2004年1月25日(日)「しんぶん赤旗」
小泉内閣・国土交通省は国民の批判をうけて今後のダム建設計画「見直し」をすすめていますが、すでに計画を決め、建設をはじめたダムは「引き続き進める方針に変わりない」(同省河川局)と、地方自治体の反発を受けた一部を除き、あくまで推進する方針です。建設費が最大級の中部地方の徳山ダム、関東地方の八ツ場(やんば)ダムに問題点を見ました。
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岐阜県藤橋村の揖斐川(いびがわ)最上流で国土交通省の所管の独立行政法人・水資源機構が建設している徳山ダム。現在、本体工事の12%がすんだところですが、利水上の不要さがはっきりし、事業自体の根拠が崩れています。
同ダムは二〇〇七年完成の予定で、六億六千万トン、国内最大の貯水量になります。昨年八月以降、水資源機構は当初事業費二千五百四十億円の約四割にも当たる千十億円の増額を発表し、大問題になっています。これを国交省中部地方整備局の第三者機関、事業評価監視委員会は五十億円の減額で了承し、岐阜県知事も早々と「同意」を表明。しかし、愛知、三重両県、名古屋市、発電事業の主体の電源開発は「受け入れる状況にない」と渋っています。
愛知県の水消費実績は計画の66%(〇〇年度)。県議会で徳山ダム事業の問題点を追及してきた日本共産党の林信敏・前愛知県議は「神田愛知県知事も、緊急用として長良川河口堰(ぜき)の工業用水分の水道への用途間転用に言及することで水需要予測の過大を認め、徳山ダムの利水量減も示唆しています。それで治水効果を強調しています」と述べ、二つの問題点を指摘します。
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「一つはダム事業の根拠となっているのは水道水、工業用水を確保する水資源開発計画であり、治水目的では趣旨と違うということ。もう一つは愛知県の負担も利水だけなので事業費は水道会計から出しており、治水ではお金が出せない。すると事業が破たんしてしまう。それで県は“渇水対策”と“少雨対策”を出してきているわけです。この事業の不当性を県民に分かってもらえるよう頑張りたい」
治水については、最上流部の徳山ダムではその効果は期待できません。むしろ対策としては下流の堤防のかさ上げ・強化と、しゅんせつによる川の流量の拡大、遊水地の確保などが求められています。
昨年十二月二十六日に同ダム事業認定をめぐる建設反対の市民グループの訴えが、岐阜地裁で退けられました。しかし、判決は裁判では争われていない事業費の増額問題にも言及するという異例の「付言」がつき、ダム建設の根拠である水需要予測が現状とかけ離れていることを認め、早急の改善を求めました。
この岐阜地裁判決の午後、原告らは岐阜県知事に対し増額への「同意」撤回などを求める申し入れを行いました。申し入れの席で県の水資源対策室長は「歳出の適正な執行につとめたい」と繰り返すだけ。
建設中止を求める会の事務局長で原告の近藤ゆり子さんは「利水は計画の改定中。治水も同じ。発電だって急げなんて言ってない。裁判を含め、あらゆるフィールドで凍結を求めていく」と話しています。
(東海北陸信越総局 竹森敏英記者)
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国土交通省と独立行政法人・水資源機構は昨年十一月、群馬県長野原町で建設を計画している八ツ場ダムの計画事業費を、二千百十億円から四千六百億円に倍加させ、関係自治体に巨額の事業費負担を求める事業計画の変更案を打ち出しました。
八ツ場ダムは利根川上流の吾妻川に建設する高さ百三十一メートル、貯水量一億立方メートル(東京ドーム八十七個分)、利根川水系では三番目に大きなダム。群馬、埼玉、千葉、茨城の各県と東京都などに水道や工業用水を供給し、洪水対策も担うとして、一九七〇年に着工。二〇一〇年度の供用開始を予定しています。
しかし、日本共産党の追及で、ダム建設によって周辺の住民生活や自然環境が破壊されるうえ、水の需要予測が過大であることが明らかになっています。
事業計画の変更で、東京都三百四十三億円、埼玉県三百六億円、千葉県二百二十億円など各都県の負担が増加します。これにいち早く追従したのが、東京都の石原慎太郎知事でした。
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昨年十二月、日ごろ国への批判を「売り物」にする石原知事が、早々と国の計画変更に同意する議案を提出。日本共産党の曽根はじめ都議は都議会代表質問で、国が群馬県片品村で計画していた戸倉ダムの建設を断念したことを指摘し、八ツ場ダムの建設中止と負担見送りを国に申し入れるよう迫りました。
同じく都市・環境委員会では清水ひで子都議が、都が小口利用者の水道料金値上げを検討していることをあげ、過大な水需要予測にもとづく巨額の費用負担をやめるよう求めました。
都議会では計画変更前の二〇〇一年三月にも、日本共産党の吉田信夫都議が、東京都の一九九九年の最高需要水量が一日五百三十五万トンと、一九八六年に見通した二〇〇〇年時点の想定需要量(一日七百四十万トン)を、大きく下回っていた事実を指摘。計画の全面的再検討を都に求めました。
埼玉県議会では昨年九月、日本共産党の角靖子党県議の一般質問で、水の需要が横ばいで推移していることを示し、新たなダムの建設が必要ないことを示しました。
昨年十二月の群馬県議会でも、日本共産党の早川昌枝党県議が、利根川水系の治水計画が、治山事業や堤防整備も進んでいなかった一九四七年のカスリーン台風の大洪水を想定しており、今日ではダムに頼らなくても治水ができることを強調しました。
千葉県では昨年十二月、日本共産党県議団など県議会四会派が共同で、八ツ場ダムの「必要性」を抜本的に見直すよう堂本暁子県知事に申し入れました。
国が事業計画の変更案を打ち出し、各都県に同意を求めていることに対し、日本共産党は住民運動と連携するとともに、議会の論戦で建設計画に道理がないこと、同県で建設中だった戸倉ダムも中止になったことを明らかにし、計画の見直しと事業費負担増の中止を要求しています。
(東京都 川井亮記者)
日本共産党国会議員団はすでに、2001年5月に全国22カ所のダムの現地調査をおこない、調査結果を発表。その結果にもとづいて、ダム事業の抜本的見直しに向けて「六つの提言」を提案しています。(『議会と自治体』01年8月号)
その柱は次の通り。
(1)計画中、建設中のダムでも、目的を失ったダムはただちに中止し、必要な代替策と地域振興策をはかる
(2)「森は天然のダム」―自然環境の保全を優先する
(3)河川改修や森林保全の治水対策をすすめられる支援策の強化を
(4)住民の負担をあきらかにし、健康をまもる
(5)計画段階から住民が参加する「河川事業評価制度」を創設する
(6)政官業の利権・癒着構造にメスを入れる