しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年9月27日(金)

きょうの潮流

 どんな生き方がひろがっていたであろうか。連れ合いや家族との穏やかな日々、元プロボクサーの経験を生かしたやりがい…。失った歳月の長さと重さを思わずにはいられません▼30歳で一家4人を殺害した罪で逮捕されてから58年、死刑確定から44年、ようやく袴田巌さんに無罪判決が出ました。支援者らは喜びに包まれる一方で、ひとりの人生が丸ごと奪われた怒りを口々に▼判決は捜査機関による証拠のねつ造があったと指摘。非人道的な取り調べで強要した自白調書や、犯行時の着衣とされた5点の衣類などを証拠ねつ造と認定しました。警察や検察、司法のあり方まで断罪するように▼死刑執行の恐怖、ふるえるほどの悔しさと絶望は巌さんの心と体をむしばみ、釈放から10年となる今も意思の疎通が難しい状態が続きます。こうしたえん罪がなぜ後を絶たないのか▼「今でも大勢の方が苦しんでいる。巌だけが助かればいいという問題ではない」。裁判をたたかってきた姉の袴田ひで子さんは再審法の改正を訴えます。巌さんの再審と釈放を認めた元裁判官も「このままではえん罪の被害者は救われない」と、証拠不開示や開かずの扉といわれる再審制度の不備を▼獄中にとらわれていたとき、巌さんは手紙にこうつづりました。「裁判で無実であったことの事実が認められても、すでにその時は再審請求を度重ねたあとであり、人生を純粋にやり直すにはあまりにも遅すぎた」。権力に翻弄(ほんろう)され、もう取り戻せない生き方を思いながら。


pageup