾広がる

合併協から離脱相次ぐ


 国からの市町村合併押しつけで合併協議がすすめられるなか、合併後の実態が具体的になるほど、矛盾が噴き出す例が広がっています。合併「先進」地域といわれていた佐賀、熊本の両県に合併協からの離脱が相次いでいる実態をみてみました。



佐  賀

役場どこに、切捨てごめん

重要問題で対立表面化

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市町村合併問題で町民に全戸配布している「合併反対・太良町を残す町民協議会」のニュース

 「昨年明けに存在した八つの枠組みで、元の姿が残るのは小城郡と伊万里西松浦だけ」―佐賀新聞の合併問題特集の書き出しです。

 二〇〇三年初め、八つの合併協議会に93%の市町村が参加していた佐賀県では、合併協議会の解散、離脱などが相次いでいます。

 杵島郡東部合併協議会は、市役所の位置を一本化できず解散。都市計画の線引きをめぐる対立から佐賀市郡合併協議会は、〇三年末に解散、鳥栖市も同じ問題で佐賀東部の枠組みを離脱しました。

 唐津・東松浦郡からは玄海町が昨年離脱、続いて呼子町も議会が合併反対を決めています。激変ともいえるこのような変化には二つの要因が考えられます。

 一つは、「市役所の位置をどこに置くか」「住民負担やサービスをどうするか」―町や住民にとって重要な問題での意見の対立が表面化してきたことです。その背景には「役場がなくなって、遠方の市役所まで行くのは大変だ」「公共料金の値上げ、住民サービスの切り捨てはごめん」という住民の声があります。

 もう一つは、昨年四月の知事選で井本勇前知事が引退し、市町村に対する「押さえ」が効かなくなったという点です。

 合併によって地域が崩壊してしまうのではないかと心配する保守系の人たちが多くなっています。保守系町議がよびかけた研修会に、日本共産党から講師に招いたり、党町議に相談をもちかける。ホームページをみた人や、メールで問い合わせをする人などが増えています。農協や商工会など地域のリーダーの中にも真剣に考える人たちが広がっているのを感じます。

 一部の町村では保守派の議員や住民と連携した合併反対運動が広がっています。その一つの典型が太良町です。「合併反対・太良町を残す町民協議会」を組織し、月一回集まって、合併やまちづくり問題の学習を進め、これまでに九回のビラを全町配布しています。

 同町は五月に合併の賛否を問う住民投票を実施する予定ですが、同協議会は、この住民投票で必ず勝利しようと宣伝を強め、運動の輪をひろげています。

 (川上賢二・合併反対太良町を残す町民協議会代表)



熊  本

“自治体の魂売れない”

保守層巻込み

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合併反対を訴える日本共産党の中山清隆益城町議=2003年7月

 住民と党議員が連携 熊本県は二〇〇〇年に、県下九十四市町村を十九自治体に編成しなおす、市町村合併推進要項を策定し、地方振興局ごとに作業を進めてきました。

 〇三年には、中球磨地域の五町が合併して「あさぎり町」となりました。天草二市十三町もひとまとめにする、八代郡市もひとくくりにする構想で合併協議会が発足するなど、一時期には「平成合併のトップランナー」と評されていました。

 住民の中から「町の将来をこのようなやり方で決めていいのか」と疑問の声が広がり党議員、住民の運動で合併協からの離脱や協議会が開けない事態になるなど混迷を深めています。

 天草の苓北町では、まず日本共産党支部と塚田達議員が立ち上がりました。「苓北町は地方交付税の不交付団体(火電の資産税収が大きい)。あわてて合併する理由はない。町独自の財政運営が担保されなければ、福祉・農・水産業に影響する」と民報「新れいほく」で詳細を伝えました。

 部落ごとの説明会でも、党の見解を知らせました。町民の世論とともに町議会は、合併協からの離脱を可決し、独自の町づくりに取り組むこととなりました。上天草四町も離脱しました。

 本渡市隣接の四町でも、有明町の福永芳成党町議と党本渡市議団の奮闘で、合併協からの離脱を可決しました。五日には、安田公寛市長も「現状を打開するには協議会を解散するしかない」と意向を表明。これにたいし、潮谷義子知事は「次へのステップとすることが必要」として「県としても、必要な役割を果たすとともに、場合によってはイニシアチブを発揮したい」(「熊本日日」六日付)と見解を述べました。

 「政令市をめざす」とした熊本市は、周辺六町の党支部と議員のがんばりで、いずれも合併反対を決議し、熊本市は四面楚歌(そか)の状態です。

 県は財政担当者会議で地方交付税は(臨時財政対策債を含む)前年度比12ポイント減になり、予算編成にあたって(1)住民負担と行政サービスのあり方を見直す(2)財政構造の見直し―と町村合併の重要性について檄(げき)を飛ばしました。

 しかし、有明町で、町始まって以来といわれる四百五十人が集まった町民討論集会での、久保進一郎町長の「アメとムチの強制合併に、地方自治体の魂は売れない」との言葉には重いものがあります。

 (党熊本県地方議員相談室長・沢田一郎)


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