2004年1月27日(火)「しんぶん赤旗」
公正取引委員会は、運輸業などにたいする荷主の取引上の行為について、独占禁止法(独禁法)にもとづく「不公正な取引方法」の「特殊指定」をすると発表しました(本紙二十一日付既報)。その意味や考え方をみてみます。
トラック業界や内航海運業界などでは、荷主が製造業大企業で運送請け負い業者が中小企業など、荷主の力が圧倒的に強いのが一般的です。このため、不況になると運搬コストは真っ先にコスト削減の対象にされ、大企業から運送業者に乱暴な低価格が押し付けられてきました。また、運送業界は度重なる政府の規制緩和策のもとで輸送車台数が大幅に増加して、行き過ぎた競争状態にあり、これが荷主の地位乱用の行為に拍車をかけています。
運送業運賃の低価格については、二〇〇一年の運賃水準がピーク時の一九九三年から三―四割減少した業者が34%もある、とトラック業界代表者が国会で証言するような事態です。荷主の激しい低価格の押し付けが、元請け運送業者と下請けとの取引関係で下請法違反などを横行させています。また、この低価格がトラックの過積載や労働者の過労運転、交通事故などを生む背景だと指摘されてきました。
今回の「特殊指定」の決定は、運送業界の不公正取引の大もとにある荷主の不当な要求に初めてメスを入れるものです。法制度としては大きな前進です。「指定」にもとづき公正取引委員会に告発がされれば、独禁法違反として同委員会が「排除勧告」などの不公正をやめさせる措置をとることができます。
日本共産党はこれまで、下請代金支払遅延等防止法の強化に関連し、三次、四次下請けにたいする代金の不払いや買いたたきなどの違反行為は、下請け構造をさかのぼって二次、一次などの元請け事業者、さらには発注元である大企業メーカーに公正取引の実現責任を問うことを要求してきました。その点からも、今回、荷主・発注元の責任をルール化したことは大きな意味があります。
公正取引委員会は、今回の「特殊指定」原案をホームページなどに掲載し、二月十三日に東京で公聴会を開催する予定。その際に意見を述べる公述人の受けつけをしています。
実効ある運用規定とその活用が求められています。
赤羽数幸・全日本建設交運一般労働組合(建交労)書記次長の話 生コンやダンプ、重機、トラックなど建設機械や輸送産業では、バブル崩壊後長期にわたる運賃・賃金の低下が続いています。規制緩和による参入の自由化などから荷主の価格決定権が強まり、ひどい低価格の押し付けが横行しているからです。下請け法では、輸送業者間の取引は対象となっても、その大もとである荷主と輸送業者との関係は対象になりません。私たちは下請け代金法などの改定・強化とともに、この問題の解決を求めてきました。今回、荷主の問題を「特殊指定」し、規制したことは大いに評価したいと思います。
問題はどれだけ実効性ある運用がされるかです。荷主に圧倒的な優越性があり、告発はなかなかできません。実効ある活用のために、労資で共同してこの問題に取り組むなど、活動を広げたいと思います。
独禁法は、独占大企業が大きな力を持つ経済社会のなかで、公正な競争や公正な社会を実現する必要をうたっており、そのための方法の一つとして大企業などの不公正な取引方法を禁止しています。
これについては、どのような行為が不公正に該当するかを公正取引委員会が「指定」しています。このうち、あらゆる業種に適用されるものは「一般指定」といわれ、「不当廉売」や「差別対価」、「優越的地位の乱用」など十六項目があげられています。
これにたいし、取引の一方が強い優越的地位にたち取引業者が従属的立場にあり、独特のはなはだしい不公正が起こっている業種については、業種を特定し不公正な行為を示します。これが「特殊指定」です。
これまでの特殊指定には、「百貨店・大規模小売業」(百貨店やスーパーなどの納入業者にたいする不当行為を規定、「新聞業」(新聞発行業者の販売業者にたいする「押紙」の禁止などを明示)などを対象に六種類あります。
(1)期日までの代金未払い (2)定めた代金の減額 (3)不当に低い代金額の設定 (4)物、役務の購入強制 (5)割引困難な手形での支払い (6)金銭、役務の不当な提供要請 (7)仕事内容の不当変更・やり直し (8)不当要求の拒否にたいする報復 その他、不公正取引を告発したことにたいする取引停止などの報復行為も禁止(4月1日から施行)