日本共産党

2004年1月17日(土)「しんぶん赤旗」

阪神・淡路大震災から9年

「震災」は終わっていない

「住宅再建支援制度」が焦点に


 死者六千四百三十三人、家屋全半壊(焼)四十七万世帯、一部損壊二十六万棟という戦後未曽有の大災害、阪神・淡路大震災(一九九五年一月十七日)から十七日で九周年を迎えました。阪神・淡路は、いまなお立ち直れない被災者が多く残されています。一方、九年にわたるたたかいが政府を動かし、住宅再建支援制度の確立が熱い焦点となっています。

 (兵庫県 喜田光洋記者)


孤独死−−あと絶たず

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 被災者が住む災害復興公営住宅では、誰にもみとられずに亡くなる孤独死が、昨年十一月末で通算二百五十一人になり、仮設住宅の孤独死二百三十三人を上回りました。うち自殺は三十二人。十一人が死後一カ月以上たって発見されました。

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 背景には、貧困、孤独、高齢化・病気など深刻な現状があります。昨年八月に発表された兵庫県の入居者調査では「暮らしのメドが立った」という人がわずか29%。復興県営住宅では、高齢者世帯が58%を占め(公営住宅の全国平均は28%)、独り暮らしの高齢者世帯は37%にのぼります。

 困窮して家賃が払えなくなった被災者を、行政が冷たく強制退去させる事態が広がっており、マスコミも取り上げるなど大問題になっています。

借金返済−−滞納続出

 震災後に被災者が借りた各種借金の返済が、いよいよ厳しくなっています。

 自治体が貸し付けた災害援護資金は、返済中の約三万人のうち滞納者が28%(八千三百四十八人)にも及んでいます(救援復興兵庫県民会議調べ)。また、全借受人の8%、四千七百四十六人が自己破産や死亡などで返済が不能となっています。

 全国十四大都市の中小業者を比較した全国商工団体連合会の調査(昨年五月発表)では、借入金の返済について神戸市の業者は、「順調」が18%、「苦しい」「滞っている」が68%で、それぞれ十四都市のなかで最悪。前年比で売り上げが減ったという業者の割合も十四都市で神戸市が一番高く、売り上げ五割以上減という業者も最多です。

 持ち家を再建した被災者の住宅ローン返済も深刻で、返済破たんが年々増えています。

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幕引きはかる兵庫県・神戸市

「復興成果」記念事業を準備

 兵庫県や神戸市などは、被災者の苦闘をよそに、「震災は終わった」として、震災対策の幕引きをはかっています。

 県は、十周年へむけて「復興の成果をアピールする」記念事業を準備。神戸市は「経済低迷の要因は、震災よりも景気や産業構造変化の影響が大きい」などとして、十一年目以降の震災復興計画をつくらないとしています。これに対して地元の神戸新聞は「被災地の実情を離れて『震災の影響はなくなった』との認識が広がるのは困る」(昨年十月十日付社説)と批判しています。

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震災犠牲者の氏名を刻んだ「慰霊と復興のモニュメント」に手を合わせる人たち=16日、神戸市三宮
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生活再建を訴え、9周年メモリアル行動を宣伝する救援復興以遠民会議の人たち=14日、神戸市三宮
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阪神・淡路大震災=95年1月

生きる希望もてる政治を

 被災者ネットワーク代表・安田秋成さん(78)

 復興公営住宅では、孤独死が日常茶飯事になりました。孤独死せざるをえないところに追いこまれています。励ます人もいない、お金がない、仕事もない、そして希望がないという人が多い。

 生きる希望をもつには、「元住んでいた街に帰りたい」という願いをかなえられることが大きいと思います。元の街の住宅に移れる制度や保障があり、戻れるとなれば、希望が生まれます。また、仕事がみつかるまで行政が面倒をみるなど、被災者が立ち上がるために支援が必要です。

 高齢のため銀行から借りられないなどで多くの人が住宅再建をあきらめました。しかしいまも、「住宅再建を支援してくれるのなら、それまで生きていよう」という人もいます。再建した人もローンが大変です。やはり公的支援が必要だし、あってこそ生きる希望が持てます。



たたかいが国動かした

政府が「居住安定支援制度」案

 政府は昨年十二月二十二日、「居住安定支援制度」をつくることを発表。阪神・淡路と全国の災害被災者の長年のたたかいが、住宅再建への現金支給を頑として拒否してきた政府をついに動かしました。

 阪神・淡路では、震災直後から「生活・住宅・営業再建に個人補償を」が一番の要求です。復興県民会議を先頭に、「住宅・店舗再建に五百万円、生活支援に三百五十万円の公的支援」などを求め、約八十七万人が投票した九七年の公的支援実現「住民投票」運動をはじめ署名運動、大集会、政府・国会要請など、大きな取り組みがくりひろげられてきました。

 日本共産党は、被災地でも国会でも一貫して個人補償実現へ全力を上げてきました。震災直後の一月二十五日、参院で真っ先に個人補償を要求。九六年と〇一年に、生活と住宅再建にそれぞれ最高五百万円支給の法案大綱を発表し、〇一年六月には参院に法案を提出しました。他党議員との共同にも努力し、九七年には、作家の小田実氏らの運動とも連携して、参院六会派三十九議員が超党派で全壊五百万円などの支援法案を提出してきました。

 「災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会」も九九年に発足。住宅再建支援制度確立へ運動を強めます。

 こうした奮闘が、政治を一歩一歩動かします。

 超党派の「自然災害から国民を守る国会議員の会」(災害議連)や、全国知事会も住宅再建支援制度の創設をうちだし、二〇〇〇年の鳥取西部地震では、鳥取県が住宅再建に三百万円の支給を実施しました。

 昨年七月、参院災害対策特別委員会で、日本共産党の大沢たつみ議員が、「被災者が住宅再建できる内容で支援制度をつくるべきだ」と防災担当大臣に迫り、「予算編成に反映できるようつとめる」と答弁させました。これが制度実現へ大きな転機となりました。

これからが正念場

 政府の「居住安定支援制度」案は、倒壊家屋の解体・撤去やローンの利子補給などに最高二百万円を支給するというもの。住宅本体の建築費への助成は除外されようとしています。同制度創設のために、「被災者生活再建支援法」を改正する予定。通常国会で二月から三月にかけて審議される見こみです。

 住宅再建に実効あるものにさせられるかどうか、今後のたたかいにかかっています。

実効ある制度実現へ論戦に全力

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 日本共産党・大沢たつみ参院議員(兵庫県選挙区)

 多くの被災者の方がたの運動や私たちのとりくみで、ここまで到達したことを確信にしたいと思います。

 国会審議では、被災者の実態を示し、本当に住宅再建できる内容にするために論戦に全力をつくします。住宅建築費への支給や金額を引き上げることなどを正面から訴えるつもりです。他党議員との共同も強めたい。制度を充実させ、そして、阪神・淡路の被災者にそれに基づく相当の措置を実施できるよう奮闘していきたいと思います。

 先日も被災者の方がたにお会いして、不況も重なって借金を返せないなど悲痛な訴えをお聞きしました。しかしいま国会では、阪神・淡路大震災のことにふれる他党議員はほとんどいません。だからこそ、被災者の願いを届けなくてはいけません。七月の参院選で必ず当選するためにがんばる決意です。


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