日本共産党

2004年1月31日(土)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

春  闘

財界・大企業は大もうけなのに

賃下げ迫るなんて!?


 財界・大企業が賃金のベースダウンを公言し、これをどうはねかえすかが大きな焦点となっている二〇〇四年春闘。大企業が空前の大もうけをあげるもとで、この春闘は労働者・国民のくらしや日本経済に大きな影響をもたらします。



労働者の収入 減る一方

 「上場企業二割が最高益」−−こんなニュースが新聞紙上をにぎわせているように、大企業各社はいま空前の利益にわいています。

 日本経団連会長の奥田碩氏が会長を務めるトヨタ自動車は、二〇〇四年三月期決算で一兆六千億円もの経常利益をあげると予測されています。トヨタ、NTTなど主要な大企業二十社の連結経常利益は〇三年で、五兆三千億円。前年の二兆二千億円から三兆一千億円も増やしています。不況でも内部留保は増やし続け、二十社で三十九兆円もため込んでいます。

 こうしたなか、昨年、ソニーの大賀典雄名誉会長が退任したさい、会社が十六億円の退職慰労金をだすことが話題になりました。日産自動車も役員報酬を一人平均三億円近くにまで引き上げています。

 一方、労働者・国民の家計は厳しくなる一方です。勤労者世帯の一カ月平均実収入は、一九九七年には五十九万九千円でしたが、〇二年には五十三万八千円と、月に六万一千円も減っています。失業者やパート・アルバイトが増え、一年間ずっと勤務した給与所得者の数は、同じ五年間で五十三万九千人も減っています。

 これでは財布のひもがしまるのも道理。大企業が史上空前の利益をあげているいまこそ、賃上げで労働者・国民の消費購買力をたかめ、日本経済を回復させるチャンスです。

 ところが、日本経団連は春闘でベースダウンも労使で話し合えと主張。奥田会長は、企業がリストラをすすめているように、「家計の消費支出のあり方を見直せ」と“家計リストラ”で生活を切りつめろとすすめています(一月十四日)。「塾の費用が一番高いと聞いている。なぜ塾が必要なのか。義務教育がしっかりしていればそのような必要もないのではないか」(一月二十九日)と敵意むき出し、いいたい放題です。

グラフ

雇用・生活守るたたかいに

 財界・大企業は、今春闘で本格的に賃下げにうって出ようとしています。

 日本経団連は「国際競争力を保てるような適正な賃金水準」を主張。日本の大企業が多国籍企業としてどんどん海外へ進出していくためにも、低コスト体制をつくり、国際競争でいっそう優位に立って、世界中で大もうけをはかろうとするものです。

写真
財界・大企業の横暴を許さないと日本経団連にむかい唱和する国民春闘委員会の人たち=21日、東京・大手町

 財界の春闘対策方針の「経労委報告」は「定期昇給制度の廃止・縮小、さらにはベースダウンも労使の話し合いの対象」として、初めて賃金ダウンに踏み込んでいます。

 労働者の切実な要求を前進させる場となる春闘を、企業が経営方針を徹底するための意見交換の場、「春討」にすると公言してはばかりません。

 連合(日本労働組合総連合会)は、三年連続でベースアップ要求を見送り、各産別労働組合任せにしました。電機や自動車など大半の大企業労組はベア要求を断念し、財界の攻撃に最初からたたかいを放棄しています。

 空前の利益をあげているトヨタで、トヨタ労組が賃上げを要求しないことが示しているように、労働組合が企業の生産活動の補完物になっていく新しい労資協調の流れが出現しています。

 全労連(全国労働組合総連合)や国民春闘共闘委員会は、財界の攻撃と小泉内閣の「構造改革」と真っ向から対決。大企業の社会的責任を追及するたたかいは、労働者の雇用と生活を守り、景気の回復、日本経済の活性化をはかる国民的な大義あるものだと位置づけています。大企業の定昇廃止をはじめ賃下げ攻撃に反対し、すべての労働者の賃金底上げ、パートなどの時間給引き上げ、男女賃金格差の是正、雇用と人権を守る働くルールの確立をはかるために、大企業本社が軒を連ねる丸の内デモ、日本経団連前の抗議行動と出足早く立ちあがっています。

成果主義導入の動き加速

 財界・大企業は、日本の中心的賃金体系である定期昇給=年功賃金をやめて、成果主義賃金を導入する動きを加速させています。

 成果主義賃金は、賃金を労働時間から切り離し、安い賃金で際限なく働かせることができ、大企業にとってうまみが多い究極の搾取形態です。

 「がんばれば報われる」といいますが、主観的、恣意(しい)的な評価で労働者間の競争をあおり、多くの労働者は賃下げになり、総額人件費は大幅に削減できます。

 評論家の内橋克人氏は、会社の業績が労働者の生活を左右し、「社会全体の安定を支える岩盤は脆(もろ)く」なり、職場の「人間連帯感は希薄化」して「活力ある国内消費など望み得るはずがない」(「読売」一月十六日付)と警告しています。「不用意に採用すると新たな問題を引き起こす。特に注意すべきなのは、働き方に『短期志向』や『固定化』などの好ましくない傾向を植えつけかねない」と成果主義賃金の導入に警鐘を鳴らしたマスコミ(「日経」〇三年十二月二十八日付)もありました。

 しかし財界は「成果主義を主体にした人事制度にしないと、日本の企業の活力がでない」(北城恪太郎経済同友会代表幹事)と居直っています。

正社員切って非正規拡大

 「守りのリストラから攻めのリストラ」−。ソニー七千人、三菱重工五千人、西友千六百人など財界・大企業は大規模なリストラを引き続きすすめ、正社員を切って不安定雇用への置き換えを本格的にすすめています。

 自営業や内職者も含めた就業者は全体で六千三百十九万人です。うち正規労働者は55・2%の三千四百八十九万人で、パートやアルバイト、契約社員、派遣労働者など非正規の不安定雇用労働者は23・0%の千四百五十一万人に増えています。(総務省「労働力調査」二〇〇二年平均)

 昨年の国会で、製造業への派遣解禁と派遣期間の上限延長、医療職場への派遣を解禁。今年三月から実施されます。一連の改悪で派遣労働者が加速度的に増大します。

 しかし財界はいっそうの「規制緩和・撤廃」を強調。「多様な働き方」を推進するとして、派遣先に雇用義務を課している派遣法のさらなる見直しを要求しています。

 無権利で低賃金の非正規・不安定雇用から正規雇用への転職の道はますます狭まり、大幅な収入減を強いられています。

 こうした大企業の攻撃をはねかえし、働くルールを確立することは、春闘の大きな課題です。


「賃金の底上げ」 たたかいの焦点に

 財界・大企業が〇四春闘を労働者の賃下げの場にしようと動き出しているなか、たたかいの焦点になっているのが賃金の底上げ闘争です。

 全労連は、〇四春闘を「非正規労働者と青年に光をあてる春闘」と位置づけ、「だれでも一万円以上の賃上げ」を掲げ、財界・大企業がねらう賃下げを許さず、すべての労働者の賃金の底上げをはかるよう呼びかけています。パートなどの時間給労働者は「時給千円以上に引き上げる」ことを提案し、今春闘では「五十円以上の引き上げ」を要求し、最低賃金の改善を大きな柱にしています。

 最低賃金は、地域の中小零細企業で働く労働者の賃金やパート・アルバイトの賃金にも大きな影響をあたえ、賃金破壊への歯止めにもなります。

 全労連はまた、年金改悪阻止のたたかいを〇四春闘の最大の国民的課題に位置づけ、労資の共同を追求しながら、中小企業、商工業者、農民、女性、老人クラブなど広範な団体・個人に共同をよびかけ、四月十五日に年金ストライキを設定するなど、国民春闘をたたかうとしています。



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