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2022年1月13日(木)

きょうの潮流

 怖がりだった少年を変えたのはトランポリンでした。11歳の誕生日での両親の贈り物。自宅の体操場で跳びはねるうち「何も怖くなくなった」。ここで培った勇気や空中感覚が、世界の頂を手にする力になりました▼体操の個人総合で世界選手権6連覇、五輪を含め8年連続で世界一の座を守った人。内村航平選手(33)が引退を表明しました▼50回を数える世界選手権の歴史の中で連覇は、内村選手以外に1人いるだけ。しかも2連覇止まり。高いレベルで6種目の力を維持することがいかに困難か、この一事でみてとれます▼求道者のように体操を究め続けてきました。2011年、3連覇がかかる世界選手権のエピソードがあります。大会前、足首を痛めまともに練習できずに本番に臨みました。ゆかの演技で、ふくらはぎをけいれんさせつつ演じきる。そこで見えてきたのが、無駄な力を使わず最小限の力で演技すること。「新しい境地に踏み込んだ」と語ったと▼当時、現役だった塚原直也さん(現朝日生命体操クラブ総監督)は、「逆境をチャンスに変えちゃう精神、とことん考える力が人並み外れている」と驚きを隠しませんでした▼常につま先まで神経を研ぎ澄ます、美しい体操を目指し、公言してきました。「優雅さ、正確さ、そして謙虚さのレベルにおいて、比類なき卓越した水準を築き上げた」と外電は評します。王者となってもおごることなく、自分と向き合ってきた。その生きざまが、「美しい体操」を深く貫いています。


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