2004年1月22日(木)「しんぶん赤旗」
バスケットボールの女子アジア選手権(13日から19日)で、アテネ五輪切符を手にした日本。大会中のある選手のつぶやきがずっと気になっていました。
「気持ちの切り替えに戸惑いがありました」
強豪の中国、韓国、そして台湾らを相手に3つの五輪出場枠を争うたたかい。韓国を破っての2位は堂々たる成績です。
しかし、選手たちは、大きな“ハンディ”を背負っていました。
それは、十分な調整さえできなかった過酷な日程のためです。選手らは、昨年12月末から今月4日までバスケットボールの日本一を決める全日本総合選手権をたたかい抜きました。あるベテラン選手は「五輪予選前にこんなハードな試合をしたのは初めて」と漏らしていたほど。
そして中10日もない状況で、この五輪予選に臨んだのです。
冒頭の選手は「気持ちの切り替え」を問題にしていましたが、肉体的、精神的に無理を強いたのは間違いありません。実際、ベテラン勢は試合の中での疲れが目につき、体調を崩す選手もいました。
なぜ、選手たちに、過酷な条件を押し付けることになったのか。
一番の理由は、テレビだというのです。正月の全日本総合は、集客力がある上に、決勝で「テレビ放映があるから」とある協会幹部。そのため日程を1週間前倒しする対策しかとれませんでした。
ほかの国はどうか。韓国は2カ月前から合宿を組み強化を図っていました。中国も国内のプロリーグの日程をアジア選手権後にずらす措置を取るなどして、協会あげて大会に臨んでいました。
「日本の頂点をいかに引き上げるかを第一の使命としてやってきた」。アテネ五輪の出場権を獲得した翌日(19日)、日本協会の強化担当者はこう語りました。
たしかに日本は、昨年4月からだけでも強化合宿を10回にわたって行い、12月には豪州遠征も実施しました。
しかし、最も肝心な時期に選手に負担を強いる日程は、それまでの努力を台無しにしかねませんでした。
協会は、五輪予選にあたって、選手の力が十分発揮できる環境を整える責任がありました。今回のことを、“結果オーライ”として見過ごしてはならないでしょう。
(和泉民郎記者)