2004年2月3日(火)「しんぶん赤旗」
総務省が一月三十日に発表した労働力調査で、昨年十二月の完全失業率(季節調整値)が5%台を切りました。竹中平蔵金融・経済財政担当相は「期待した姿になってきた」と手放しの喜びよう。自民党の安倍晋三幹事長にいたっては「改革の成果」といい、小泉「構造改革」が功を奏したと我田引水するしまつです。ほんとうに雇用情勢は「改善」の道に立ったのでしょうか。(篠田隆記者)
政府・与党は十二月の完全失業率が4・9%と、5%の大台を割ったことに大喜びしています。しかし、これは小泉「構造改革」で一気に5%の大台にのり、上昇した同失業率が、0・1ポイント下がったというだけの話です。
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今から五十年前の一九五三年から現在の同統計が始まりましたが、その長い歴史をみても4・9%は異常です。バブルが崩壊し、長期不況が始まった九一年の失業率は2・1%、九二年は2・2%でした。4・9%はその二倍以上の水準です。
完全失業率が「見た目」には低下したようにみえるのには訳があります。完全失業者の三人に一人以上が一年以上失業しているなど、あまりに厳しい就職難から求職活動を一時的にあきらめ、非労働力人口(求職活動をしていない人の数)に入る人が急増しているのです。求職活動をしている人だけを失業者とみる統計だけでは、判断を誤ることになる雇用情勢です。
自民党の安倍幹事長は三十日の記者会見で「失業率が低下し始めたのは、改革の成果によって新しい雇用が生まれたととらえている」といいました。
また、竹中担当相も同日、「昨年後半から経済がしっかりして、それに労働需要が反応した」と語っています。政府・自民党幹部は昨年後半から「雇用が生まれ」たとみているようです。
政府統計でみると、増えたのはパートなど低賃金・不安定な雇用の分野です。厚生労働省が同じ三十日に発表した有効求人倍率(公共職業安定所の窓口での求人と求職者の比率)をみると、パートは昨年八月の一・四二倍から十二月の一・六九倍へ急速に上昇しています。パートを除くと〇・五〇倍から〇・六二倍へと上昇はわずかです。
労働力調査でも、常用雇用はこの六年間減り続け、増加したのは臨時・日雇労働者です。
安倍幹事長など政府・自民党は、こういう雇用の状況を「改革の成果」といっているのです。
雇用悪化の原因は、大企業を中心にしたリストラ・人減らしと長期不況です。不況は政府の経済政策のゆがみと失敗が原因です。それに加えて小泉内閣は、大企業のリストラ・人減らしを支援・促進さえしてきました。
そのため大企業は、新規採用を抑制して若年失業者を増やし、社員には長時間・過密労働を強いて過労死する労働者まで生んでいます。労働力調査で従業員の週間就業時間をみると、週四十九時間以上働いている人が増加しています。週五日制とすると一日十時間近い労働です。
竹中担当相など政府・自民党がいう「期待した姿」とは、こういう雇用・労働の姿です。
竹中平蔵金融・経済財政担当相=「昨年後半から経済がしっかりして、それに労働需要が反応した。(政府が)期待した姿になってきた」
安倍晋三自民党幹事長=「『改革の痛み』とは失業率のことだと思うが、その失業率が低下し始めたのは、改革の成果によって新しい雇用が生まれたととらえている」