2004年1月1日(木)「しんぶん赤旗」
三菱自工製大型車が相次いで起こしたタイヤ脱落事故は一九九三―九六年製の車に集中していることが本紙の調べで分かりました。三菱側は事故原因を「整備不良」としてきましたが、設計・製造上の欠陥の疑いが強まってきました。
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同事故は、車輪と車軸をつなぐ部品「ハブ」が破損して起きるもの。同社は八三年から製造された「ザ・グレート」シリーズで九二年来、五十六件の破損が起きていたとしています。うち四十三件(78%)が九三―九六年製でした。
この件数には含まれていない二〇〇二年一月の横浜市瀬谷区で脱落したタイヤが母子を直撃した死傷事故も、同シリーズの一九九三年製でした。
「ハブ」破損時の走行距離をみても、九三年以降は十万キロ台でも破損しています。これ以前の事故車が長距離走行後に起きているのと比べても異常に突出しています。
また、同社が「ハブ」の強度を上げる「設計変更」を三、四年に一度の割合で繰り返し、構造的に補強していたことも明らかになりました。
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九六年に発表した「スーパーグレート」シリーズでは、「ハブ」のフランジ(つば)の厚さを二ミリ厚くするなど補強した新型「ハブ」を採用。これ以降、九六年途中から製造された大型車には破損は起きていません。
すべての「ハブ」は三菱ふそうテクノメタル(福島・二本松)で鋳造され、三菱自工川崎製作所で加工されています。
昨年、分社化された三菱ふそうトラック・バス(港区)広報部は「とくに販売台数が増えた時期でもなく、なぜこの時期に(破損が)集中しているのか分からない」としています。
自動車業界関係者は「ハブは、特殊鋳鉄でできており設計変更ごとに鋳型を変える必要がありコストがかかる。頻繁な設計変更は足回りの弱さを示すものだ」と指摘します。
元自動車検査員の阿部俊作さん(51)は「三菱車だけ整備の手抜きをしているわけではない。破損が九〇年代に集中し他社製品では起きていないことをみても明らかに設計・製造上の欠陥だ」といいます。
横浜市の事故では神奈川県警が昨年十月、部品に構造的欠陥があったのではないかとして同社を強制捜査、警察庁科学警察研究所が「ハブが金属疲労を起こしていた」とする鑑定書を県警に提出しています。