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2020年11月18日(水)

主張

75歳以上2割負担

長生きの土台を掘り崩すのか

 菅義偉政権が、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を2倍化する動きを加速させています。現在の「原則1割」を、「一定所得以上は2割」に上げる案を軸に政府内で検討が進んでいます。負担増が実行されれば、病気やケガをするリスクの高い75歳以上の人が経済的理由で受診を我慢し、病状を悪化させることになりかねません。新型コロナウイルス感染が「第3波」に突入する中、高齢者が医療にかかることを抑え込む負担計画をなぜ進めるのか。国民に「自助=自己責任」を迫る菅政権の冷たいやり方が際立つばかりです。

年3・4万円増の推計も

 75歳以上の窓口負担増計画は昨年12月、安倍晋三前政権が決定した「全世代型社会保障検討会議」中間報告に基づくものです。いわゆる「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が75歳になり始める2022年度初めからの実施を目指し、年内に結論を出すとしています。社会保障費削減を推進するため、公的医療費を無理やり抑え込もうという狙いです。

 政府内の議論では、経団連は原則2割負担を強く主張しています。財務省は約1815万人の75歳以上の人のうち、対象を「可能な限り広範囲」にすることを提起しています。すでに「現役並み所得」は3割負担です。厚生労働省は、住民税非課税世帯を除く約945万人(75歳以上全体の52%)を2割負担にした場合、1人当たり年平均3万4千円の負担増になる推計を公表しました。公的年金が抑制され収入が増えない高齢者にとって、あまりに大きな打撃です。

 75歳以上に2割負担を導入することは、08年に発足した後期高齢者医療制度の大原則を覆すものです。制度開始後、当時の麻生太郎首相(現・財務相)は、原則1割負担について「高齢者が心配なく医療を受けられる仕組み」だと国会で説明し、「ぜひ維持したい」と表明しました。国民への約束をほごにする姿勢自体が問われます。

 財務省などは、まるで75歳以上の窓口負担が「軽い」ように描きます。しかし、年収に対する窓口負担割合でみると、75歳以上は40~50代の2~6倍近い負担をしているのが実態です。75歳以上は収入が少ないのに、年齢が進むにつれて複数の診療科や医療機関にかからざるを得ず、受診回数も増えるためです。このような高齢者にさらに重荷を強いることは、必要な医療を受けることを妨げます。

 高齢者の負担は医療窓口だけではありません。介護保険でもすでに利用料の2割負担が一定所得以上で行われています。医療や介護の保険料も増加の一途です。介護保険の2割負担開始後、介護サービスを中止した人が少なくありません。医療でも病院に通うのをあきらめる人が続出しかねません。早期発見・治療の遅れで重症化すれば、逆に医療費は膨らみます。負担増に道理はありません。

コロナに追い打ちやめよ

 コロナ禍での受診控えで高齢者の健康への影響が懸念される中での原則2割負担化には、「さらなる受診控えを生じさせかねない政策をとり、高齢者に追い打ちをかけるべきでない」(日本医師会)と批判が相次いでいます。コロナから高齢者をはじめ国民の命と健康を守る体制の強化がなにより急がれる時に、それに逆行する窓口負担増はやめるべきです。


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