2004年1月8日(木)「しんぶん赤旗」
徳山ダムの事業認定取り消しと岐阜県の同ダム事業費用負担の一部について公金支出差し止めを求める裁判で、岐阜地裁が昨年末、原告側の請求を「棄却」「却下」する判決をだしましたが、原告団は七日、控訴しました。
徳山ダムは、利水、治水、発電等多目的ダム。原告側は「徳山ダムの洪水調整による洪水防御効果は限られている」「現在の、電力需給事情からみて、発電目的は必要性がまったくない」「徳山ダムの建設は、自然環境、とくに生態系の頂点にたつイヌワシ・クマタカの生存に非常な打撃を与える。自然への打撃を回避するには、建設中止以外にない」と主張。水余りの実態を明らかにし、「徳山ダムは、水資源開発公団(当時)が新規利水のために水資源開発基本計画に基づいて建設する水資源開発施設であり、新規利水の必要性がないならば、事業は必要性が認められない」とのべています。裁判は、利水問題を最大の争点として争われてきました。原告側は、そのために、詳細で科学的な資料を提出してきました。
昨年、水資源機構が唐突に、徳山ダムの事業費四割増の追加負担を発表。これを機会に、改めて利水者(愛知県、岐阜県、名古屋市)のなかから、徳山ダム開発水の容量を減らしたい意向が示されるなど、現実には、新規利水がまったく必要ないことが明白となってきています。
判決は、「取り消し訴訟において適法性を判断する基準時は、建設大臣が事業認定をしたとき(一九九八年十二月二十四日)」とし、現実から目をそむけたものです。しかし、「現時点においては」「早急に水需要予測を見直し、最終的な費用負担者である住民の立場に立って、水余りや費用負担増大等の問題点の解決に真摯(しんし)に対処する」ことを水資源機構に求めざるを得ませんでした。
判決について、原告団は「ほとんど被告の主張を無批判に肯定・引用しており、司法の行政追従姿勢があらわになった」とする声明を発表。追加負担増に岐阜県をのぞく関係県市、発電関係が強い難色を示している一方、工業用水も水道水も需要増は見込まれず、長良川河口堰(ぜき)など既開発の大量の「未利用」水すら使うあてがないことが明らかになっているとし、「水資源開発促進法に基づく水資源開発施設である徳山ダム事業は、その根拠を失っている」と指摘しています。