日本共産党

2004年1月12日(月)「しんぶん赤旗」

児童虐待防止へ対策 厚労省

“家庭再生”に新専門職員


 親などから虐待を受けた子どもが児童養護施設に入所するケースが急増しています。厚生労働省は二〇〇四度予算案で、児童虐待対策として、〇三年度の三倍超の百六十五億七千万円を計上。児童養護施設などで、子どもを個別にケアする職員の拡充や、「家庭支援専門相談員」の新たな配置を盛り込みました。


04年度から拡大

グラフ

 「家庭支援専門相談員」について、厚労省は、総合的な家族調整を担う「ファミリーソーシャルワーカー」と説明しています。虐待をおこなった親にたいする適切な支援・指導やカウンセリングなどで、虐待された子どもが再び家庭に戻れるよう後押しし、施設退所後のアフターケアも担当するとしています。

 これを〇四年度から、全国の児童養護施設(五百五十二カ所)に加え、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設のすべてに、常勤職員を新たに一人配置する方針です。

 虐待を受けた子どもと個別に対応する職員は、現在、定員五十人以上の児童養護施設でなければ配置されません。〇四年度からは全施設に拡大し、母子生活支援施設などにも置くとしています。

 また、少人数の家庭的な環境で養育する体制を充実させるため、一軒家などを借りて六人程度で運営する小規模児童養護施設を、現在の四十カ所から百カ所に増設。既存の児童養護施設についても、全施設で少なくとも一単位は小規模グループによるケアができるよう職員を配置するとしています。


子の命守る法改善を

日本共産党 積極的に提案

 解説 親などによる子どもへの虐待の相談・通報は急増しており、幼い子どもが虐待を受け、死にいたるまでの痛ましい事件は最近も後をたちません。

 全国の児童相談所に寄せられた二〇〇二年度の相談(処理件数)は約二万四千件。一九九九年度からの三年間で二倍以上に増加しています。

 子どもへの虐待防止と早期保護を目的に二〇〇〇年五月、児童虐待防止法が超党派の議員立法として全会一致で成立、十一月に施行されました。

 日本共産党は、子どもの命と人権を真剣に守る党として、法案の作成段階から積極的に意見をのべ、人員の確保や予算の増額など対応する施策の充実を提案。そのなかで同法一条の「目的」に、「児童虐待が児童の心身の成長および人格の形成に重大な影響を与える」という、子どもの権利条約の視点を盛り込ませるなどしてきました。

 しかし法施行後も、第一線で対応する児童相談所の増設や専門職員の増員はわずかで、児童養護施設の最低基準の改善もすすんでいません。政府にたいし、施設の体制整備と職員配置の改善を求める現場の声は切実。

 虐待にいたる手前で対応することは、とりわけ必要です。その点で、虐待の発生を予防したり、虐待を受けた子どもを早期に発見・保護するうえで大きな役割を果たしているのが、保育所や保健所です。ところが、いま各地で、保育所の定員を超える詰めこみ保育や、営利企業の参入、保健所の統廃合がすすめられています。

 ことしは、児童虐待防止法の施行後三年の見直し期です。施設整備が十分なのか、深刻な実態を解決するために職員が十分確保されているのか、政府は抜本的な改善をすすめるべきです。

 (江刺尚子記者)


 児童養護施設 親が病気や死亡、行方不明になるなどやむをえない事情で、家庭での生活が困難になった満一歳から十八歳ぐらいの子どもたちが生活している施設。ここ数年、親から虐待を受けた子どもの入所が増加している。


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