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2021年4月17日(土)

主張

今夏の東京五輪

「スパッとやめる」決断は今だ

 自民党の二階俊博幹事長が今夏の東京五輪について「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」と発言しました。菅義偉政権の与党幹部が五輪中止の可能性に触れたのは初めてで、海外メディアも大きく伝えました。新型コロナウイルスの世界的な感染が拡大する中で、東京五輪の中止・再延期の声は国内外で広がっています。開幕(7月23日)まで100日を切りました。いつまでも手をこまねいている場合ではありません。開催の中止を決断するのは、まさに今です。

中止・再延期は内外の声

 二階氏が東京五輪の中止も選択肢と表明したのは、15日のテレビ番組の収録です。「五輪でたくさん病気をまん延させると、何のための五輪か分からない」とも語りました。発言を多くのメディアが速報すると「自民党として安全、安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはない」「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で発言した」などと説明する書面を公表しました。

 五輪実施を最重要課題にしている菅政権の有力者が中止に言及したことは重大な動きです。首相は二階氏の発言後も「開催に向け感染防止に万全を尽くしたい。これは変わらない」と従来の立場を繰り返します。しかし、開催ありきの方針が大きな矛盾に陥っていることは隠しようがありません。

 新規感染者は、大阪府で1000人を超える日が連続するなど悪化に歯止めがかかりません。地域を指定し感染拡大に対処する「まん延防止等重点措置」を適用する対象を10都府県に広げる事態となりました。ワクチン接種はいまだ医療従事者にも行きわたらず、高齢者も緒についたばかりです。

 急速な感染の広がりは、変異株への置き換わりの影響が指摘されています。各国の感染状況も予断を許しません。海外から選手や役員ら数万人も日本に迎え入れる条件は到底ありません。

 五輪組織委員会は、検査の強化をいいますが、期間中に必要と見込む1万人の医療従事者の確保のめどはたっていません。このまま開催に突き進めば、東京五輪が感染爆発の契機になりかねません。

 菅政権が感染封じ込めに向けて抜本対策をとらない一方、聖火リレーの続行など既定方針通りの開催に固執していることに、国内外で批判は高まっています。

 イギリス医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは14日付論文で「科学的道徳的要請を無視して、国内の政治的経済的目的で東京五輪を開催することは世界の健康と人間の安全保障に対する日本の公約と矛盾する」と指摘しました。米紙ニューヨーク・タイムズをはじめ英、仏、独の有力紙も相次いで開催の「再考」を求める記事を掲載しています。日本の世論も72%が中止・再延期を求めています(共同通信調査、「東京」13日付)。国内外から湧き上がる声に背を向けてはなりません。

コロナ対策に力の集中を

 菅政権は一刻も早く中止を決めて、国際オリンピック委員会をはじめ関係機関と話し合いに入る必要があります。今夏の五輪開催を断念し、コロナの拡大を抑え込むためにあらゆる力を集中することが政府の責任です。


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