2003年12月30日(火)「しんぶん赤旗」
米国防総省が米海軍の攻撃型原潜への核巡航ミサイル搭載について新たな決定をしたことについて、国際問題研究家で非核政府の会核問題調査専門委員の新原昭治氏に聞きました。
核弾頭付き海洋発射巡航ミサイル・トマホークは、陸地攻撃用です。非戦略核兵器(戦術核兵器)に分類され、核弾頭W80の破壊力は最大一五〇−二〇〇キロトン。広島型原爆の十倍以上です。一発約二億円。一九八四年以降、攻撃型原潜をはじめ一連の米海軍艦船に配備されました。
九一年の海外の戦術核大幅引き揚げと九四年の核態勢見直しで、駆逐艦などへの積載は中止され、原潜だけが「有事」に再配備する態勢をとってきました。現在、三百二十発の核巡航ミサイルがワシントン州バンゴールなど米本土二基地に貯蔵中で、指令から一カ月以内に積載できる態勢になっています。
昨年の核態勢見直しは明らかにされた限りでは原潜用核巡航ミサイルにふれていません。しかしその青写真となったとされる全米公共政策研究所の提言は、平時を含め攻撃型原潜の核巡航ミサイル態勢再強化を詳細に提案していて、国防総省の判断が注目されていました。
原潜用核巡航ミサイルは核攻撃能力をステルス・モード(探知困難な態様)で長期に前進配備できる上、一部西欧諸国での核爆弾配備の場合にありうるさまざまな制約を受けることなく、配置可能なことを国防総省関係者が重視しています(クラウチ前国防次官補談)。ユーゴ戦争反対で国中がゆさぶられたギリシャからは一昨年B61核爆弾が撤去され、大幅縮小見込みのトルコのインジルリク米軍基地の核爆弾の行方も不確かです。核爆弾より原潜用核巡航ミサイルの方が制約がないとの見方は、核兵器使用反対の高まりと、核海外配備への批判の強まりのもとで、米軍当局が原潜の行動の「政治的」秘密度を再評価していることを示しています。
国防総省の新決定は、日本への核巡航ミサイル積載原潜の寄港がひそかにおこなわれる危険が高いことを裏書きしています。
艦船による核持ち込みは事前協議の対象ではないとした日米核密約が存在するもとで、わが国の核出撃基地化の現実的危険に警鐘を乱打しなければなりません。