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2020年10月26日(月)

きょうの潮流

 作家の井上ひさしさんは夜型でした。夜食を自分でつくれるように、料理研究家のユリ夫人が簡単なレシピをいくつか教えたそうです。雑誌『東京人』の11月号につづっていました▼ひさしさんが「すっかり気に入りしょっちゅう作っていた」という一品をつくってみました。ニンニクとアンチョビをオリーブ油で炒め、ゆでたスパゲティとあえるだけ。アンチョビとは塩漬けカタクチイワシの油漬け。おいしいけれど、少ししょっぱい…▼ユリさんが教えてくれます。「ひさしさんはしょっぱいものが大好き。それに麺類も。日本のコメを守れと論陣を張っているのに、『おれスパゲティがあれば、コメなくてもいいかなあ』なんておどけていたこともあります」▼没後10年を記念して東京の世田谷文学館で「井上ひさし展」が開催中です。発見だったのはイタリアの芸術生活都市を訪ね、思索を深めた『ボローニャ紀行』の充実ぶりです。「日常の中に楽しみを、そして人生の目的を見つけること」「困難にぶつかったら過去を勉強しなさい。未来は過去の中にあるから」など、珠玉の言葉が並びます▼レジスタンスで2000人が犠牲になり、戦後、市民運動の力で文化による街の再生を果たしたボローニャ。でも実現の道のりは平坦(へいたん)ではありませんでした▼ユリさんはいいます。「ひさしさんはよくいっていました。市民運動でも何でも負けてもいいんだ。その先につながる負け方をすればいいんだ、と」。なるほど千里の道も一歩からです。


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