2004年2月14日(土)「しんぶん赤旗」
労働組合への「変質」策動は、一方で労働組合運動を職場から前進させる新たな条件をつくりだす矛盾を内包しています。
正規雇用労働者についていえば、総額人件費削減と一体の成果主義のもとで、「がんばれば報われる」のは一握りの労働者だけで、大多数の労働者はいくらがんばっても賃下げか、よくて据え置きです。しかも成果を評価された一握りの労働者も、来期はどう評価されるかわかりません。そのため、職場には長時間過密労働がまん延することになります。
そのうえ、職場には臨時、パート、派遣、請負などさまざまな非正規不安定雇用労働者が入り込み、同じ仕事をするようになってきています。増大する非正規労働者の存在が、発展途上国の労働者の存在とともに、賃金と労働条件、権利行使の重しとされています。
そのため、広範な労働者は低賃金と長時間過密労働、絶えざる不安にさらされています。
「パイの理論」では、わずかの「分け前」とはいえ正規雇用労働者の不満を抑えつける物質的基盤がありましたが、それも破たんしたいま、少なくない組織労働者が、不安定雇用の未組織労働者に目をむけないかぎり、みずからの労働条件の改善はありえないことを自覚しつつあります。
非正規雇用労働者についていえば、以前は鉄鋼の構内下請けのように、仕事も違えば、作業服・安全帽も違っており、正規・非正規の区別は一目でつくのが普通でした。
いま、電機や自動車などの職場では、正規・非正規の区別がまったくつかないところがふえています。
また、流通業の「パート店長」などにみられるように責任を負わされる非正規労働者もふえています。にもかかわらず賃金は大幅に低く抑えられ、有給休暇などの権利行使もままならず、いつ首を切られるかわからない状態におかれています。同じ仕事をしながら処遇に差があるとき、労働者の不満と怒りが蓄積されます。
これらのことは、正規、非正規を問わず、職場を土台に広範な労働者のたたかうエネルギーが蓄積してきていることを示しています。
全労連と国民春闘共闘委員会の〇四国民春闘に、労働組合の傾向の違いを問わず、組織されているか否かを問わず、期待が高まっています。
それは、多くの労働組合が、財界のリストラ攻撃や賃下げ攻撃に正面から対決しないか、むしろ協力さえしているもとで、また、イラク派兵、憲法改悪など政治反動とのたたかいに目をふさいでいるもとで、階級的ナショナルセンターとして労働者・国民の利益を守る政治的経済的課題のたたかいの先頭にたっているからです。
第一に、「賃金破壊を許さず、すべての労働者に賃上げを」求めるたたかいでは、全労連は、〇四国民春闘を「非正規労働者と青年に光をあてる春闘」と位置づけ、不安定雇用の未組織労働者に目をむけ、パートの時間給の引き上げ、法定最低賃金の引き上げと企業内最賃協定の締結などの賃金底上げ要求をかかげてたたかっています。
財界・大企業が多様な不安定雇用労働者を増大させ、その劣悪な労働条件を労働者全体の賃金・労働条件引き下げの重しとする戦略を強化しているのに対し、賃金底上げ要求は、もっとも広範な労働者を団結させる要となるからです。
同時に、未組織労働者にとっても、自らの要求の正当性を自覚し、労働組合の存在意義をあらためて確認し、労働組合に結集する契機となるものです。
また、全労連がかかげる「だれでも一万円以上」の要求は、大企業が、いかに利益を上げようが、内部留保を増やそうが賃上げはしない、賃下げすると宣言し、定期昇給廃止・成果主義賃金導入をはかっていることに、正面から対決するものとして重要です。
これは、総額人件費削減の大枠のなかで賃金格差を拡大し労働者を個別に分断しようとする財界戦略に対し、格差を縮小させながら賃金底上げもはかり、巨額の内部留保と利潤を賃金全体を引き上げる原資にせよとせまる要求だからです。
成果主義とのたたかいでは、勤続・年齢要素を縮小・排除する賃金制度の改悪に反対し、これらの改悪が大幅な賃下げになることを事実に即して具体的に明らかにしてたたかうとしています。(つづく)(日本共産党国民運動委員会理論政策チーム)