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2021年3月11日(木)

きょうの潮流

 住宅地の一角に木碑が建っています。正面に刻まれた「大きな地震が来たら戻らず高台へ」の文字。ここは、岩手・大槌(おおつち)町の安渡(あんど)地区。あの日の津波で200人以上が犠牲になった場所です▼8年前に地元の高校生が発案し、住民の協力で建立。震災の風化を防ぎ、教訓を伝え続けるため、4年ごとに建て替えられてきました。お披露目された新しい木碑の側面には「未来 帰らぬ人の想(おも)いを背負い 繋(つな)いで生きていく」▼東日本大震災から10年。津波に襲われ、がれきと化した三陸沿岸部は様変わりしました。土地は造成され建物は新設され、道路や鉄道が開通。コンクリートの巨大な防潮堤がそびえ立ちます。進むまちづくり。しかし、ひとの復興はいまだ寒々しい▼どこも人口減や空き地対策、被災者の心のケアが深刻な課題に。コロナの追い打ちもあり、飲食や商店を営む人たちの口からはため息ばかり。「先行きも見えず、不安しかない」▼震災時からカメラを通して大槌の移り変わりを見てきた中村(旧姓=菊池)公男さんは「地域の支え合いは残っている」といいます。だからこそ、自治体は生活者や起業する若者たちの要望に耳を傾け、国はそれを支援に生かすべきだと▼NHKのアンケート調査ではいまの復興の姿を「思い描いていたより悪い」と答えた被災者が半数以上も。進まない生業(なりわい)や地域の再生。被災地の現状は地方やひとに冷たい「日本政治の縮図」のようだという中村さん。そこを変えてこそ未来へとつながるはずだと。


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