2004年1月29日(木)「しんぶん赤旗」
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諫早湾干拓事業の調整池の水質について、農水省は流入河川下流の調査地点の水質と比較してとくに悪化しているわけでない、としてきました。ところがこの調査地点は、これまで農水省が調整池内としてきた地点と同じで、本来比較対象にならないことが判明しました。日本共産党衆院議員の赤嶺政賢事務所の調べで分かったものです。
調整池は、諫早湾を閉め切って淡水化し、干拓地の農業用水用に造られました。この閉め切りで干潟が消失し、浄化効果が奪われ、調整池の汚染が進行。農水省のデータによっても、閉めきり前と一九九七年の閉め切り後では、有機物量(COD濃度)は約二倍、チッソ(TN)とリン(TP)は約三・五倍に悪化しています。(表参照)
ところが、農水省は「調整池の水質は基本的には、流入河川の水質を反映しており、最大流入河川である本明川下流の水質と比較して、特段汚染しているものではない」と弁明。その根拠として農業用水取水口付近の「本明川河口」P1(図参照)のCOD濃度(一g中六・三ミリグラム)と調整池中央(S11)の濃度(同六・七ミリグラム)をあげています(数値は九七年−〇一年の平均)。
これまで農水省は、P1付近は「河口」ではなく「調整池内」と答えてきました。調整池は農業用水を利用目的に造られており、河口から取水するとすれば計画変更になるからです。P1地点は、取水口とほぼ同じ場所で、調整池内に当たり、河口でも下流でもないことになって、農水省の主張は成り立たなくなります。
実際、本明川下流の不知火橋地点での調査データと比較すると、COD濃度の調整池の濃度との差は歴然としています。(グラフ参照)
佐々木克之・水産総合研究センター元室長の話 私たちがすでに論文で発表したように、調整池造成による干潟の消失で、海をきれいにする力が失われたために調整池の水質が悪化した。
浄化対策で河川がきれいになったのに調整池の水質がきれいにならないというデータは、私たちの指摘をさらに裏付けている。
調整池は、有明海の汚染源になっており、農水省がごまかさずに科学的に対応しないと有明海再生は実現しないと心配している。