2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」
トヨタ自動車で国家試験「一級小型自動車整備技能検定」の筆記試験問題が系列販売店に二年連続で漏えいしていた問題で十八日、日本自動車工業会の宗国旨英会長(ホンダ会長)は、同工業会としてトヨタを処分しない考えを明らかにしました。
国土交通省も試験問題を漏えいした同社の「検定専門委員」を刑事告発しない意向で、業界、国交省の両当事者が、そろって幕引きをはかろうとしています。
今回の事件は「検定専門委員」のトヨタ社員が、国交省が郵送してきた試験問題を上司に渡し、トヨタ系列販売店三百社に漏らすという国家試験の漏えいとしては前例のない規模です。
「検定専門委員」は国土交通大臣が道路運送車両法の省令に基づき任命されています。人事院によると「検定専門委員」は一般職(非常勤)の国家公務員にあたり国家公務員法(一〇〇条)の守秘義務が適用されます。守秘義務違反には「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」(一〇九条)が科せられます。
しかし、同省整備課は「社内で問題を見せたことは『不適切』だが『故意』に漏らしたことは確認できなかった」として守秘義務違反には当たらないとしています。
田島泰彦上智大学文学部新聞学科教授(メディア論)の話 国家試験の安易でずさんな管理に驚く。検定専門委員に漏えいの明確な意図がなかったとしても試験問題をこのような取り扱いをすれば結果として漏れることは十分想定できる。今回の事案は、国家試験として公正できちんとした手続きが踏まれておらず故意に漏らしたかどうかが問題ではない。