日本共産党

2004年2月8日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

年金
自公が敷いた負担増レール

“100年安心”どころか…


 自民、公明両党は、二〇〇四年度の年金制度「改革」について、昨年末から積み残しになっていた国民年金保険料の問題などを含めて最終合意しました。法案は、十日に閣議決定されます。将来にわたる負担増、給付減のレールを敷いたもので、「百年安心の年金」(公明)をいう与党の態度は、国民をあざむくものです。


表
保険料

13年続けて増

国民年金1万6900円に

 国民年金保険料は加入者はみな同じで、現在、月額一万三千三百円ですが、これを二〇〇五年四月から毎年、月額二百八十円ずつ引き上げようとしています。〇六年四月には現行より五百六十円高い一万三千八百六十円になります。こうした値上げが十三年間も続き、一七年度に上限の月額一万六千九百円で固定されます。

 当初の厚生労働省案の月額六百円程度の引き上げ幅を圧縮して、所得の低い人に配慮したかのように言いますが、現行の保険料でも払えない人が多いのが実態です。

 国民年金保険料の未納率は、〇二年度で37%にものぼり、「年金の空洞化」ともいうべき深刻な事態となっています。未納の主な理由は、「保険料が高く、経済的に払うのが困難」が64・5%を占めています(社会保険庁の調査)。

 月額二百八十円の値上げは年間で三千三百六十円の負担増。一七年度からは、現行より年間四万三千二百円多い二十万二千八百円もの保険料を払わなければなりません。低所得者への「配慮」などといえるものではありません。

図

 国民年金だけの加入者(第一号被保険者)は、〇三年三月末で二千二百三十七万人います。三割近くを占める自営業者への保険料の負担増は、不況による営業悪化に追い打ちをかけるものです。また、失業・倒産などで厚生年金から国民年金に移動するケースが激増し、失業者を含めた無職の人が35%を占めている(〇二年三月)なか、保険料の連続値上げは未納問題をいっそう深刻にします。

厚生年金

 厚生年金の保険料は、今年十月から段階的に引き上げ、一七年度以降、年収の18・30%(労使で半分ずつ負担)にします。現行の13・58%に比べ、35%の大幅負担増となります。

 年収四百五十万円のサラリーマンの場合、保険料は年間三十万五千五百円から四十一万一千七百五十円となり、十万六千二百五十円の負担増です。年収の内訳を月額三十万円、ボーナス九十万円とすると、引き上げ後の保険料は月給の一・三倍。保険料だけのために一カ月以上働いていることになります。


図
給 付

自動引き下げ

経済悪化口実にスライド

 支払う保険料は毎年上がり続けるようにし、受け取る給付は、新たな抑制策を導入しました。

 抑制の根拠となるのは、「公的年金全体の被保険者の減少」と、年金受給者の「平均的な受給期間の伸び」です。

 少子化が進んで働く人が減ったり、労働者全体が受け取る賃金の総額が下がることを予想し、その変動を「被保険者の減少」として給付水準の低下につなげる仕組みです。「受給期間の伸び」による抑制とは、平均寿命が伸びると給付期間が増えるので、その分給付率を引き下げようという仕組みです。

 この二つの仕組みの導入によって給付水準を引き下げ、保険料収入の範囲におさまるようにします。

写真
国民年金には多くの業者が加入しています

 こうした結果、厚生年金では、「モデル世帯」(夫は四十年サラリーマンで妻は専業主婦)の場合、給付水準は、現役のときの平均所得の59・4%(現行)から、50・2%(二〇二二年度以降)まで下がります。

 50・2%まで下がった場合、現行の給付水準からの削減額は夫婦で月四万五千円程度になります。与党は50%を確保と言っていますが、対象となるモデル世帯は受給者の一部。共働きの夫妻や男子単身の会社員は、現行でも50%を割り込んだ給付水準で、改悪後は30%台に下がります。

 国民年金給付も同様の仕組みで抑制されます。

 政府・与党は、給付水準は下げても名目額は維持するから、受け取っている額が減ることはないと言い訳しています。しかし、物価が下落すれば、「物価スライド」が適用されて、受給中の年金額まで引き下げられます。〇三年度には、厚生年金、国民年金とも給付額を0・9%切り下げられました。現に年金を受け取っている人の額が引き下げられるのは、戦後初めてでした。さらに政府は、〇四年度も0・3%切り下げを決定し、〇五年度も物価下落分の切り下げを計画しています。


離婚時は分割受給

図

 主な家計収入をサラリーマンの夫に頼る妻(第三号被保険者、夫の場合もある)が、離婚した場合に、配偶者の同意または裁判所の決定によって、夫の厚生年金(報酬比例部分)を分割して受給できる制度が新たに盛り込まれました。

 現行は、離婚すると妻は国民年金のみの加入となり、同居期間中に夫の賃金分に比例して給付される厚生年金を受け取ることはできなくなります。モデル世帯で見ると、結婚以来専業主婦だった人が受け取る国民年金は満額で六万七千円です。夫はこれに厚生年金の十万二千円を加えた十六万九千円を受け取れます。離婚がなければ、夫婦世帯分として二十三万六千円が給付される仕組みです。

 分割制度の導入で、夫も妻も十一万八千円を受け取ることになります。

 分割割合は二分の一を上限とし、法律の施行日以降に成立した離婚を対象としています。実際に分割するかどうかや、分割割合をどうするかは当事者間で協議することになります。

パート加入の拡大

5年後検討

 厚生年金へのパート労働者の加入拡大問題は、今回の実施を見送り、五年後をめどに検討を加えることにしました。

 パート労働者は、サラリーマンの妻の場合、現行では国民年金に加入していることになります(第三号被保険者、保険料負担はなし)。労働時間が正社員の「四分の三(週四十時間労働なら三十時間)以上」になると厚生年金に加入することになります。

 厚労省は保険料の収入増をはかるため、厚生年金の適用を広げていくことを検討。昨年十一月に労働時間が「週二十時間以上」のパートに適用していく拡大案を打ち出しました。最大四百万人の新規加入者を見込んでいました。

 将来の年金給付増につながりますが、当面必要な賃金の引き下げとなるためパート労働者からは疑問や反対の声が続出。外食産業を中心に経済界の強い反対もあり、今回の実施は見送りとなりました。

 いま日本のパート労働者は、不安定な雇用条件、正社員の半分程度という賃金格差を押しつけられています。この劣悪な労働条件の改善なしに、厚生年金加入を拡大すれば、安い賃金にたいする新たな保険料負担だけが先行することになります。さらに保険料負担をのがれたい企業によって、二十時間未満で働かせるパートを増やすことになり、労働条件の悪化につながる問題もあります。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp