2004年2月13日(金)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】ブッシュ米大統領が州兵をしていた一九七〇年代初め、無許可で部隊を離れたとの疑惑が持ち上がっています。ホワイトハウスは十日、疑いを晴らすため州兵時代の記録文書を公表しましたが、野党・民主党などは不十分だと批判を強めています。米大統領は米軍の最高司令官であり、軍歴疑惑は大統領としての適格性にかかわる問題。大統領選の争点となりつつあります。
この軍歴疑惑は、七二年に、ブッシュ氏が当時所属していたテキサス州空軍からアラバマ州の部隊に移った時期に、実際には勤務実績がなかったという問題です。
ブッシュ氏は、ベトナム侵略戦争時の六八年にテキサス州空軍に入隊、七三年に名誉除隊となっています。アラバマ州で実際に兵役に就いていなかったことが指摘されると、「無許可離隊者(AWOL)」(マコーリフ民主党全国委員長)、「脱走兵」(映画監督のマイケル・ムーア氏)などの非難が起こりました。
ブッシュ氏は八日放映のNBCテレビの番組で「(兵役)義務は果たした」と反論。ホワイトハウスは十日、テキサス州空軍の「退役証明書」とアラバマ州部隊時の六日分の給与支払い記録を提示しました。
しかしマコーリフ氏は、これでは「ブッシュがアラバマ州で義務を果たした証拠になっていない」と指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は十二日付の社説で、「給与支払い記録は七二年に半年以上も義務に就いていなかったことを示している」とし、大統領は説明すべきだと主張しています。
ブッシュ氏に対しては、七一―七三年に国連大使を務めるなど共和党の有力政治家の実父ブッシュ元大統領の力を借り、ベトナム侵略戦争への兵役逃れのため優先的にテキサス州空軍に入隊したとの疑惑が、繰り返し指摘されています。
民主党の大統領選の最有力候補で、ブッシュ氏とほぼ同世代のケリー上院議員は、ベトナム戦争に志願した経歴が売り物。イラク戦争・占領作戦で米兵の犠牲者が増大していることを背景に、十一月の選挙に向け、軍歴問題が再び脚光を浴びつつあります。
対イラク先制攻撃戦争を扇動してきたブッシュ政権のタカ派首脳に兵役忌避者が多いことは、有名な話。チェイニー副大統領は、さまざまな口実を設け、徴兵猶予を繰り返しました。ラムズフェルド国防長官は、同世代が朝鮮戦争に狩り出された時期には兵役を逃れ、同戦争休戦後の五四年に海軍入りしました。
軍人出身のパウエル国務長官は九五年刊の自伝『マイ・アメリカン・ジャーニー』で、レーガン、ブッシュ父政権時に対外強硬路線を主張した「鼻っ柱の強い人々」のほとんどがベトナム戦争中に兵役を免れたと指摘。「それは階級意識と結び付いており、非民主的で公正を欠く」と批判しています。