日本共産党

2004年1月15日(木)「しんぶん赤旗」

大会決議案についての中央委員会報告

幹部会委員長 志位和夫


 日本共産党第二十三回大会の一日目(十三日)に、志位和夫委員長がおこなった「大会決議案についての中央委員会報告」は、つぎのとおりです。


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報告する志位和夫委員長

 代議員のみなさん、評議員のみなさん、CS通信をご覧の全国の党員のみなさん。私は、中央委員会を代表して、大会決議案についての報告をおこないます。

 昨年九月の第八回中央委員会総会(八中総)で決定・発表した大会決議案は、「新しく決定される党綱領を、直面する国内外のたたかいにどう生かすかという見地から、当面する情勢分析と党のとりくみの課題、たたかいの課題について、重点的に明らかにする」ことを主眼にしたものでした。

 その後、解散・総選挙という政治の激動がおこり、わが党は、複雑で困難な条件のもとで奮闘をしましたが、議席を大きく後退させる結果になりました。その総括と教訓の基本点については、十二月の十中総で明らかにしました。報告の冒頭に、総選挙で昼夜をわかたぬ奮闘をしていただいたすべてのみなさんに、あらためて心からの感謝をのべたいと思います。(拍手)

 この党大会は、半年後の参議院選挙にむかって、各党とのしのぎを削る激烈なたたかいが始まっているもとでの大会です。中央委員会報告は、参議院選挙でわが党が掲げた目標達成をいかにかちとるかに焦点をあてて、つぎの三つの柱でおこないます。

 第一は、大会決議案発表後の内外情勢のいくつかの重要問題について。

 第二は、参議院選挙をたたかう政治方針と活動方針について。

 第三は、どんな激動のもとでも選挙で勝てる強大な党をいかにつくるかについてであります。

 決議案の補強・修正については、全党討論でよせられた意見、中央委員会報告、大会での討論をふまえ、最終日に提案することにします。


一、大会決議案発表後の内外情勢のいくつかの重要問題について

 まず、大会決議案発表後に生じた内外情勢のいくつかの重要問題について、決議案を補強する形で報告します。

イラクへの自衛隊派兵に反対するたたかい

 イラクへの自衛隊派兵に反対するたたかいは、直面する国政の最も熱い焦点の一つとなっています。

 重武装した自衛隊を現に戦闘がおこなわれている戦地に派兵することは、戦後初めてのことであります。多くの国民は、日本の軍隊が戦後初めて他国の国民を殺しかねないこと、また戦後初めての戦死者を日本国民のなかから出しかねないことにたいして、不安と怒りを広げています。憲法を乱暴にふみにじるイラクへの自衛隊派兵を許すかどうかは、二一世紀の日本の進路、日本のあり方にかかわる重大な問題であります。

 小泉内閣は、国民をあざむく偽りの説明で自衛隊派兵にのりだしましたが、具体化をすすめればすすめるほど、政府の説明はなりたたなくなり、この派兵計画の本質がうきぼりになってきていることが特徴であります。

 第一に、政府はもっぱら「人道復興支援」を派兵の理由としてきましたが、実態はどうなっているでしょうか。政府のいう「人道復興支援」活動自体が、米英占領軍の事実上の指揮下でおこなわれることにくわえて、政府が策定した「基本計画」でも「実施要項」でも、「安全確保支援活動」として、米英占領軍へのさまざまな支援活動が、はっきりと位置づけられています。政府が、派兵計画の第一弾としてすすめている航空自衛隊の任務には、占領軍支援のための輸送業務が明記されています。政府は、武装米兵を対戦車砲や迫撃砲とともに輸送することもあると明らかにしました。政府は、「米軍による武装抵抗勢力への掃討作戦の支援」、「米軍によるイラク人の抗議・抵抗運動への鎮圧作戦への支援」なども、自衛隊の任務として位置づけることを明言しました。

 これらは、米英占領軍への支援・参加・合流が、自衛隊派兵の本質であることを示すものであります。しかし無法な侵略戦争と不法な占領支配こそ、イラクの状況の泥沼化を深刻にしている元凶です。それはまた、国連のアナン事務総長が「占領と復興支援は両立しない」と言明したように、国際社会による人道復興支援の最大の障害になっています。「人道」に最もそむく行為に手をかしておきながら、その理由に「人道」をもちだすことは、世界と日本国民をあざむく卑劣な姿勢といわなければなりません。(拍手)

 第二に、政府は、自衛隊を「戦闘地域には送らない」とくりかえし、これをもって「海外で武力の行使をしないことを明確にするための制度的担保」――つまり憲法を順守する保障だと説明してきました。ところが、この説明は、占領当局自身が「全土が戦場」というイラクの現実では到底通用するものではありません。むしろ自衛隊をイラクへ送れば、占領軍の一部とみなされ、攻撃対象とされるというのが、現実です。さらにいえば、そのことによって、日本が不法なテロの標的となる危険をみずからつくりだすことにもなります。

 そこで政府は、さらなる詭弁(きべん)をもちだしました。「国または国に準じる者の組織的・計画的な攻撃」は「戦闘」だが、テロやゲリラなどによる襲撃は「戦闘」ではないとする議論であります。しかし、この論法でいけば、イラク全土を「非戦闘地域」とすることもできるし、武装勢力との激しい交戦で双方に多数の死傷者が出ても「戦闘はおこなわれなかった」ということもできます。いま政府は、世界のどこにも通用しない荒唐無稽(むけい)な理屈で、憲法をふみやぶる海外での武力の行使に踏み出そうとしているのであります。

 派兵計画を強行する理由がたたなくなって、小泉内閣がくりかえすのは「日米同盟のため」ということです。しかし「日米同盟」は、無法への加担を合理化する理由にはけっしてなりません。

 イラク戦争の経過は、二一世紀の世界が、いかにアメリカが強大無比な軍事力をてこに、みずからが頂点に君臨する「一極世界」をつくろうとしても、世界は、思いどおりにはならないことを証明しました。

 今日の世界の大きな動きをみれば、米国の同盟国もふくめて、世界の多くの国々がそれぞれなりに、アメリカとの関係で協力すべきは協力するが、国際ルールを破る無法には反対するという理性的な態度で、アメリカとの関係をきずこうとしています。二一世紀の世界は、ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカなど、世界人口の圧倒的多数をかかえる国々が、相互に尊重しあい、国連憲章にもとづいた平和秩序をめざす「多極的な世界」に踏み出しているのであります。

 こうしたなかで、ただ一点でもアメリカの方針に逆らえば、「日米同盟」のすべてが壊れるという立場にたって、あらゆる問題で米国追従の態度をとっている日本政府の卑屈な姿勢は、世界でもきわだっています。

 ある国際的に著名な知識人は、「イラクに自衛隊を派兵しないことで損なわれる『日米関係』ならば、そのあり方を根本から見直すべきではないか」と語りましたが、イラク問題をめぐる日本政府の対応は、日米安保体制という異常な従属体制を、二一世紀もつづけていいのか――その根本からの見直しをせまるものとなっていることを、強調したいのであります。(拍手)

 無法な侵略戦争と不法な占領支配に軍事力をもって加担する自衛隊派兵は、日本国憲法をふみやぶる暴挙というだけではありません。それは、アメリカの一国覇権主義に反対して、国連憲章にもとづく世界の平和秩序をもとめる諸国民の願いにそむく行為であり、アラブ・イスラム諸国の人々との友好を破壊するとりかえしのつかない道に、日本を引き込むものにほかなりません。

 いま日本がなすべきは、軍隊の派兵ではありません。米英軍主導の占領支配から国連中心の復興支援に枠組みを変更し、そのもとでイラク国民にすみやかに主権を返還するための、憲法九条をもつ国の政府にふさわしい外交努力こそもとめられています。

 日本共産党は、国際的な道理にも、憲法の平和原則にもあいいれない、自衛隊のイラク派兵に反対する国民的なたたかいを広げ、この無謀な計画を中止・撤回させるために、全力をあげるものであります。(拍手)

憲法改悪反対の一点での広範な国民的共同をきずくたたかい

 つぎに憲法改悪反対の一点での国民的共同をきずくたたかいについて報告します。

 決議案が提起した憲法改悪問題は、総選挙の重大な争点となりました。自民党は「政権公約」で、二〇〇五年をめどに党としての憲法改定案をまとめることを公然と掲げ、民主党も「政権公約」で、それまでの「論憲」から「創憲」――憲法のつくりかえへと重大な踏み込みをおこないました。

 総選挙後、憲法改定にむけた動きがあいついでいます。自民党は、憲法改定の具体的手続きをさだめた国民投票法案を、通常国会に議員立法として提出する方針を固めるとともに、与党と民主党との間に「協議機関」をつくって憲法問題の議論をおこなうとの方針を示しました。民主党の菅代表も、二〇〇六年までに民主党の改憲案をまとめる考えをのべ、「衆院で三分の一の議席を民主党が持っているということは、憲法改定の発議の是非も民主党にかかっている」として、自民党との改憲議論に応ずる姿勢を明らかにしました。公明党も「時機をみて、憲法改定についての最終見解をとりまとめる」としています。明文改憲にむけて各党が競い合うという状況が生まれているのは、きわめて重大な事態だといわねばなりません。

 こうした明文改憲の動きと並行して、日米安保体制を文字どおりの「地球規模の日米関係」(二〇〇三年五月の日米首脳会談)として強化し、自衛隊の役割と機能を「地球規模」に拡大しようという動きもすすめられています。昨年末、小泉内閣は、「弾道ミサイル防衛システムの整備」とともに、二〇〇四年度末までに新「防衛計画大綱」と新「中期防衛力整備計画」を策定することを、閣議決定しました。これらは、「専守防衛」を建前としてきた自衛隊の役割の大転換をはかり、自衛隊を、米軍がおこなう戦争に地球的な規模で参戦する、本格的な海外派兵のための軍隊に変貌(へんぼう)させようとするものであります。米軍の戦争にいつでもどこでも新たな立法措置なしに参戦するために、自衛隊の海外派兵のための恒久立法のくわだてがすすめられていることも重大です。これらの動きが、憲法九条の明文改憲の動きと一体にすすめられていることに、強い警戒を払う必要があります。

 こうして、憲法九条を壊すのか守るのかは、さしせまった国政の熱い重大問題となってきています。この問題で国民的な多数派を結集するうえで、何が大切でしょうか。つぎのような点をしっかりとにぎって、たたかいを前進させることが必要であります。

 第一は、今日の改憲論の目的が、憲法九条を改定して、自衛隊を正式に「国軍」(小泉首相)と認め、米国の海外での戦争に、自衛隊が公然たる武力行使をもって参加する――日本を文字どおりの「戦争をする国」につくりかえることにおかれていることを、広く明らかにしていくことであります。

 憲法九条は、歴代の自民党政治によってふみつけにされながらも、なお海外派兵の手足を縛る重要な役割をはたしています。すなわちこの憲法をじゅうりんするさまざまな海外派兵法がつくられてきましたが、どの法律でも海外の自衛隊の活動について「武力行使はできない」、米軍への支援も「武力行使と一体になった支援はできない」ということが、ともかくも建前とされてきたわけであります。

 憲法九条改定は、この建前をとりはらい、米国の海外での戦争にいっさいの歯止めなく参戦する道を開くことを意味します。それは、今日、米国が無法な先制攻撃戦略をとっているもとで、日本が無法な戦争国家の一員となり、アジアと世界にとって、重大な軍事的緊張と危険をつくりだす根源の国となることを意味します。このくわだてが、日本国民にとってはもとより、アジアと世界の平和と安定にとっていかに危険かを、広く明らかにしていくことが、重要であります。

 第二は、憲法九条改悪勢力は、「新しい時代には、新しい憲法が必要だ」という漠然とした改憲論の土俵のうえに国民をのせることを当面の戦略においていますが、これらの動きは、いわば「外堀」をうめる策動であり、それは「内堀」――憲法九条改悪に必然的につながる動きであることを、明らかにしていくことが必要であります。

 たとえば改憲勢力は、憲法改定のための国民投票法案を、議員立法として提案し成立させることを、改憲策動の第一歩に位置づけています。彼らはこの策動を、「憲法第九六条は、憲法改定手続きの一環として国民投票を規定しているのに、憲法制定以後半世紀にわたってそのための法律が制定されていないのは、立法府の怠慢だ」といった形式論で説明しようとしますが、逆に半世紀も手をつけてこなかった法案を、この時期に提案しようとしているのはなぜか。憲法九条改悪を目的としているとしか説明がつかないではありませんか。憲法改定のための国民投票法案に反対し、その強行を許さないことは、憲法改悪を阻止する第一歩のたたかいとして、きわめて重要であります。(拍手)

 また改憲勢力は、憲法には「環境権」「プライバシー権」などが明記されていないなどの「これがたらない」式の議論をさかんにおこない、改憲の必要性を主張しています。こうした勢力こそ「環境」「プライバシー」を壊して平気な勢力であることが特徴ですが、この動きの目的も憲法にあれこれの条項を加えることと一体に、九条改悪をすすめることにあります。

 憲法をめぐる中心課題は、その全条項を厳格に順守し、とくに平和的民主的条項の完全実施をもとめることにあります。この立場にたって、憲法九条改悪勢力がくわだてているあれこれの改憲論の土俵にのらないことこそ、憲法九条を守りぬくもっともたしかな道であることを、広く明らかにしていくことの重要性を、強調したいと思うのであります。

 第三に、二一世紀のアジアと世界の大局的な動きをみれば、憲法九条は「時代遅れ」どころか、時代の先駆をなすものであることを、おおいに明らかにしていくことも重要であります。

 憲法九条が高く掲げている戦争放棄の精神は、独立と主権の尊重、武力行使の放棄などを大原則とし、「ASEAN(東南アジア諸国連合)の平和憲法」とよばれる東南アジア友好協力条約(TAC)に、中国とインドが加入し、二十数億人が参加する強力な平和の流れがつくられたことに象徴されるように、アジアの大勢となっています。

 さらに世界を見ますと、二〇〇〇年に開催された国連ミレニアム・フォーラムの「平和、安全保障、軍縮」グループの報告書では、「すべての国がその憲法において日本国憲法第九条に表現されている戦争放棄原則を採択するという提案」が強調されています。

 二一世紀こそ、憲法九条の理想が世界に生きる世紀であります。その時に、世界に誇るこの宝を放棄することが、いかに時代逆行の愚行であるかは、明りょうではありませんか。

 憲法九条とは、そもそもどうしてつくられたのか。この条項をうちたてた根本には、日本軍国主義の侵略戦争によるアジア諸国民と日本国民のおびただしい犠牲があったことを、けっして風化させてはなりません。かつて侵略戦争の犠牲となったアジアの諸国民が、日本の憲法九条をわがことのように大切に考えていることを、日本でたたかうわれわれは、深く胸にきざんで奮闘する必要があります。

 日本共産党は、戦前、戦後の八十二年の歴史においてためされた反戦・平和の党として、憲法改悪反対の一点での広大な国民的共同を発展させることを心からよびかけるものであります。(拍手)

国民生活をまもるたたかい――年金問題と消費税問題

 つぎに国民生活をまもるたたかいについて報告します。

 総選挙後、政府・与党の一連の動きのなかで、年金大改悪と消費税増税をはじめ、巨額の連続的な国民負担増をしいる方針が、次々と具体化されてきました。その中身は、つぎのような空前のものであります。

 ――税金と社会保障の両面で、庶民に連続的な負担増をしいる計画が進行中です。小泉内閣のもとでの負担増は、すでに法律で決まっているもので二〇〇二年度を起点として約四兆円(平年度)。それにくわえて小泉首相の総裁任期とされる二年後の二〇〇六年度までに、さらに約三兆円(同)の新たな負担増を国民におしつける計画が来年度予算に盛り込まれました。合計七兆円(同)の負担増です。それを一覧表にすれば、医療、年金、介護保険、雇用保険など社会保障のあらゆる分野での負担増、酒税・たばこ税増税、所得税・住民税の増税、消費税の免税点引き下げなどあらゆる分野での庶民増税が、ずらりとならびます。

 ――年金制度の空前の大改悪が強行されようとしています。政府・与党の計画は、保険料引き上げと給付水準引き下げを、国会の審議ぬきで自動的におこなう仕掛けをつくるものであります。保険料だけで年金制度全体で毎年一兆円の負担増が二〇一七年までつづく一方で、給付水準はモデル世帯で収入の約60%から50%へと引き下げられ、年間約四十四万円も目減りさせられます。共働きや単身者では、収入の三割台に引き下げられます。しかも、国民への約束だった基礎年金への国庫負担率の二分の一への引き上げは、これを先送りにしながら、その財源に年金課税強化、定率減税の廃止による庶民増税、そして消費税増税をあてる道に踏み出そうとしています。

 ――消費税増税計画が、現実の政治日程にのせられつつあります。総選挙後の動きとしては、自民党と公明党の「税制改革」の合意で、「二〇〇七年度をめどに、年金、医療、介護等の社会保障給付全体に要する費用の見直し等をふまえ、消費税をふくむ抜本的税制改革を実施する」と、期限を示して、公然と消費税増税を打ち出したことは、きわめて重大であります。日本経団連は、「遅くとも二〇〇七年度までには10%」を方針としていたが、彼らがそのために二〇〇五年夏から本格的調整・準備に入り、翌年二〇〇六年春には増税法案を成立させるという増税の日程表をもっていることも、明らかにされました。

 連続的な負担増、年金制度の大改悪、そして消費税の増税――国民の暮らしに重大な打撃をあたえ、日本経済を破壊する空前の大収奪の計画をくいとめるために、わが党は、国会内外でのたたかいで全力をあげるものであります。(拍手)

 このたたかいで、悪政から生活をまもる国民的な多数派を結集するためのカギは、どこにあるでしょうか。悪政推進の側は、「高齢化社会の社会保障をささえるためには、国民負担増はやむをえない」という論理をおしたて、国民を「負担増不可避」の気持ちにおいこむことを大戦略としています。この攻撃を、わが党が国民とともに打ち破るには、つぎの二つの点が重要であります。

 第一は、消費税増税など国民負担増計画の真の目的は、「社会保障の財源のため」ではなく、「大企業の税・社会保険料負担のいっそうの軽減のため」であること、さらにアメリカと財界の要求にもとづく大軍拡のための財源づくりにあることを、広く国民に明らかにしていくことであります。

 決議案では、この十五年間をみれば、消費税導入・増税とセットで、法人税減税がくりかえされ、国民からしぼりとった消費税が、大企業の減税の財源としてのみこまれてしまったことを明らかにしています。

 いま財界が、消費税大増税に、異常な執念を燃やしているのも、大企業の「税・社会保険料負担」をさらに軽減するためにほかなりません。社会保障にかかわる財界の主張は、つぎの二つの柱からなっています。 第一の柱は、公的年金の基礎年金部分、高齢者医療、介護の財源には消費税をあてる。そのために消費税を当面は10%、将来的には18%にまで引き上げるという、大増税の計画です。

 第二の柱は、法人税をさらに引き下げるとともに、社会保険料負担――とくに厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険については、保険料を全額サラリーマン本人が負担する方式にあらため、企業負担を廃止するという計画です。

 つまり、税金でも、社会保険料でも、社会保障への社会的責任を一切放棄する。その負担は財界にとって痛くもかゆくもない消費税大増税にすべておしつけるというのであります。しかし、企業が、雇用している労働者の老後や病気、労働災害、失業などに備えて応分の負担をするのは、世界で確立してきた社会保障制度の根幹をなす大原則であります。これを放棄しようというのは、人間らしく生きるために人類がきずきあげてきた歴史を大きく逆戻りさせる、横暴で身勝手きわまる主張にほかなりません。

 第二は、消費税に頼らなくても安心できる社会保障をきずけるというわが党の民主的対案を、広く明らかにしていくことであります。

 わが党が総選挙政策で打ち出した、社会保障の財源をどうまかなうかについての「二段構えの財源論」――まず税金の使い道をあらためて社会保障を予算の主役にすえる歳出改革をおこない、将来は大企業と高額所得者に応分の負担をもとめる経済民主主義にたった歳入改革をおこなうという財源論は、重要な意義をもつものです。

 わが党の「二段構えの財源論」は、政府・財界の策動とのきりむすびの焦点ともなっています。歳出改革でのわが党の主張は、巨大公共事業の浪費と、年間六兆円にのぼる道路特定財源、五兆円をこえる軍事費という、財界・大企業の予算私物化の中心点にメスをいれるべきだという当然のものであります。しかし自民党政治にその意思も能力もないことは、無駄な高速道路をつくりつづけることをはじめ浪費構造の温存を決定した「道路公団改革」の決着や、「都市再生」の看板のもとに巨大空港、港湾、高速道路網への予算を大幅に増やした来年度予算案をとっても明らかであります。

 将来は歳入改革で、大企業に応分の負担を、というわが党の主張も、国際的にみて当然のものです。この点で、日本の大企業は世間なみの「税・社会保険料負担」をしていない――その負担水準は国民所得比で12%と、欧州諸国の大企業が15%から24%の負担をしているのに比べて五割から八割の水準であり、しかもこの十年間でみて欧州諸国の大企業は負担が増大しているのに、日本の大企業は負担が軽減されているという事実を、広く明らかにしていくことが大切であります。

 日本共産党は、国民の暮らしの断固とした守り手として、党みずから「たたかいの組織者」として奮闘するとともに、広範な諸団体との共同の輪を広げ、年金大改悪と消費税増税などの未曽有の国民負担増の計画をくいとめるために、力をつくすものであります。(拍手)

社会の道義的な危機を克服する国民的対話と運動について

 日本社会の道義的危機を克服する国民的対話と討論をよびかけた決議案第七章には大きな反響がありました。よせられた意見は、可能なかぎり決議案の修正・補強という形で生かしたいと思います。報告では、決議案でこの問題を提起した意味、提起の角度について解明をしておきたいと思います。

 決議案がこの問題を提起した意味は、日本社会がモラル――道義の面でも危機を深めていること、そしてこの危機が、子どもたちにもっとも重大で深刻な影響をあたえ、子どもの健全な成長をむしばんでいることに、多くの国民が心を痛めているもとで、人間が人間らしく尊重される社会をめざす政党として、その克服の方向について、問題提起をおこなう責任があると考えたからであります。決議案は、二つの角度からこの問題に接近し、現状打開の方向についての問題提起をおこなっています。

 第一の角度は、日本社会の道義的危機の根本にある、自民党政治のもとでの国民の生活、労働、教育などのゆがみや矛盾、困難を打開するということであります。

 たとえば決議案は、大企業のリストラ競争の横行によって、弱肉強食の競争至上主義の風潮がつくられ、国民の精神生活にも殺伐とした雰囲気が持ち込まれていると指摘しています。各国国民の価値観に関する意識調査の国際比較をみても、あるべき社会として「貧富の差が少ない社会をめざすべき」とこたえた人の割合が、日本は最低水準にあるなど、わが国では人間的・社会的連帯が弱められている現状があります。これは打開すべき大きな問題を投げかけています。

 また決議案では、自民党政治が長年つづけてきた世界でも異常な競争主義、管理主義の教育が、子どもたちの心と成長を深刻に傷つけていると指摘しています。前回大会ではすべての子どもに基礎学力を保障する教育改革のとりくみをよびかけ、そうした原点にたった学校改革のなかで、すべての子どもが人間として大切にされていると実感できる学校をつくってこそ、子どものなかに互いの人格を尊重する態度が生まれ、本当の道徳性も生まれることを強調しました。この提起は、二〇〇二年度からおしつけられた新学習指導要領が、教育現場の矛盾をいっそう深刻なものとし、文部科学省自身が手直しを余儀なくされるという混迷にあるもとで、切実な意義をもつものであります。

 さらに決議案では、教育基本法改悪の策動をきびしく批判しましたが、その後、自民党が総選挙の「政権公約」で「教育基本法改正」をかかげ、改悪法案の提出が現実の政治日程にのぼるという重大な局面が生まれています。改悪の矛先は、教育基本法に明記された「人格の完成」を教育の根本目的(第一条)とし、国家権力による「不当な支配」を排除する(第十条)という、民主的教育の理念と原則そのものにむけられようとしています。この改悪で、国が「教育振興基本計画」をつくり、教育内容に公然と介入する足がかりをつくろうとしていることは、国家権力による「不当な支配」の排除という教育基本法の“命”ともいうべき原則への挑戦にほかなりません。教育基本法改悪に反対する国民的なたたかいを広げることを、強くよびかけるものであります。(拍手)

 第二の角度は、社会のモラル――道義をきずきあげていくうえで、政治や経済や教育のゆがみには解消できない、それらのゆがみをただすまで待っていられない、社会が独自にとりくむべき問題があるという提起であります。決議案は、それを、(1)民主的社会にふさわしい市民道徳の規準の確立、(2)子どもを守るための社会の自己規律を築く、(3)子どもが自由に意見をのべ、社会参加する権利を保障する、(4)子どもの成長を支えあう草の根からのとりくみという、四つの項目で提案しています。決議案では、これらの問題を、政治的立場の違いをこえた国民的対話と運動によって解決方向が探求され、合意を形成し、現状打開をはかるべき問題として提起しています。

 第一項目にあげている「市民道徳の規準の確立」という問題について、わが党は、一九九七年の第二十一回党大会で十項目の市民道徳の提案をしていますが、何をもって市民道徳の規準にするかという問題については、必ずしも国民的合意が存在しているわけではありません。たとえば愛国心をめぐっても、他国を敵視したり他民族を蔑視(べっし)する立場とむすびついた「愛国心」か、諸民族の対等・平等、相互尊重と平和共存の立場とむすびついた愛国心かが、鋭く対立しています。「市民道徳の規準を確立」していくことは、今日の道義的危機を打開していくうえで土台となるものですが、それ自体が国民的討論によって解決がはかられるべき問題となっているのではないかということが、決議案の問題提起であります。

 第三項目にかかわって、決議案が、子どもの自己肯定感情――自分を尊い存在だと思う感情が深く傷つけられているという実態があること、「子どもたちが、自分が人間として大切にされていると実感でき、みずからの存在を肯定的なものと安心して受け止められるような条件を、家庭でも、地域でも、学校でも、つくることが切実に求められる」という提起をおこなったことにも、多くの共感の声がよせられました。またこの問題をさまざまな角度から深める貴重な意見がよせられました。

 子どもに自己肯定感情をはぐくむためには、子どもの声に真剣に耳をかたむけ、子どもの思いや意見を尊重し、子どもを一人の人間として大切にする人間関係を、社会の各分野でつくっていくことが、きわめて重要になります。決議案が自己肯定感情という問題を、子どもの意見表明権という問題とむすびつけて提起したのは、そういう立場からです。この問題でも、対話と運動を広くおこしていくことを探求したいと思います。

 この章で提起した問題は、問題の性格からいって、一朝一夕にすべての答えがだせるものではありませんが、その打開が二一世紀に民主的な日本社会をきずいていくうえで、不可欠な重要な内容となることは、多くの人々が共通して感じていることだと思います。この提起を、国民的な討論と実践によって深め豊かにしていただくことを心から願うものであります。(拍手)


二、参議院選挙をたたかう政治方針と活動方針について

 つぎに参議院選挙をたたかう方針について報告します。半年後にせまった参議院選挙にむけて、すでに党派間で熱いたたかいがはじまっています。この選挙は、イラク派兵と憲法問題など平和をめぐっても、年金や消費税問題など国民生活をめぐっても、二一世紀の日本の進路を大きく左右するたたかいとなります。

 参議院選挙は、日本共産党にとっては、新しい党綱領を決めて初めての国政選挙であり、綱領の内容を国民的規模で語る最初の大きな舞台となります。

 わが党は、総選挙結果をふまえ、比例代表選挙では五議席を「絶対確保議席」として必ず獲得するとともに、選挙区選挙ではすべての選挙区に候補者を擁立してたたかい、七つの現職区での勝利のために全力をあげるものであります。

どういう政治方針でこの選挙をたたかうか

 それでは、わが党は、どういう政治方針をもってこの選挙をたたかうか。つぎの三つの方針を堅持してたたかいぬくことが重要であります。

自民党政治の打破を正面にすえ、日本改革の提案をおおいに語る

 政治方針の第一は、自民党政治の打破を正面にすえ、日本改革の提案をおおいに語るということであります。

 総選挙後の情勢の特徴は、小泉内閣が、すでにみてきたようにイラク派兵、憲法改悪、年金改悪、消費税増税など、総選挙ではその中身をごまかしてきた重大な悪政をつぎつぎに具体化し、あらゆる分野で自民党政治と国民との矛盾がいっせいに噴き出していることにあります。

 小泉内閣は、首相みずからが「自民党をぶっ壊す」と叫んだことに象徴されたように、自民党政治のゆきづまりと危機の産物でした。国民はこの内閣に改革への期待をよせましたが、この内閣の三年をつうじて国民が体験したものは、暮らしにたいする耐え難い痛みの連続、利権と浪費の構造の温存、異常なアメリカ追従とタカ派路線という、最悪の自民党内閣の姿でした。いま国民は、「小泉政治」の本質を見抜きつつあります。政局は激動と流動性をはらみながら展開しています。

 いま重要なことは、「小泉政治」にたいする批判を、自民党政治の古い枠組みそのものへの批判とむすびつけておおいに展開し、その枠組みを根本から打破する改革の立場にしっかりたっている日本共産党をのばすことこそ、「政治をかえたい」という国民の願いにこたえる道だということを、広く訴えてたたかうことであります。

 いま小泉内閣によってすすめられている悪政は、どの問題をとっても、「アメリカいいなり」「財界が主役」という自民党政治の二つの悪政の根源――古い枠組みとむすびついたものであります。イラク派兵と憲法改悪など平和の危機の根本には、日米安保体制を絶対視する異常な対米従属の枠組みがあります。年金改悪と消費税大増税という国民生活にかけられた重大な攻撃の根本には、大企業・財界の横暴で身勝手な戦略と、その意のままに動く政治のゆがみがあります。

 この自民党政治を公明党がささえ、政治的にも組織的にも深い影響力を行使するようになっていることは重大であります。その危険性は、公明党が、「与党を直す」などといいながら、イラク派兵でも、年金改悪でも、悪政の露払いの役回りをになっているというだけではありません。みずからを「仏」とし、それを批判するものを「仏敵」として、「撲滅」の対象とするなど、反民主主義の体質を根深くもつ政教一体の公明党・創価学会が、国家権力の中枢にますます強く入り込もうとしていることは、日本の民主主義の前途に重大な危険をもたらすものであることを直視し、その危険と正面からたたかうことが大切であります。(拍手)

 参議院選挙では、小泉・自公政権がすすめる平和と暮らしを破壊する悪政の一つひとつを告発することとむすびつけて、「アメリカいいなり」「財界が主役」という自民党政治の枠組みそのものを打ち破ることを正面にすえ、わが党の日本改革の提案を語りぬくことを、政治方針の第一にすえて奮闘するものであります。

同じ枠内での「政権交代」「二大政党制」では政治は変えられないことを明らかにする

 政治方針の第二は、同じ自民党政治の枠内での「政権交代」「二大政党制づくり」では政治は変えられないことを具体的事実で明らかにしていくことであります。

 総選挙を契機として、日本の政党地図――政党状況に大きな変化がおこりました。消費税増税、憲法改悪、選挙制度改悪など、日本の進路にかかわる重大問題で、自由党と合併した民主党が、自民党政治と同じ流れに合流し、財界からもアメリカからも信頼されるもう一つの保守政党になろうという動きが、急速にすすみました。

 この動きは、財界主導でつくられたものでしたが、総選挙後の民主党の動きをみると、財界の要求にさらに身をよせる姿勢を強めていることが特徴であります。民主党の菅代表は、日本経団連の機関誌によせた「特別寄稿」で、「外交防衛政策、税制改革、産業政策」などで財界の要求にもっとこたえた政策をつくるために、「今後一層の努力を重ねる」ことを表明するとともに、財界による企業献金の要請をおこないました。民主党の「二〇〇四年度活動方針(案)」では、経済同友会をはじめとする経済団体などとの「政策立案の共同作業」をすすめ、「マニフェスト」を「発展」させるという方針を打ち出しています。

 民主党は、参議院選挙にむけても、「政権交代の土台をきずく」「二大政党制の流れを定着させる」ことを、ひきつづく最大の政権戦略にしています。しかし、財界に身をよせ、自民党政治と同じ枠内での、「政権交代」や「二大政党制」では、「政治を変えたい」という国民の願いにこたえることはできません。

 民主党の政策と立場は、自民党と全分野で同じになったわけではありません。イラク特別措置法にもとづく自衛隊派兵に反対するなど、自民党の悪政に反対する一致点での国会共闘は今後もありうることです。

 同時に、国政の根幹にかかわる問題で、民主党の立場に大きな変化がおこったことをふまえ、国民の利益に反する政策と行動の問題点を、具体的事実にもとづいて広く明らかにすることを重視してたたかうことが、大切であります。

 政党間の論戦をすすめるさい、一昨年から昨年にかけて、財界が、従来の財界と政治との関係――政治の責任は政権党におわせながら財界が支援をするという関係を根本的に変え、財界が直接のりだして政界を再編成し、政界を自らの直接の支配下におく新たな動きを本格的にすすめていることを正確にとらえ、それを念頭においてとりくむことが重要であります。財界がいますすめているのは、つぎの新しい諸特徴をもった政治にたいする総合的で直接的な介入・支配の戦略であります。

 ――財界として政策目標を発表し、その目標にそくして政党の政策を評価し、その政策の実現のために政党に企業献金のヒモをつける――企業献金をてこにした政策買収のシステムをつくる。

 ――財界の意のままに動く保守「二大政党制」をつくる。その狙いは、一方の保守政党が危機におちいったときに、安心できる「受け皿」となる保守政党をつくるだけでなく、二つの保守政党に財界への忠誠を競わせて、財界のどんな要求にも即応してこたえて働く政治をつくることにおかれています。

 ――日本共産党など、財界の野望の実現の障害になる政党を、政界から排除する。「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」はそのための道具だてであり、選挙制度を小選挙区制一本にする動きがたくらまれていることは重大であります。

 もともと財界のこの動きは、自民党の支持基盤が崩れ、自民党一党では財界の支配を維持できないという危機感から出発したものであり、支配体制の危機の産物にほかなりません。そしてこの動きは国民との間に深い矛盾をかかえています。消費税増税と憲法改悪は、わが党が国民とともに大反撃のたたかいをもってこたえるならば、支配体制を根本から揺さぶる政治的激動につながる重大な問題であります。

 保守「二大政党制づくり」によって排除されるのは、少数意見だけではありません。国民多数の声なのであります。わが党は、国民多数の声にたって、財界による日本の政治の直接支配の野望――それに追従する諸党の実態を告発・批判し、これを許さない論陣を、おおいに展開していくものであります。(拍手)

日本共産党の全体像――路線、歴史、実績などを押し出す

 政治方針の第三に、政策論戦とともに、新しい綱領を縦横に活用して、党の全体像を押し出すことを、強調したいと思います。「日本共産党はどんな政党か」「どんな日本をめざしているのか」「どんな歴史をもっているのか」「どういう活動をおこない、どういう実績をあげているのか」などを押し出し、広い有権者に党をまるごと信頼していただけるような宣伝と対話を、選挙戦をたたかう政治方針の重要な柱にすえる必要があります。

 反共攻撃を打ち破ることも、選挙戦での勝利に不可欠ですが、そのさいにも、攻撃への反論にとどまらず、その反撃をつうじて、わが党の立場とその値打ち、反共攻撃をおこなった者の意図と役割を、有権者により広くわかってもらえるように論戦をすすめることが、何よりも大切であります。

 綱領改定案は、わが党がめざす未来社会――社会主義・共産主義の社会について、広範な国民に理解を広げる、たしかな理論的土台をきずくものとなっています。綱領改定案を生かして、どのようにわが党がめざす未来社会の宣伝をすすめていくかは、新しい探求と努力が求められる課題であります。

 北朝鮮問題は、国民が強い関心をよせている問題です。この問題とかかわって、平和解決のためのわが党の外交論とともに、わが党の自主独立の歴史などを広く明らかにしていくことも必要であります。

 また大会決議案にものべられているように、わが党は国民のたたかいと共同して、「サービス残業」問題や、介護保険の問題をはじめ、現実政治を動かす数々の実績をかちとってきました。自民党政治の根本的改革の旗印を持つ党をのばしてこそ、現実に暮らしと平和をまもるたしかな力となることを、訴えることが大切であります。

 以上の三つの政治方針の全体を全党がしっかりにぎって選挙戦をたたかい、参議院選挙で問われる争点は「自民か民主か」でなく、本当に自民党政治を打破する勢力――日本共産党がのびるかどうか――ここにこそ真の争点があることを広く明らかにしていきたいと思います。(拍手)

どういう活動方針でこの選挙をたたかうか

 つぎに、どういう活動方針でこの選挙をたたかうかについて報告します。

比例代表選挙を選挙戦はもとより、あらゆる党活動発展の軸にすえる

 第一は、比例代表選挙を選挙戦はもとより、あらゆる党活動発展の軸にすえることであります。

 比例代表選挙で、五議席の「絶対確保議席」を獲得することは、全党がその力を総結集してやりぬくべき目標であります。

 それをやりとげるうえで、比例代表選挙で前進をかちとることを、全国どこでも選挙戦の文字どおりの中心にすえること、さらには要求活動や党勢拡大でも比例代表選挙での前進をかちとることに焦点をあて、そのためにどれだけのとりくみの発展をはかるかの目標と計画をもって意識的に追求するなど、あらゆる党活動の軸に比例代表選挙をすえることを、まず強調したいと思います。

 十中総の討論の中で、「かつてとくらべて国政選挙というものが、党活動のなかで影が薄くなっている」という発言が出され、不破議長が「選挙戦への取り組みについての問題提起」の発言をおこないましたが、この発言は全党に衝撃的にうけとめられました。この発言のなかで、不破議長は、「いまの条件のもとで、かつての中選挙区の選挙のように、選挙戦と党活動全体の軸になる選挙というのは、比例代表の国政選挙以外にはない。この国政選挙への取り組みを、文字通りわが党の活動全体の軸にしっかりすえ、そこで力の発揮できる党をいかにしてつくってゆくか、このことが、三回の総選挙をへて、いま正面から問われている」とのべました。この提起を具体化していく第一歩として参議院選挙を位置づけ、とりくみをはかりたいと思います。

比例での5議席の「絶対確保議席」を全党の一致結束した力で必ず達成する

 第二は、比例代表選挙で五議席の「絶対確保議席」を獲得する積極的意義を全党のものにし、全党の一致結束した力で必ず達成するということです。

 比例代表での五議席の「絶対確保議席」の獲得という目標は、総選挙での到達をリアルに直視しつつ、全党の奮闘いかんでは達成可能な、現実的で積極的な目標として設定したものです。この目標は、総選挙での到達を大幅に前進させる――全国的には得票で四百五十八万から約六百十万、得票率で7・8%から10%以上へと、得票を133%以上に増やす大奮闘があってはじめて達成できるものです。この目標をやりとげることは、次期総選挙での失地回復の土台をきずくことにもなります。

 参議院選挙の比例代表選挙では、全国すべての都道府県、地区委員会、支部が、五議席の「絶対確保議席」という目標をやりとげるために、総選挙比で133%以上の得票を獲得することを絶対の責任として、それぞれが決めている得票目標、支持拡大目標の達成のために全力をあげることが必要であります。

 参議院の比例代表選挙は、日本全国が一つの選挙区となっている最大規模の選挙戦であり、政党の力量とその消長がもっともストレートにあらわれる選挙戦となります。全国が必勝区のこのたたかいを、すべての支部と党員が自分自身の選挙としてたたかい、一票一票を他党としのぎを削って争いながら、これを蓄積して議席にむすびつけるという、執念を燃やしたたたかいがもとめられています。

 この激戦に勝ち抜くうえで、十一月二十二日の都道府県委員長会議で提起し、十中総で確認した比例代表選挙についての新しい方針のもつ意義を、あらためて全党の共通の認識にすることは重要であります。この方針では、投票の訴えは、「日本共産党名または候補者名で投票してください」とすることにしました。この方針は、(1)総選挙をみても、有権者が政党そのものを選択する様相が強まっているもとで、政党選択を前面にすえてこそ勝利への道がつかめること、(2)党名でも個人名でも、どちらでも支持を広げやすい方法で自由闊達(かったつ)に広げることができる方針となっていること、(3)「絶対確保議席」を目標としてさだめた候補者の当選を保障する方針ともなっていることなど、改悪された非拘束名簿式比例代表選挙という条件のもとで、もっとも合理的で積極的な方針であることを全党と後援会がよくつかんで、とりくむようにしたいと思います。

 そのさい五議席を、全党の一致結束した力で達成することを、強く全党の自覚にすることが必要であります。全国を五つの地域に分けているわけですが、それぞれの地域の党組織は、その地域の候補者の当選にだけ責任をおっているのではありません。全国どの地域でも、党派間のしのぎを削る競り合いのなかで、党名と候補者名での得票を徹底的に広げ、総選挙比で133%以上の得票をえて、それぞれの得票目標をやりとげ、その地域の候補者とともに、五人全員必勝のために共同して責任をおうという見地が、何よりも重要であります。文字どおり「日本は一つ」「全国は一つ」の立場で、力をあわせて奮闘しようではありませんか。(拍手)

選挙区のたたかい――比例を中心にすえつつ、7現職区の勝利に全力をつくす

 第三に、選挙区のたたかいでは、ここでも政党選択――比例代表選挙を中心にすえるという見地をつらぬきつつ、七つの現職区の勝利のために全力をつくすことが、強くもとめられます。

 わが党は、全国すべての選挙区に候補者を擁立してたたかいます。それぞれの選挙区候補者が、有権者とのむすびつきをつよめ、どれだけ党への信頼と支持を広げるかは、重要な意義をもつものです。選挙区のたたかいでも、比例代表での五議席絶対確保に、いかに貢献するかという見地にたった活動を中心にすえてとりくむことが、たたかいの基本となります。政治論戦も、選挙区で立候補している政党だけを対象にした狭い視野のたたかいにせず、すべての政党を視野に入れての論戦という見地が大切であります。

 七つの現職区では、比例代表での五議席絶対確保とともに、選挙区の議席を死守するという二重の任務をもって、もてるあらゆる力を結集し発揮するたたかいを展開し、勝利をめざします。そのさいにも、政党選択――比例代表選挙を中心にすえ、日本共産党の前進の波をつくりだすこととむすびつけて、勝利をめざすことがまず鉄則であります。

 それにくわえて七つの現職区では、比例代表での全国目標の達成に必要な水準を大きく上回る得票目標が必要となります。すでにそれぞれの選挙区で積極的な得票目標をきめていますが、これをやりぬくには、要求活動でも、宣伝活動でも、組織活動でも、党勢拡大でも、これまでやったことのない量と質のとりくみを展開し、どの分野でも、どの地域でも、他党を凌駕(りょうが)する気概で奮闘することがもとめられます。たとえば演説会も、大規模な演説会とともに、これまでやったことのない中小規模の都市で網の目のようにおこなう計画がたてられつつありますが、これを一つひとつ成功させることも重要です。

 六年前とくらべて有利な条件――現職議員として活動し、それぞれの選挙区の有権者の願いを国政にとどける“かけ橋”としてのかけがえない役割をはたし、多くの実績をかちとっていることをフルに生かすことも大切です。候補者が交代する選挙区も、それまでの実績と役割を明らかにし、それを引き継ぐという見地のたたかいが重要であります。

草の根での宣伝・組織活動を「支部が主役」で推進する

 第四は、草の根での宣伝・組織活動を「支部が主役」で推進することです。

 選挙活動は、「四つの原点」にもとづく活動が基本ですが、そのどの分野でもみずからきめた得票目標を達成することに照準をあて、それに必要なとりくみをすすめる必要があります。とくに、かつてやったことのない規模と速度で、草の根での宣伝・組織活動を展開することは選挙戦の目標達成に不可欠であります。

 ここで提起したいのは、すべての都道府県、地区委員会、支部で、それぞれの党組織が到達した過去最高の対話・支持拡大の峰をこえる運動を、期限を設定して早い時期にやりきる活動にとりくむということです。

 そのさい、“名簿”と“地図”を整備・活用して、「対面での対話」――人間と人間との生きたつながりにもとづく対話を組織活動全体の骨格にすえながら、電話をふくむあらゆる手段を使って全有権者への働きかけをやりきるようにしたいと思います。

 対話・支持拡大を早い時期から前進させるうえで、後援会ニュースを活用したくりかえしの対話活動は重要です。いっせい地方選挙でも、総選挙でも、これに本格的にとりくんだところでは、党活動のあり方を一新する大きな力を発揮しました。二百七十万人の後援会員に、系統的に働きかけ、後援会員をさらに拡大し、ともに活動するとりくみを、おおいに発展させるために力をつくします。

 多くの都道府県で、大きな規模での演説会とともに、支部主催の演説会・小集会の積極的なとりくみの計画がたてられていますが、これはきわめて重要です。これまでも支部主催の演説会・小集会にとりくんだところでは、支部が政治単位としての自覚を高め、職場・地域の有権者との生きたむすびつきを強め、あらゆる選挙活動を飛躍させる結節点として大きな力を発揮しています。

 参議院選挙にむけて、全国の地域、職場、学園の文字どおりのすべての党支部で、支部主催の演説会・小集会にとりくみ、「支部が主役」の選挙戦を飛躍させる跳躍台として成功させることを、提案したいと思います。

総選挙の失地回復を自覚して、参議院選挙をたたかう力にする

 第五は、総選挙の失地回復を自覚して、参議院選挙をたたかう力にするということであります。

 総選挙のとりくみについては、十中総の問題提起に対応して、今後、本格的なとりくみを具体化したいと考えます。

 参議院選挙のなかで重要なことは、参議院比例代表選挙の候補者地域は、衆院比例ブロックの組み合わせでできているわけですから、各比例ブロックが、参議院選挙のなかで、比例代表での五議席絶対確保、七現職区勝利を正面にすえつつ、総選挙での失地回復を意識的に追求し、得票増をはかることにあります。衆院比例候補者、小選挙区候補者が、参議院選挙の比例・選挙区候補者と一体になって、先頭にたって奮闘することも重要です。

 以上が、参議院選挙をたたかう政治方針、活動方針の基本についての提案であります。代議員、評議員のみなさんの積極的な討論をお願いするものです。(拍手)


三、どんな激動のもとでも選挙で勝てる強大な党をどうつくるか

 つぎに党建設の方針について報告します。

 どんな激動のもとでの選挙戦でも揺るがず前進できる、強大な党をつくりたい――これは、前大会いらい参院選、いっせい地方選、総選挙という三つの全国的政治戦をたたかった、全国の同志たちが痛切に感じていることだと思います。

 この痛切な思いと教訓を、まず当面する最大の政治戦である参議院選挙に生かす必要があります。参議院選挙での目標達成にむけ、選挙戦の中心課題として、量・質ともに強大な党をきずくとりくみに、全党が総力をあげてとりくむようにしたいと思います。

 前大会以降、わが党は、二回にわたり党勢拡大の「大運動」にとりくんできました。党員拡大では全党の奮闘によって四万三千人の新たな入党者をむかえ、一月一日現在、日本共産党員は四十万三千七百九十三人となりました。新しく党員としての人生の歩みをはじめた同志のみなさんに、あらためて心からの歓迎の言葉を送りたいと思います。(拍手)

 党員拡大の到達は、「五十万の党」という目標にてらすと、初歩的一歩にすぎないものであります。

 「しんぶん赤旗」の読者の陣地は、全党の拡大・配達・集金などのたゆまぬ努力によって支えられてきましたが、後退傾向を脱していないことはきわめて重大であります。「しんぶん赤旗」の読者数は、日刊紙と日曜版の合計で、前大会時の二百万人から二十七万人後退して、現在百七十三万人になっています。

 この大事業でいかにして前進をかちとるか。大会決議案は、党建設の前進をはかるための基本的指針として、「五つの基本方針」をのべています。報告ではこれを前提において、参議院選挙にむけて党建設をどうすすめるかについて、量と質の両面から活動方針を提案したいと思います。

党勢拡大の大きな前進のなかで参議院選挙をたたかおう

党勢拡大の目標について

 まず党勢拡大の目標ですが、つぎの目標を、全党の総力をあげてやりぬきながら、参議院選挙をたたかうことを提案したいと思います。

 「しんぶん赤旗」の読者拡大では、すべての都道府県、地区委員会、支部が、昨年の総選挙時比で130%の読者の陣地をきずいて参議院選挙をたたかうことを目標にし、これに正面から挑戦することを、提案するものです。参議院選挙の比例代表選挙で、総選挙比で133%以上の得票を獲得するためには、「党と国民との結びつきの前進・後退の最大のバロメーター」(大会決議案)である読者の陣地を130%に拡大することは、必要不可欠の課題であると考えるものであります。

 党員拡大については、これを「党建設の根幹」に位置づけ、「二〇〇五年までに五十万の党をきずく」という目標を堅持し、それぞれの党組織が、参議院選挙までにやりとげるべき目標を明確にして、この課題でも本格的な前進をめざすようにしたいと思います。

 以上が、党勢拡大の目標についての提案であります。

総選挙時比130%の読者拡大に正面から挑戦する

 まず読者拡大についてのべます。

 総選挙時比130%の読者拡大は、全党に不退転の決意と構えをもとめる一大事業でありますが、参院選の目標達成を本気でやりきろうと考えるならば、それにとって必要不可欠の課題となるものだと考えます。それを二つの角度からのべたいと思います。

 第一に、党勢の後退という問題は、この間の三回にわたる国政選挙での後退から、私たちが導き出してきた最大の痛苦の教訓でありました。わが党は、二〇〇〇年の総選挙を前回比で日刊紙87%、日曜版89%という後退した陣地でたたかいました。二〇〇一年の参院選も前回比で日刊紙87%、日曜版85%の陣地でたたかいました。二〇〇三年の総選挙も前回比で87%、日曜版で85%の陣地でありました。

 この三回の国政選挙は、反共謀略攻撃、「小泉旋風」、「政権選択選挙」など、どの選挙もわが党の前進をはばむ客観的に複雑で困難な条件のもとでの選挙であり、それだけに党の基礎力量が直接に問われるたたかいになりました。選挙で後退した要因と教訓については、それぞれの選挙ごとに明らかにした個々の反省点も重要ですが、三回の国政選挙に共通する私たちの最大の反省点は、読者の陣地が後退するなかで選挙をたたかったことにあったことを、いまあらためて銘記する必要があるのではないでしょうか。

 参議院選挙にむけても、「二大政党制」「政権交代」「自民か民主か」といったマスメディアを動員した大掛かりなキャンペーンがくりかえされるでしょう。こうした条件のもとで、「真実を伝え、正義の世論をおこす旗」である「しんぶん赤旗」の読者が後退していて、わが党が選挙戦で掲げた目標達成をかちとることができるでしょうか。これはいま私たちが真剣に考えなければならない問題であります。比例代表の五議席絶対確保でも、七現職区勝利でも、目標達成の立場に真剣にたつならば、すでにのべた正確な政治方針と活動方針を堅持して選挙戦の諸課題に全力をつくすとともに、党の基礎力量を強めながら選挙をたたかう、わけても党勢拡大で大きな上げ潮をつくりだしながら選挙をたたかうことが、どうしても必要不可欠ではないでしょうか。

 第二に、前回選挙比で130%以上の読者の陣地をきずいて、つぎの選挙戦での勝利をめざすというのは、一九七〇年代後半から八〇年代の時期には、全党が当たり前のように追求してきた選挙戦の鉄則でありました。

 この方針は、党が躍進をかちとった一九六九年の総選挙、七二年の総選挙で、いずれも全国的に前回比130%前後の読者数で選挙をたたかったこと、とくにこの二つの総選挙で新たに議席をえた選挙区の大半は、前回比130%をこえる党勢でその難関突破に成功したなどの経験と教訓をふまえて、打ち立てられたものでした。

 この目標を文字どおりやりきったという経験は、多くはありませんでしたが、選挙勝利――とくに国政選挙勝利との関係で前回比130%の読者拡大を自覚的に位置づけて推進することは当然のこととしてやられ、戦後第二の反動攻勢のもとで党がふみとどまるうえで大きな力となりました。

 ところが、この十年来、衆議院の選挙制度が小選挙区比例代表並立制にかわり、「国政選挙そのものの影が薄くなる」といった状況がうまれたことともむすびついて、「大きく強い党をつくって選挙をたたかおう」という執念を燃やしたとりくみが弱くなってきていると思います。一九九〇年代後半、わが党は政治戦で連続的な躍進をかちとりましたが、この時期にも党勢拡大は全体として停滞・後退傾向を打開することができず、政治的影響力の広がりに、党の組織の実力がおいつかないという事態を克服することができませんでした。最近の三回にわたる国政選挙での後退は、わが党のこうした根本的弱点があらわれた結果でした。

 この現状をいま、思い切って立てなおすことが、強くもとめられています。参議院選挙にむけて、総選挙時比130%の読者拡大の目標をかかげ、それに正面から挑戦し、やりとげることをその第一歩にしようではありませんか。(拍手)

 参議院選挙にむけて読者拡大にとりくむさいに、「機関紙中心の党活動」――機関紙活動を狭く党建設の一分野というだけでなく、あらゆる党活動の文字どおりの「中心」として位置づけて推進する――(1)「しんぶん赤旗」をよく読み討議する、(2)持続的拡大と配達・集金によって国民とのむすびつきを広げる、(3)読者を友人として大切にし協力・共同をはかる、(4)党財政を支えるという点でも重視する、という前大会決定の立場にしっかりとたつことが大切であります。

 党中央はこの間、読者拡大に継続的にとりくみ、前回大会を上回る陣地をきずいている支部の「経験を聞く会」をもちました。そこで共通して出された教訓は、「機関紙中心の党活動」の重要性を訴えた党大会決定を、文字どおり体現した活動をおこなっていることでした。たとえば党員自身が「しんぶん赤旗」の愛読者となり、この新聞にほれ込み、紙面の中身をたえず討議し、その魅力を語る活動をしています。また機関紙を力にして要求にこたえる活動にとりくみ、新しい人々とのむすびつきを広げ、読者を増やす努力をはかっています。さらに配達・集金活動をみんなでにない、読者とむすびつき、友人として大切にし、協力をお願いする活動に、大きな力をそそいでいます。

 「機関紙中心の党活動」という方針を、参議院選挙にむけた生きた活動のなかで具体化する必要があります。選挙戦そのものを、「しんぶん赤旗」をよく読み、読者を増やし、読者とともにたたかう、機関紙中心のたたかいにしていくなかで、総選挙時比130%という目標に正面から挑戦し、それをやりとげ、選挙戦でかかげた得票目標、議席獲得の目標達成をかちとっていくことが強くもとめられています。

「五十万の党」をめざす党員拡大、若い世代の結集をすすめる

 つぎに党員拡大についてのべます。

 読者拡大とともに、参議院選挙にむけて、「五十万の党」をめざす党員拡大に、新たな意気ごみでとりくむことが必要です。前大会では、「二〇〇五年までに五十万の党をきずく」という目標を決定していますが、これをやりきるには今年と来年で約十万人の党員を増やすことが必要となります。そのことを念頭において、参議院選挙までにどれだけの党員を増やすかの目標をたて、その目標をやりきり、新しく党に迎え入れた党員とともにこの歴史的政治戦をたたかうことに、おおいに力をつくします。

 読者拡大に大きな力をそそぐという方針は、党員拡大を後まわしにしてよいということでは、けっしてありません。読者拡大は、党と国民とのむすびつきを強める仕事です。党員拡大は、党そのものの力を大きくする仕事です。この両者はそれぞれ独自の位置づけと推進が必要な仕事です。また、読者と党員の拡大は、この両方を推進するという見地にたってこそ、相乗的な推進が可能になります。

 「党建設の根幹」は党員拡大であるという前大会の決定を、あらためてしっかり据えたとりくみをすすめます。そのさい、継続的に党員拡大を前進させるためには、新しい同志の学習を援助し、日常的な党活動に参加してもらうところまで、党が責任をもつことが不可欠です。「党員を増やし、学習を援助し、支部活動に結集する」――この全体を「党建設の根幹」としての党員拡大のとりくみに位置づけ、前進をはかりたいと思います。

 このとりくみのなかで、若い世代のなかでの党員拡大を重視し、新鮮な活力を党に迎え入れながら選挙をたたかうとともに、中・長期的展望にたって新しい世代への継承を着実にすすめていく仕事を前進の軌道にのせることが重要であります。

 若い世代の運動が、平和、雇用などの問題で、多面的な広がりをみせていることは、大きな希望です。この流れを、どうやって若い世代のなかでの強大な党建設につなげていくか。党中央はこの間、すすんだとりくみをおこなっている党機関から、その「教訓を学ぶ会」をもちました。そこで共通していたのは、一言でいえば、この課題を党と日本改革の事業の死活的な未来がかかった課題として位置づけ、「党の総力をあげて」という提起を言葉だけにせず、実践につらぬき前進をかちとっていることでありました。

 北海道・上川地区委員会は、三人専従の小さな地区ですが、この課題を、地区党の未来がかかった問題と位置づけ、過疎地で暮らす青年の悩みにこたえた活動をおこない、毎月地区党あげた援助で青年学習会を開くなどの努力を重ね、前大会以降、党員現勢の7%をこえる青年党員を拡大しています。「教訓を学ぶ会」では、「地区委員長は、頭の七割は青年対策がしめているほど心血を注いでいる。携帯電話には青年七十人分のメールアドレスが登録されている」との報告がされましたが、ここにも「総力をあげて」というこの地区委員会の意気込みが示されていると思いました。

 京都府委員会からの報告では、府常任委員会が、総合計画の太い柱の一つとして戦略的に位置づけ、ほとんど欠かさず毎週の常任委員会で討議し、選挙戦でも、大衆運動でも、党建設でも、若い世代を位置づけて、そのエネルギーを結集し、発揮するとりくみを強めているとのことでした。総選挙では、どの小選挙区でも青年・学生が前面にでた活躍が目立ち、党全体を活性化する大きな力にもなっているということでした。

 「党の総力をあげて」を、掛け声に終わらせず、文字どおり実践しきれば、北海道・上川地区のように農村部の小さな地区でも、京都府委員会のような都市部に大きな力をもつ党でも、前進の道を開くことができることを、私たちは「教訓を学ぶ会」から学ぶことができました。

 若い世代のなかでの活動を、文字どおり党の総力をかたむけて強め、参議院選挙を新しく迎えた若い力とともにたたかい、われわれの事業を将来にわたって発展的に継承するために、力をつくそうではありませんか。(拍手)

党の質的強化――全党員が参加する活力にあふれた党をきずくために

 参議院選挙での目標達成のためには、党の量的拡大とともに質的強化――全党員が参加する活力あふれた党をきずくとりくみを、いわば「車の両輪」と位置づけて推進することが、強くもとめられます。

 総選挙で多くの党員は、財界戦略に正面からたちむかう戦闘的気概を発揮し、さまざまな形で党の勝利のために奮闘しました。しかし、このたたかいにおいても、残念ながら活動に参加できなかった党員を残したことも事実であります。この現状をどう打開し、文字どおりすべての党員が、その条件や得手を生かしつつ党活動に参加する、活力にあふれた党をどうつくるかは、大きな課題であります。そのために何が大切でしょうか。

国民の要求実現のために献身する

 第一に強調したいのは、やはり国民の要求実現のために献身するということであります。これはわが党の存在意義・立党の原点であるとともに、党の政治的活力の源泉ともなるものです。

 大会決議案の全体をつらぬく精神は、あらゆる分野でわが党が「たたかいの組織者」として先駆的役割をはたそう、また社会的道義の面でも危機を打開する国民的な対話と運動にとりくもう、というたたかいと運動のよびかけにありました。この提起を、党機関も支部も、積極的に位置づけて具体化し、とりくみを発展させることを、強くよびかけたいと思います。

 そのさい、大会決議案が、「党員がとりくんでいる、どんな小さな要求のためのとりくみにも光をあて、それを励まし、そのとりくみが前進するように援助する」とのべていることは、たいへんに重要であります。この見地にたてば、日常的な党活動に参加していないように見える党員も、国民との関係で重要な仕事をしていることが見えてきます。そこに光をあて、それをくみつくす党活動にしてこそ、みんなが参加する活力ある党をつくることができます。

理論的・政治的確信を全党のものにする

 第二は、理論的・政治的確信を全党のものにすることであります。

 情勢は山あり谷ありであります。選挙でも、前進するときも、後退するときもあります。しかし、どんな激動のもとでも、われわれの事業の政治的・理論的立脚点にたいする確信、綱領的確信があれば、前途を切り開く勇気と活力はうまれてきます。この大会で採択される新綱領を、文字どおりすべての党員が深く身につけ、その内容を広く国民に語っていくことを、この大会期の一大事業としてとりくむことを、提案したいと思います。(拍手)

 一九七〇年代前半に党が躍進をきずいた時期には、たとえば第十一回党大会決定の読了率は78%にまで達しています。そのときの記録をみますと、全党員に決定を届けつくすこと、機関や支部の幹部がまず読みその中心点をおおいに語ること、情勢の発展とむすびつけた支部討論を豊かに展開することなど、党の決定を全党員のものにするために、なみなみならぬ努力と執念を燃やしたとりくみをおこなっていたことが、伝わってきます。この時期の党の躍進は、こうした努力にも支えられたものだったと思います。

 新綱領を決めるこの大会を契機に、この間、大会決定の読了が三割から四割という水準にとどまってきた現状を大きく打開しようではありませんか。新綱領と大会決議を文字どおり全党員のものとし、これを力に参議院選挙をたたかうとともに、二十一世紀をたたかう党の理論的・政治的土台をきずく仕事に、大きな情熱を傾けてとりくもうではありませんか。(拍手)

「支部が主役」の党づくりにとりくみつつ、選挙戦をたたかう

 第三は、「支部が主役」の党づくり、選挙戦にとりくむということであります。

 前回大会で改定した党規約第四十条は、全国のすすんだ支部の経験を総括して、「支部の任務」を六項目にわたって規定しています。なかでも第二項の「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」は、「支部の任務」の中心をなす重要な規定であります。

 参議院選挙にむけて、この規約の精神にたって、その職場、地域、学園で、総選挙比133%以上の得票を獲得することを絶対の責任にして、得票目標・支持拡大目標を決めるとともに、選挙活動、要求活動、党建設をすすめる「政策と計画」をみんなでつくりあげ、その実践をとおしてみんなが参加する活力ある党づくりをすすめることを、強くよびかけたいと思います。

 そのさい「週一回の支部会議」を軸にした支部活動をきずくことに力をそそぐことを、あらためて強調したいと思います。支部会議の内容を、党に結集した同志が、互いの条件、得手を生かし、困難を力あわせて打開し、成長していく場に、改善していく努力が大切であります。みんなが参加したくなる支部会議、参加すれば元気がでるような支部会議へと内容への改善をはかりながら、「週一回の支部会議」を全党に定着させるためにひきつづき力をつくそうではありませんか。日本共産党員は、政治的・理論的確信とともに、人間的連帯があってこそ、さまざまな困難をのりこえて奮闘する力がうまれてきます。支部会議をその要となる場にしていく必要があります。

 「週一回の支部会議」を軸にした「支部が主役」の活動を全党のものとするためには、党機関は個々の支部がかかえている困難や実情をつかんだ援助をおこなうとともに、党支部のなかに支部長だけでなく複数の支部指導部をつくることに、特段の努力をはらう必要があります。この間、安定的に活動を前進させている党支部の活動をみますと、複数の支部指導部がつくられ、そこでさまざまな集団の知恵や力が発揮され、支部活動を前進させる推進力となっていることが共通しています。そういう支部に前進をかちとっていけるように、党機関の親身の援助と指導が大切であります。

党機関活動の改善と発展をすすめる

 第四は、党機関活動の改善と発展をすすめることであります。

 決議案と報告で提起した諸課題をやりきり、とくに直面する参議院選挙で勝利をかちとるためには、地区、都道府県から、中央にいたる党機関の活動の改善と発展がつよくもとめられます。

 すなわち、各級党機関が、選挙闘争でも、「たたかいの組織者」でも、党建設でも、国民に直接働きかけ草の根でのむすびつきを深める活動にみずからとりくみ、そこでつかんだ国民の要求、気分、関心、たたかいの経験を、党活動の指導全体に生かすという機関活動へと脱皮、発展していくことがもとめられています。

 各級党機関が、あらゆる分野でそういう活動を発展させ、党支部と苦楽をともにしながら前途を切り開くという活動姿勢をつらぬいてこそ、党支部にたいする指導と援助も、本当に心が通いあうものとなり、党の新たな躍進への道を開くことができるでしょう。

この一大事業に、全党が腹をくくって挑戦しよう

 以上、量と質の両面での党建設の方針についての提案をのべました。総選挙時比130%の読者拡大、「五十万の党」をめざす党員拡大――強大な党建設なくして、参議院選挙での目標達成はありません。これは全党の大奮闘と、そして新しい探求を必要とする一大事業ですが、それにかわる安易な道はほかにありません。ですから、この課題に全党が腹をくくって挑戦しようではありませんか。(拍手)

 わが党は、一九六一年の第八回党大会で綱領路線を確定していらい、六〇年代、七〇年代をつうじて党建設でも飛躍的な前進をかちとり、それが国政選挙での前進・躍進を準備する最大の力となりました。新しい綱領を決めるこの歴史的大会を新たな出発点として、どんな激動の情勢のもとでも、選挙で勝てる強く大きな党を草の根からつくりあげる仕事に、新たな意気込みでとりくもうではありませんか。(拍手)

 代議員、評議員のみなさんの積極的な討論をお願いして、大会決議案についての中央委員会報告を終わるものであります。(拍手)

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