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2022年6月30日(木)

主張

日本の平和と安全

「敵基地攻撃」こそ最大の危険

 参院選で自民党は、歴代政権が「防衛戦略」の基本としてきた「専守防衛」を事実上放棄し、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を保有することや、現在の軍事費を2倍以上にする「GDP(国内総生産)比2%以上」を念頭にした大幅増額など大軍拡を主張しています。最大の口実は、ロシアによるウクライナ侵略です。しかし、日本がいま直面している実際の危険は、どこかの国から直接侵略を受けることではありません。

陸自元幹部の現実的想定

 「日本の世論は現在の防衛力に不安を感じています。大半はロシアによるウクライナ侵攻を受け、『日本も中国や北朝鮮から攻撃されるかもしれない』という不安だと思います。でも、世界の安全保障の専門家は『中国や北朝鮮がいきなり日本だけを攻撃することは考えにくい』と考えています」

 元陸上自衛隊東北方面総監(元陸将)の松村五郎氏の指摘です(朝日新聞デジタル24日付)。安全保障専門家は中国や北朝鮮が日本だけを突然攻撃する事態は想定し難いと見ていると言うのです。

 では、リアルに見ればどうか。松村氏は「中国が台湾に侵攻する際、沖縄にある在日米軍基地を攻撃する可能性はあります。北朝鮮も半島有事の際、在日米軍基地を攻撃するかもしれません」と述べています。日本そのものではなく、沖縄など日本にある米軍基地が攻撃対象になるということです。

 また、自民党が保有を公約している「敵基地攻撃能力」に関し、「日本が中国を攻撃できる能力を持った場合、中国は台湾有事で、日本が反撃能力を使う前提で対応するでしょう。米国が台湾有事に介入して中国本土を攻撃すれば、日本も使わざるを得なくなる可能性があります」と語っています。「米国が介入すれば、米国を対象に(安保法制に基づき集団的自衛権を発動できる)存立危機事態を宣言することはできます」というのが理由です。

 元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)の柳澤協二氏らが14日に発表した「新外交イニシアティブ(ND)」の政策提言は、「敵基地攻撃能力」の保有や軍事費の倍増について「台湾有事の際、日本が米国と共に戦う以外の選択肢を失うことになりかねない」と警告しています。「(台湾有事で)洋上の米艦艇が攻撃される事態で、日本が集団的自衛権を行使してミサイル基地に反撃を加えるならば、それは中国本土への攻撃であり、本格的な戦争を呼び込むことになる」と強調しています。

 日本が攻撃されていないのに、米国が海外で戦争を始めれば、集団的自衛権の行使を認めた安保法制を発動し、自衛隊が米軍と一体となって、相手国を「敵基地攻撃能力」を使って攻撃する。そうなれば、相手国は大規模な報復に出て、日本は戦火に包まれる―。ここに日本の平和と安全が根底から覆される現実的危険があります。

戦争が始まる前に止める

 ウクライナの事態から引き出すべき教訓は、戦争が始まる前にそれを止めるということです。そのためには、力による対決に陥る軍事力や軍事同盟の強化ではなく、地域のすべての国を包み込んだ平和の枠組みをつくることが重要です。「力対力」ではなく、「外交による平和を」の意思を参院選で示すことが必要です。


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