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2023年1月29日(日)

きょうの潮流

 「新聞やニュースを見るたびに、戦争が忍び寄ってきている気がします」。エッセイストの海老名香葉子さん(89)は、こう言って顔を曇らせました。29日号の日曜版にインタビューを掲載。戦災孤児としての痛切な思いを語っています▼16人ほどの親族を戦争で失いました。その一人に旧満州に渡った10歳年上のいとこ「お咲ちゃん」がいます。敗戦時の混乱期、弟の章吾さんと食料調達に行った帰り、ソ連兵に襲われます。妊娠し堕胎させられ、衰弱した挙げ句、中国からの引き揚げ船上で死亡しました。戦時性暴力の犠牲者です▼海老名さんが一連の出来事を知ったのは、戦後46年たってからでした。中国への旅の中で、章吾さんが初めて打ち明けてくれたのです。「襲われた時、『姉さんの足が天を突いていたんだ。僕に力があったら』と言って章吾さんは泣いていました」。そう語る海老名さんも泣いていました▼海老名さんは、「抑止力」という言葉のごまかしを鋭く見抜きます。「この抑止力が戦争のもとじゃありませんか。抑止力を使ったらどうなりますの。相手国を脅すことで戦争が始まるじゃないですか」▼テレビは連日、枕詞(ことば)のようにロシア・中国の脅威を語り、抑止力の強化を促します。そのため2113億円かけて米国から購入するのは巡航ミサイル「トマホーク」。まさに“戦争のもと”です▼戦争は怖くて悲しい。海老名さんは、戦争だけはなきように、との思いを込めた歌を制作。その歌が今、独り歩きを始めています。


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