2004年2月2日(月)「しんぶん赤旗」
インターネットのオークションで落札し、入金したが品物が届かない−−。こんな被害に遭っているとの訴えがありました。調べると、一つの会社にクレームが殺到していました。(井上歩記者)
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東京都内で設計事務所を経営する男性(47)は昨年七月末、インターネットのオークションで市価より一、二万円安いパソコンを落札しました。約九万円。設計の仕事に使おうと思っていました。
出品者の「日本ザクツウ有限会社」が落札後すぐにメールを送ってきました。「五日で完成、翌日発送。入金確認の翌日から(パソコン)組み上げ作業開始…」。男性は代金を指定口座に入金しましたが、五日どころか二週間たってもパソコンは届きません。
一カ月後、「これはだめだ」と契約の解除と返金を求めました。返答は「二週間後に連絡する」。その後、内容証明郵便も送りましたが、男性が振り込んだ約十万円は一日現在も返金されていません。「調べたらほかにも同じような人がいた」と男性はいいます。
昨年十二月、「ザクツウ」社にパソコンのメモリーを注文した新宿区の男性(27)が、同社ホームページが閉鎖されたのを不審に思い、同社に注文した人を募ると、三百通を超えるメールが寄せられました。
さらに調べるとオークションの出品者評価欄で、約二百人が「ザクツウに注文したが届かない」などと訴えており、オークション主催会社も同社口座を「トラブルの多い口座」に指定していました。男性は「注文者の会」をつくり、日本共産党の近藤なつ子新宿区議に相談、その後、小池晃参院議員事務所も相談にのります。
同会のよびかけで一月十六日、約六十人が同社に納品などを求める内容証明郵便を送付しました。
「ザクツウ」社は二〇〇二年九月に商業登記した会社。同社代表取締役は本紙の取材に対し、七月から納品できないトラブルが起きたことを認め、「迷惑かけたのは申し訳ない。納品はできないが返金と対応は最後までやる。倒産などは絶対ない」などと話しました。しかし、トラブル後も再び大量の出品をしていたことについては、「答えられない」としました。
注文者の会の代理人、笹山尚人弁護士によると、内容証明郵便の送付後、四人がザクツウ社から返金を受けました。
冒頭の設計事務所経営の男性は二十七日、ザクツウ社から「返金する」とのメールを受け取りました。
男性はいいます。「ネットでの買い物は便利ですが、相手の顔が見えず、出品者の評価を見て注意はしていました。それでも、ひっかかった。ネットで高額なものは買わないほうがいい。商品を届けない場合の罰則もつくってほしい」
国民生活センターに寄せられた「電子商取引で商品が届かなかった」との相談は、二〇〇〇年度三百三十五件だったのが、〇二年度七百六十二件と二倍以上に。「違うものが届いた」も、〇〇年度五十件が〇二年度百二十七件に増えました。
同センターは「インターネットの取引が急速に増えているのにもかかわらず、商品が届かないなどのトラブルについて、手当てがされていない。手軽に始められるため、事業者側のモラルが低い」と話しています。