2003年12月26日(金)「しんぶん赤旗」
諫早湾干拓事業にかかわる中・長期開門調査検討会議は二十五日、都内で九回目の会議を開き、報告書をまとめました。報告書は中・長期開門調査にかんする論点を整理したうえで、調査実施の困難性を強調しています。
農水省は、短期開門調査を実施したものの、中・長期の開門調査の取り扱いについては官僚OBばかりの検討会議を設置し、論点整理を求めていました。検討会議が設置した研究者による専門委員会は、開門調査にたいする両論併記の報告書をまとめています。今回の報告書は、それを踏まえて両論を紹介しているものの結論部分では、開門に否定的な意見が強くでています。
十九日に公表された報告書の素案については、佐々木克之・元水産総合研究センター室長ら研究者の共同声明で、「シミュレーションのほうが優れている」と開門調査を否定する記述は非科学的だと批判されています。しかし、報告書はこれらに答えていません。
農水省は、検討会議にたいして、開門した際の底泥の巻き上げなど悪影響を考慮する必要があるとして、そのための工事に三年、約四百二十億円の費用がかかるなどと試算を提示。素案にも盛り込まれているため、この点も共同声明で批判されています。
巻き上げ被害は一時的ですが、通常の排水で底泥が巻き上げられて悪影響を与えつづけていることや、短期開門調査の漁業補償(六千万円)からみれば、きちんと補償したほうがはるかに低額ですむ、などの点が指摘されています。
しかし、この日の会議でも、この点の議論がほとんどないまま、報告書では、開門調査の困難性の理由にされています。