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2020年7月2日(木)

コロナ下 安倍政権の新方針

社会保障改悪に無反省

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 新たな「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)の骨子が6月22日に発表されるなど、安倍政権の今後の基本方向が明らかになりつつあります。新型コロナウイルス感染症で、これまでの社会保障改悪路線の過ちが鮮明になるなか、政府や財界人からは無反省な発言が相次いで飛び出しています。(佐久間亮、前田美咲、藤原直)

実態見ず“もっと削れ”

 新型コロナで明らかになったのは日本の医療・介護体制の脆弱(ぜいじゃく)ぶりでした。自公政権で骨太方針を策定し、社会保障改悪を先導してきた経済財政諮問会議の責任が厳しく問われています。

 ところが、22日の同会議で新浪剛史サントリーホールディングス社長は、これまでの骨太方針や改革工程表について「後戻りさせてはいけない」と強調。社会保障の課題は「なんといってもデジタル化の遅れ」と述べ、人手や物資の不足で疲弊する現場の実態からかけ離れた認識を示しました。19年度の改革工程表には、市区町村の国保財政への法定外繰り入れの削減・廃止や要介護1、2の介護保険給付外しなど重大な改悪案が盛り込まれています。

 民間議員からは政府が病院再編・病床削減につなげようとしている地域医療構想の促進を求める声が相次ぎ、加藤勝信厚労相は「議論を進める」と応じました。

 政府の全世代型社会保障検討会議第2次中間報告(25日)は、新技術を使えば少ない職員で介護を提供できるとし、人員配置基準引き下げをにじませました。

不安定な働き方を拡大

 新型コロナを口実に、さらなる労働法制の緩和を求める声も上がっています。22日の経済財政諮問会議で経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は、コロナで広がった在宅勤務・テレワークについて、「(現行制度の)時間管理の厳密さに対して、大変やりにくさを感じている」と指摘。“残業代ゼロ制度”を導入した19年の「働き方改革」に続く、「働き方改革フェーズII」の推進を求めました。

 同氏ら民間議員4人は連名で、「テレワークの活用加速など、時間を基準とした働き方から成果・職務を基準とした働き方への転換等による『働き方改革2・0』を推進」「成果評価型人事管理を推進すべき」とする提言を同会議に提出しました。

 コロナ危機で発注側に対する立場の弱さ、労働者としての権利の無さが浮き彫りになったフリーランスについても、全世代型社会保障検討会議の第2次中間報告で「適正な拡大」を明記。雇用によらない不安定な働き方をいっそう広げようとしています。

個人情報を大量に収集

 医療や介護にかかわる個人情報を大量に収集し、民間企業が活用する契機にする動きも出ています。

 22日の経済財政諮問会議で新浪氏は、一刻も早く医療や介護情報などをデジタル化し「民間や地方自治体の保有するデータをフル活用」すべきだと主張。民間企業にも共有しようとしている情報には、個人の健診情報や診療履歴まで含まれます。

 高市早苗総務相はマイナンバーと預金口座とのひも付けについて今年中に結論を得ると表明。新浪氏は、マイナンバーで所得を把握し、公的給付と連動させる考えを示しました。

 政府の規制改革推進会議(議長・小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長)は同日、個人情報の保護の観点から情報漏洩(ろうえい)のリスクを「過大に評価する」と「データの現実の利活用を極めて難しくする」との意見書を発表。個人情報の保護よりデータ活用を優先させる姿勢を示しました。


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