日本共産党

2003年12月20日(土)「しんぶん赤旗」

集団自衛権に踏み出すミサイル防衛

「専守」捨て「先制」加担


 小泉・自公政権が十九日に導入を決定した「ミサイル防衛」─。福田康夫官房長官が同日発表した談話は「専守防衛の理念に合 致する」と導入を合理化しました。しかし、「ミサイル防衛」は、ブッシュ米政権の先制攻撃戦略に日本をいっそう深く組みこみ、 政府も憲法上認められないとしてきた集団的自衛権の行使に大きく踏み出すもので、「専守防衛」とは無縁です。(竹下岳記者)

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米軍が指揮統制

 小泉・自公政権が今回、「ミサイル防衛」導入に踏み出した最大の動機は、米国が二〇〇四年からの実戦配備を決定したからにほかなりません。

 石破茂防衛庁長官は明快にのべています。「我々にとって大きな転機となったのは、米国が来年度からの配備を発表したことだ」(『世界週報』八月十九─二十六日号)

 米国のブッシュ政権が進める「ミサイル防衛」(MD)構想は、本国の「防衛」と同盟国・在外米軍の「防衛」を一体化し、地球的規模で対処することを特徴としています。弾道ミサイルの標的が米本土か同盟国かにかかわらず、「共通の脅威」として対処するのです。

 その狙いは、敵対国家・勢力のミサイル攻撃を無力化することで、核兵器を含む米国の軍事的優位を揺るぎなくし、報復の心配なく先制攻撃を可能にすることです。

 官房長官談話は、「我が国自身の主体的判断に基づいて運用し、第三国の防衛のために用いられることはないから集団的自衛権の問題は生じない」といいます。

 しかし、日本が「ミサイル防衛」を導入すれば、米軍の指揮・統制下に組み込まれ、米国を狙った弾道ミサイルへの共同対処=集団的自衛権の行使は避けられません。

 米国の「ミサイル防衛」構想は、同盟国をみずからの指揮下に置くことを前提にしています。米ミサイル防衛庁は「統合国家インテグレーションセンター」を設置。同センターはすでに二十回以上の多国籍演習を主催し、主契約企業のノースロップ・グラマン社は「国際的なシステム統合活動」を目指すとしています。

 談話は「システム上も、迎撃の実施にあたっては、我が国自身のセンサでとらえた目標情報に基づき我が国自らが主体的に判断する」とのべています。防衛庁はその手段として、イージス艦搭載のレーダーや、航空自衛隊の地上配備レーダーを挙げています。

 しかし、目標情報の把握には探知衛星の情報が決定的であることは軍事の常識です。シュナイダー米国防長官顧問は「探知衛星は不可欠だ。これがなければ、イージス艦のレーダーを照射する方向が分からない」(十一月二十五日)と、防衛庁の運用構想を否定。米国が二〇〇六年以降に打ち上げを予定している探知衛星の利用を当然視しました。

 自民党、民主党などの国防族議員で構成する「安全保障議員協議会」が十一月末に公表した提言でも、「ミサイル防衛体制の推進」のために「集団自衛権行使論議の克服」が必要としています。

軍需企業に利益

 「ミサイル防衛」導入のもう一つの動機は、日米軍需企業の巨額利潤の獲得です。今回、導入を決定したシステムだけで数千億円の契約額となり、米シンクタンクの試算では最終的に最大六兆円に達するとされ、新たな軍拡の道を開くことになります。

 米軍需企業は、地球的規模での「ミサイル防衛」システムの構築というブッシュ政権の方針のもと、欧州・東アジアを中心に売り込みを図っています。日本は重要な投資先と見られ、十一月下旬には都内で、「ミサイル防衛」装備品の展示会まで開かれました。

 国内の軍需企業もミサイル防衛に強い関心を寄せ、一九九九年から始まった日米共同技術研究にも、三菱重工などが参加。イージス艦に搭載する新型ミサイルの試作品を手がけています。

 米ミサイル防衛庁は、二〇〇五─〇六米会計年度に発射実験を行い、将来の日米共同開発につなげる構想です。このため、武器輸出を全面禁止した「武器輸出三原則」見直しを求める動きが、日米軍需企業を中心に強まっています。

 談話は、現在行っている日米共同技術研究の「将来的な開発・配備段階への移行については、今後の国際情勢等を見極めつつ、別途判断する」とのべ、共同開発への移行を視野に入れていることを示しました。福田長官は十八日、すでに「三原則」見直しの検討を表明しています。

軍事緊張高める

 談話は、「(ミサイル防衛システムは)弾道ミサイルに対し、…他に代替手段のない唯一の手段」「周辺諸国に脅威を与えるものではなく、地域の安定に悪影響を与えるものではない」とのべています。

 しかし、米軍需企業が十一月末の展示会で示した資料では、「ミサイル防衛」推進の「触媒」として、北朝鮮と中国を名指し、新たな軍拡の火種をつくり出そうとしています。それは、相手国に「ミサイル防衛」に対する新たな対抗手段の開発を促し、軍事緊張をいっそう高めることになります。


「ミサイル防衛」導入決定に至る経過 

1993・5 北朝鮮が弾道ミサイル「ノドン」打ち上げ

 93・12 TMD(戦域ミサイル防衛)の日米作業部会設置

 94・8 首相の「防衛問題懇話会」が「日本自身に弾道ミサイル対処能力を持つ必要」を提起

 95・4 防衛庁が弾道ミサイル防衛研究室を設置

 98・8 北朝鮮が日本上空を超える弾道ミサイル「テポドン」の発射実験

 98・9 日米安全保障委員会(2プラス2)でTMDの日米共同技術研究で合意

 98・12 安全保障会議が日米共同技術研究を了承

 99・4 海上配備型上層システム(NTWD)を中心とした共同技術研究に着手

2000・12 「ミサイル防衛」について「検討の上、必要な措置を講ずる」とした「中期防」(01~05年度)を閣議決定

 01・5 ブッシュ米大統領が「ミサイル防衛」(MD)の配備を表明

 02・12 米国が04年から「ミサイル防衛」の実戦配備開始を発表

 02・12 石破防衛庁長官がラムズフェルド米国防長官との会談で「開発・配備を視野に検討」と発言

 03・5 小泉首相が日米首脳会談で「検討の加速」を表明

 03・8 防衛庁が概算要求に導入経費を盛り込む

 03・12 政府が導入を閣議決定


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