2004年1月16日(金)「しんぶん赤旗」
やはり圧力があった――。十五日の参院財政金融委員会で、「債務超過」を突然通告してきた監査法人に対する訴訟を足利銀行(本店・宇都宮市)旧経営陣が検討していたにもかかわらず、金融庁がやめるよう圧力をかけていた実態が明らかになりました。日本共産党の大門みきし議員が独自に入手した情報に基づき追及したものです。参考人として出席した同行の日向野善明元頭取も「そのような経過があった」と事実を認めました。
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大門議員は、前日の衆院財務金融委で日向野氏が「監査法人に対して訴訟を起こしたいくらいだ」と発言したことを取り上げ、「なぜ訴訟を起こさなかったのか」と質問。日向野氏は金融庁から圧力があったことを認め、「やむをえず引き下がった」と述べました。
日向野氏によると、旧経営陣は破たん直後の十二月、弁護士とも相談し、何の前触れもなく監査報告を「資産超過」から「債務超過」に変更した中央青山監査法人を訴える準備を開始。金融庁の監視チームにも相談しました。ところが同庁は「監督権限に属するものではないが」と断りながら、「新経営陣の判断に任せるべきだ」との意見を伝えたといいます。
大門議員は「地元とも協力して経営努力をしてきただけに、もう少し時間が欲しかったという無念の気持ちは十分承知している」と述べ、「竹中(金融相)プラン」に基づく強引な銀行再編が元凶になっていると指摘。「張本人は金融庁で、監査法人は執行役をやらされただけだ」と金融庁の姿勢を批判しました。
委員会には、日本公認会計士協会の奥山章雄会長も参考人として出席しました。
足利銀行は昨年十一月二十九日、預金保険法一〇二条三号に基づき一時国有化されました。監査法人が足利銀を「債務超過」と認定し、同行が政府に破たん(事実上の倒産)を申し出たことが表面上の理由です。これにより、国が全株式を無償で取得して新経営陣を任命しました。
ところが、破たんの引き金を引いたのは金融庁自身でした。検査の中でこれまで採用されていなかった米国仕込みの厳しい査定基準を押し付け、将来戻る税金に相当する額を「繰り延べ税金資産」として自己資本に組み入れることを突如「認めない」とすることで監査法人、銀行に圧力をかけたのです。この結果、足利銀の決算は「資産超過」から「債務超過」になりました。
足利銀問題で金融庁は「銀行と監査法人の問題だ」(竹中平蔵金融相)と責任を回避しています。しかし、破たん前も後も金融庁の圧力があったことは公然の事実。地域経済や中小企業への影響を無視して銀行再編を進める「小泉改革」とは何なのか――。その実態が浮き彫りになりつつあります。(北條伸矢記者)