2004年2月12日(木)「しんぶん赤旗」
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BSE(牛海綿状脳症)、鳥インフルエンザなど、食の安全と農家、業者の営業を脅かす深刻な事件が相次いでいます。日本共産党国会議員団は、いち早く対策委員会をつくり、実態調査や政府への申し入れ、国会質問と奮闘し、養鶏農家への損失助成などの成果をあげています。
「商社が市場調整している。BSE発覚直後から値上げしたやり方は、火事場泥棒みたいだ」
一月末、牛タンが名物の仙台市を調査した日本共産党の高橋ちづ子衆院議員に、牛タン専門店の社長が訴えました。牛タンは大半が米国産。十二月末の輸入禁止の影響で一キロ八百五十円程度の価格が急騰し、二千円に迫りました。
一月十二日、山口県下で確認された鳥インフルエンザ。議員団は翌々日に現地に入り、感染農場の三十キロ圏内で実施されている鶏卵の移動・搬出禁止などによる深刻な農家の実態や要望をつぶさにつかみました。
党議員団は一月二十三日、調査をもとに農水省に申し入れました。
BSEでは、米国産牛肉に全頭検査を求めることや、輸入中止で打撃を受けた流通・外食業者に対する支援策を要求。鳥インフルエンザでは、三十キロ圏内の病死鶏に対する検査や、風評被害にあった養鶏農家への経営支援策などを求めました。
農水省は三日、卵の出荷を制限された周辺の農家に損失額の半額を助成すると発表しました。周辺農家への助成は、初めて。議員団の申し入れがさっそく実りました。
便乗値上げ問題では、一月二十七日の衆院農水委員会で高橋議員が商社など卸元への指導を求めたのにたいし、亀井善之農水相は「便乗値上げが起こらないよう措置する」と答えました。
農水省は、米国のBSE発生を早くから知りながら対策を怠ってきた―議員団の追及で政府の責任がはっきりしました。
EU(欧州共同体)が米国でBSE発生の恐れがあるとして、一九九九年以来、脳などの危険部位を除去しない牛肉の輸入を禁止したのに、日本は輸入を続けてきました。
それだけではありません。日本政府は、米国の会計検査院や農務省の報告書で危険性が指摘されていたのに、それを知りながら隠し、BSE発生の危険性を検討する農水省の技術検討会にも報告しませんでした。
紙智子議員は一月二十八日の参院農水委で「情報を知っていたのに握りつぶしていたと言われても仕方がない」と追及。亀井農水相は「それぞれの対応が完全にできておらなかったところ(も)あろうかと思います」と、事実上、責任を認める答弁をおこないました。
BSE問題で緊急の課題は、全頭検査など安全性と透明性の確保です。
日本では感染牛の発見を目的に全頭検査を実施していますが、米国は歩行困難など危険性の高い牛を中心にごくわずかなサンプル数(百万頭に一頭程度)しか検査しません。牛の生産履歴を追跡できる制度(トレーサビリティー)も導入しておらず、生産・流通過程も不透明です。
議員団は「全頭検査や危険部位の除去などクリアできないものは輸入できないとの態度を貫くべきだ」(一月二十八日の参院農水委、紙議員)と迫り、亀井農水相が「米農務長官に強く伝える」と答えています。
BSE問題の根本には米国の圧力に屈して輸入拡大を続けてきた政府の姿勢があります。一九九一年の「完全自由化」以来、米国産牛の輸入は増えつづけ、二〇〇二年には約三十三万三千三百トンと、国内流通量の約三割を占めています。
牛肉だけではありません。コメ輸入「自由化」受け入れなど食料自給率は40%(二〇〇二年度)にまで落ち込みました。
議員団は「農業を国の基幹産業と位置付け、家族経営を支える価格・所得保障を充実させるべきだ」(西山とき子議員、一月二十三日の参院本会議)として、自給率向上に向けた営農支援や、主要食料を守るためにWTO(世界貿易機関)協定の改定を求めています。(小山田春樹記者)