2004年1月30日(金)「しんぶん赤旗」
大企業が空前のもうけをあげています。そのなかでスタートした〇四春闘で財界総本山・日本経団連は「ベースダウン」を打ち出しました。大もうけをしているのに“分け前はやらない”“賃下げする”というのはかつてないこと。大企業労組はどう立ち向かうのか。
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「労使において、現状の所得の中でいかに家計を豊かにしていくかは、真剣に議論するに値するテーマである」。日本経団連の奥田碩会長は十四日、〇四春闘交渉について議論する「労使フォーラム」で、家計のムダをなくそうという“家計リストラのすすめ”をテーマに講演しました。
日本経団連会長が、春闘で家計支出のあり方にまで口出しするのは、きわめて異例です。
家計を豊かにするもっともいい方法は、賃上げすること。だれでもわかることです。それがいやなばっかりに「家計のリストラ」などという議論をもち出した――底意はみえみえです。
大企業のもうけは、世間の不景気をよそに突出しています。〇四年三月期決算で、過去最高の連結経常利益を見込む上場企業は二割に達し(「日経」一月九日付)、大手電機各社十七社では昨年の二・七五倍のもうけを見込む好調ぶりです。
奥田氏が会長を務めるトヨタ自動車は、史上最高の利益を更新し続け、一兆六千億円。NTTは一兆四千五百億円で、現金ベースの利益は「世界一千社番付」のトップに君臨しました(『日経ビジネス』一月五日付)。
これだけの利益をあげてきた背景には、労働者の犠牲がありました。
この三年間に大企業は三十万六千人もの大量人減らしを行い、人件費総額は二兆四千億円も削減しています。職場では、少ない人員で健康を損ないながら膨大な仕事量をこなしてきました。
リストラに耐え、長時間労働で企業のために働いてきた労働者にたいし、ベースダウンでは、どう考えても理屈がたちません。到底労働者の納得は得られず、やる気を失ってしまいます。
もうけをうみだした労働者のがんばりに対する“分け前”を、わずかでも賃上げでこたえるのがこれまでのやり方でした。労働側が筋を通して賃上げ要求をすれば、経営側はイヤとはいえないほどの好業績です。
ところが、日産やヤマハなどを除くほとんどの大企業労組は賃上げ要求を見送る方向です。経営側にとって、まさに助け舟といえます。
いま、少なくない大企業で一般社員に対し定期昇給を廃止し成果主義を強化する賃金制度見直しがすすめられています。がんばって働いても、基準があいまいで測りようがない成果主義は、上司から高い評価を受けなければ、賃金は上がらず降格・降給もあるケースがほとんどです。そのため、連合加盟の主要産業別労働組合が統一要求としている、賃金表のカーブ(定昇相当)維持は意味がなくなります。
労働者が労働組合活動の重点にすえてほしいと考えているのは、トップの「雇用の安定」60・7%に続き、「定期昇給の維持・賃上げ」57・8%です(連合総研「労働組合に関する意識調査」〇三年十一月)。
かつてなく雇用と賃金・労働条件低下の不安に労働者がさらされているときに、労働組合としての役割が果たせるのでしょうか。大企業労組の存在意義が問われています。