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2023年12月5日(火)

きょうの潮流

 「加害の見える海」があると聞いて、訪ねました。山口県宇部市の床波漁港付近です▼遠浅の海に二つの赤茶けた大きな筒が見えます。戦前、海底炭鉱だった長生(ちょうせい)炭鉱の排気・排水筒です▼海底地下の層にある石炭を採炭する作業は、特別に危険です。日本人の多くは敬遠し、朝鮮半島から連れてきた労働者に強制労働させました。周囲3メートルほどの板と鉄条網を張りめぐらした“小屋”に押し込まれ警備も厳しく外出もできない生活だったといいます▼悲劇の水没事故は、石炭しかエネルギー資源のなかった日本が、真珠湾攻撃で対米英戦に突入した2カ月後の1942年2月3日に起きました。採炭の“大出し”を命じた日で、海底坑道の天井を支えていた炭柱まで取り払ったため天井が崩壊したのです。136人の朝鮮人労働者と47人の日本人が犠牲になりました。遺骨は、いまも海の底です▼戦中や戦後も長い間闇に葬られていた、この事実。「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」など市民の活動によって日本人犠牲者と共に「強制連行 韓国・朝鮮人犠牲者」の追悼碑が2013年に建てられました。韓国から遺族代表を招いて、追悼集会も開いてきました▼国策・石炭増産と植民地支配の犠牲になった遺骨の発掘と家族への返還は、日本政府の逃れられない責務です。追悼碑文は、こう結んでいます。「悲劇を生んだ日本の歴史を反省し、再び他民族を踏みつけにするような暴虐な権力の出現を許さないために、力の限り尽くすことを誓う」


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